贈与は、多くの場合、

  • 家族間
  • 親族間

で行われるものです。

家族間、親族間のお金の動きなんてバレないんじゃないかと思ってしまうかもしれません。

そこで、

  • 贈与はどのようなときにばれるのか、
  • ばれたときには、どのようなペナルティや刑事罰があるのか

についてまとめました。

 

名義変更したとき

 

登記原因が必要

不動産には、登記制度があります。

不動産の登記名義を変更していなければ、第三者に自分が所有者であると主張できません。

そして、不動産の名義変更には、理由が必要です。

例えば、

  • 売買に基づく所有権移転登記
  • 贈与に基づく所有権移転登記
  • 相続に基づく所有権移転登記

という形です。

登記原因によって、登録免許税が変わります。

そこで、贈与を原因として、所有権移転登記をすれば、贈与があったことがすぐに分かってしまいます。

 

売買を原因として登記したら?

登記原因を売買にしても、売買の実態がなければ、贈与税が課税されます。

また、かなり低い価格で売買した場合、

例えば、父が1,000万円相当の土地を子供に100万円で売ったというような場合は、

差額の900万円について、贈与があったとみなされて、贈与税が課税されます。

 

相続税の税務調査

相続税が発生すると、税務署が税務調査を行うことが多くなります。

特にお金の流れは調査されますし、銀行口座などは、10年は遡って調べることができます。

そこで、生前贈与の事実はほとんどばれます。

贈与がばれないならば、だれだって、生前贈与を行うのに、

贈与の特例を使ったり、相続時精算課税制度を利用して必死に節税をしたりしないでしょう。

大きなお金を動かせば、何年後でもばれることを知っているのです。

 

名義預金

名義預金とは、他人名義の預金口座に、自分のお金を貯めておくことです。

例えば、

  • 夫が稼いだお金を妻名義の口座に貯めていたり
  • 子供名義の口座に貯めていたりする

場合です。

このような場合は、口座の名義人ではなく、実際にお金を出した人の財産であると見られます。

これが問題になるのも主に相続のときです。

  • パート勤務だった妻の口座に多額の預金があったり、
  • まだ学生である子供の名義の口座に多額の預金があったり

それは、名義預金であるとみなされて、夫の相続財産として、相続税が課税されます。

気をつけなければいけないのが暦年贈与です。

暦年贈与とは、1人の人が1年間に受けた贈与が、110万円までであれば、贈与税がかからないことを利用して、

毎年110万円を超えない限度で、長年かけて子や孫に少しずつ財産を贈与していくことです。

このときに、孫がまだ小さいからと、祖父が孫名義の口座の通帳に毎年お金を入れながら、

その通帳を自分で管理し続けた場合、その孫名義の口座は、祖父の名義預金となってしまいます。

贈与とは、

  • 財産を無償で渡すという人と
  • これを受け取るという人

の意思の合致によって、成立する契約ですから、

孫が、自分名義の口座に贈与してくれていることを知らなければ、そもそも贈与契約が成立していません。

また、贈与したあとは、贈与を受け取った人がその財産を自由に使える状態である必要があります。

なお、この場合に、何年か経って、祖父がお金の貯まった孫名義の通帳を孫に渡した場合には、

その通帳を渡した日に一括贈与をしたとみなされて、貯まっていたお金に贈与税がかかります。

 

マイナンバーでバレる?

平成28年から、所得税の源泉徴収などの場面でマイナンバーの利用が始まりました。

マイナンバーは、

  • 銀行口座
  • 証券口座

にも適用されていく予定です。

これによって、お金の流れが把握されますので、

所得を把握されるだけではなく、贈与の事実を把握されやすくなるのではないかと考えらえています。

 

贈与税の時効

贈与税の時効は、

  • 贈与があったことを知らなかった場合は6年
  • 贈与があったことを知っていた場合には7年

です。

ただし、時効まで待てば大丈夫というものでもありません。

不動産の贈与契約を公正証書を作成して締結しておいて、

  • 不動産の所有権移転登記をすぐには行わず
  • 贈与税の申告もせず

贈与税の時効期間が過ぎてから、不動産の所有権移転登記をした事案について、

裁判所は、実際に不動産の所有権移転登記を行なったときに贈与があったとものとして、このときから、時効が進行するとした判断しました(平成10年12月25日名古屋高等裁判所)。

このように、故意に時効の完成を待つのはなかなかむずかしいものです。

 

税務上のペナルティ

 

無申告加算税

正当な理由なく申告期限までに申告しなかった場合には、無申告加算税が課せられます。

申告期限に遅れたものの、自主的に相続税を申告期限した場合の無申告加算税の税率は、5%です。

一方、申告期限に遅れ、税務調査によって、期限後申告を行った場合、無申告加算税の税率は15%になります。

さらに50万円を超える部分については20%の加算になります。

 

延滞税

贈与税を納付期限までに納付しなかった場合には、延滞税が課されます。

延滞税は、

  • 期限後2か月以内であれば原則として税率7.3%
  • その後は、原則として14.6%

にもなります。

 

過少申告加算税

期限内に申告はしたものの、納税が不足した場合に課されます。

自分で間違いに気づき、自主的に修正申告をした場合には、過少申告加算税は、0%です。

一方、申告した贈与税の税額が過少であることを税務署に指摘されて修正申告した場合には、過少申告加算税は、

  • 50万円までは10%
  • 50万円を超える部分については15%

になります。

 

重加算税

贈与税の申告書を提出したものの、

  • 財産を隠蔽していたり
  • 仮装していたりした

ことが発覚したときには、35%の重加算税が課税されます。

申告書を提出していなかったときだと、40%の重加算税が課税されます。

 

刑事罰

相続税法68条第1項では、相続税・贈与税を偽りその他不正の方法により免れた場合には、

  • 10年以下の懲役
  • 若しくは1,000万円以下の罰金

に処し、または併科できるとされています。

さらに、第68条第3項では、第1項に規定するもののほか、

期限内申告書又は第31条2項の規定による、修正申告書をこれらの申告書の提出期限までに提出しないことにより相続税を免れた者は、

  • 5年以下の懲役
  • または500万円以下の罰金

に処し、またはこれを併科するとしています。

これは、故意の無申告を処罰する規定です。

また、相続税法第69条では、

正当な理由がなくて期限内申告書又は第31条第2項による修正申告書をこれらの申告書の提出期限までに提出しなかった者は、

  • 1年以下の懲役
  • 又は50万円以下の罰金

に処する。

ただし、情状により、その刑を免除することができるとしています。

これは、単純無申告罪です。

 

まとめ

払わなければいけない税金はきちんと払うべきです。

贈与を受ける場合には、あらかじめ優遇制度などを調べて、できる限り節税し、それでも税金の支払いが生じる場合にはきちんと支払いをしましょう。