皆さんは自分の死後のことを考えて、ふと「遺言書でも書いておこうかな」と考えることはありませんか。
遺言書という話をすると、中には「うちは資産家じゃないから」なんて答える方もいらっしゃいます。
しかし中には、
- 葬儀について親族にいいたいことがあるのよね
- お墓のことで希望があるの
- 家族に迷惑をかけたくないから葬儀は小規模でやって欲しいと遺言書に書いておこうかしら
という方もいらっしゃいます。
確かに自分の葬式やお墓については、希望をある程度家族に伝えておくということは重要かもしれません。
いざ葬儀やお墓が必要になるという瞬間は、本人はもう亡くなっているわけですから。
しかし、ここで考えていただきたいのは「遺言書には何を書いてもいいの?」という疑問です。
今回は「遺言書に書いても意味のないこと」についてお話しします。
皆さんが書こうと思っていることは遺言書に書いてもまったく意味のないことなのかも?
遺言書の記載にルールは厳しい!
遺言書には法的な要件が定められています。
遺言は死後に意味を持つもので、記載内容に不備があっても本人に確認することはできません。
だからこそ要件を含めて記載ミスは大変なことなのです。
「おそらくこう書きたかったのだろう」と相続人が書き直してしまっては、亡くなった方の意思に手を加えてしまったに等しいことです。
遺言書でしてはいけないことです。
今回は法的な遺言書の要件については詳細を省きます。
ここでは簡単に「遺言書のルールは厳しいぞ」と覚えておいてください。
さて、そんな死後に意味を持つがゆえに厳しいルールの存在する遺言書には「中身」についても注意点があります。
自分の意志だからこそ自由に書いてもいいのではないかと思ってしまいます。
確かにその通りなのですが、遺言書には、
- 記載により意味のある内容
- 書いても意味のない内容
があるのです。
遺言書に書いて意味を持つ内容(法的な効果を持つ内容)とは、
- 認知や遺贈
- 遺産分割方法の指定
- 相続分の指定
などです。
参照:
http://www.nagareyama-park.com/
遺言書に書いても法的効果がない付言事項とは
対して記載しても法的には意味がない(法的な効果がない)内容は、次のようなものです。
- 家族への感謝や恨み言、復讐的な文言など
- なぜその遺産分割を指定したかなどの理由
- 自分史
- ペットの飼育や家族の介護について
- 葬儀や墓についての希望
ここからはそれぞれをもう少し詳しくお話しします。
なお、これらの事柄は遺言書に記載しても法的には意味のないことです。
しかし相続の手続きを進める上での資料になる場合もありますし、自分のことを知ってもらいたいという意味で書いても差し支えありません。
遺言状は遺産分割や認知などの特定の事柄のみ法的な意味を持つというだけで、
付言(法的な効力のないつけたし)をしてはいけないという決まりはありません。
書いてはいけないということではなく、あくまで「書いても意味がないですよ」ということです。
参照:
http://www.nagareyama-park.com/
家族や友人への気持ちを書いた!これって駄目なの?
家族への感謝や恨み言を遺言状に記載しても特に意味はありません。
例えばAさんという人に生前とてもお世話になったとします。
Aさんへの感謝の言葉をつらつらと記載しても、そこには遺産分割などの法的な効力が生まれるわけではありません。
また、Bさんに生前とても酷いことをされたとして、Bさんに対する恨み言を記載しておいても、やはり遺産分割のように法的な効力が生まれるわけではありません。
遺言書に記載しても意味のないことです。
ただし、遺言書を確認するのは相続人です。
相続人は一般的に亡くなった方の子や配偶者、両親などの近しい親族であることがほとんどでしょう。
だからこそ遺言書の内容を参考にすることはできます。
遺言書の記載に法的な意味はなくても家族がAさんに対して世話になったお礼を故人に代わって申し上げることはあり得ますし、
Bさんという人との今後のつき合いを考え直す切っ掛けになることもあるはずです。
なぜ相続人にその相続分を指定したのか書きました!意味は?
遺言書では、
- 遺産の分割方法
- それぞれの相続人の相続分
を指定することも可能です。
ただし、
- どうしてそれぞれの相続分を指定したか
- なぜその相続分なのか
- なぜその分割方法にしたのか
という理由を記載しても法的な効果はありません。
例えばCさんという人が亡くなって、相続人が息子一人だったとします。
Cさんは遺言で内縁の妻に遺産の1/2を相続させたいと書き残しました。
息子には残りの1/2を相続させたいと書き残しました。
なぜそれぞれに1/2ずつを相続させようと考えたのか、内縁の妻との出会いから思い出まで1/2という数字の理由を延々と記載していたとします。
しかし遺言書で大切なのはあくまで相続分と遺産分割方法と部分ですから、その理由がどうあれ「1/2」という部分が大切なのであって、理由はあまり関係ありません。
なぜその遺産分割方法や相続分にしたのかという理由を記載しても、1/2という理由は変わりません。
理由を書いても意味なしということです。
ただし、相続人に気持ちを伝えるという意味では記載してもまったく問題ありません。
同じく自分史や家族の歴史を記載しても法的な意味はありませんが、
親族が多いなどの場合に相続人を調査する段階で資料として役立つ場合があります。
ペットや家族の世話を任せたい!遺言書で可能なの?
ペットの飼育や家族の介護について書いておいても法的な効果はありません。
- うちのポチをよろしくお願いします
- 老いた母の介護をお願いします
と記載してもそれはあくまでお願いです。
遺言書に記載されていたからといってどんな事柄も相続人が義務を負うというわけではありません。
遺言書に記載したらどんな希望も通るということであれば、大変なことになってしまいます。
遺言書はどんな希望を書き残しても法的な効果を持つというわけではなく、
- 遺産分割
- 相続分の指定
など一部の少数の事柄が法的な効力を持つと考えた方がわかりやすいことでしょう。
介護やペットの飼育に関しては遺言書でお願いしてもあくまでお願いとなってしまいます。
ただし、遺贈などをする際に負担をつけることが可能です。
例えば、
- 預金100万円を渡します
- その代わりにポチの飼育をお願いします
という感じです。
このように負担をつけることも可能なにです。
また、ペットに関しては、最近はペット信託というものも登場しています。
お墓や葬儀の希望を遺言書でかなえたい!
さて、ここで、冒頭に話題を出した葬儀やお墓についてです。
実は葬儀やお墓についても、遺言書に記載しても法的な効果のない事柄となります。
- 私の葬儀はこうしてください
- お墓は200万円以上のものを購入してください
などの希望を記載しても、それはあくまで希望です。
法的に強制できるものではありません。
よく遺言書に「葬儀は親族だけでして欲しいと遺言しようかしら」なんて話を聞きますが、
遺言書に記載したとしてもあくまで家族がその希望を汲んでくれるかどうかという話しになります。
ただ、自分が死後に望むこととして書き記すことは決して悪いことではありません。
もちろん遺言書に書き記すことなく、生前に葬儀のことを色々勉強し家族に希望を伝えておくのもいいでしょう。
ただ、お墓などの祭祀主催者は遺言書で指定することが可能です。
最後に
遺言書は書いておけば何でも法律で叶えてくれる魔法のお手紙ではありません。
遺産分割や相続方法の指定、認知や遺贈などの一部の事柄以外はあくまで、
- 法的な効果はないから書いておいても意味がない
- 書いては駄目というわけではないけれど、あくまで相続人や親族に対するお願いである
という点がポイントです。
死後に遺言を効果的に活用してなるべく自分の希望を叶えたいという場合は、「このようにしたい」というところをきっちり弁護士や司法書士に相談し、
負担付きなどの活用できる方法と記載事項の見直しをはかることが重要です。