相続をすることになり、自宅以外にも土地を持っていたことを初めて知った!
これはよくあることです。
相続のうち、不動産がからむものは約50%にのぼります。
土地は世界にひとつしかないもの。
相続手続きも、預金や株式などほかの財産とは少し違います。
土地を相続した場合に必要な手続きや税金を、さまざまなケースに応じて解説します。
土地を相続した場合の手続きとは
基本的にどの場合でも関係するのが相続登記です。
そのほかの手続きの進め方は、ケースにより異なります。
不動産を相続したら、すみやかに相続登記を
土地や建物などの不動産を相続した場合、相続登記、いわゆる名義変更の手続きが必要です。
しないと罰則があるわけではなく、期限が決まっているわけでもありませんが、しておかないと権利を証明することが難しくなります。
土地を売却した場合に困ったり、後から他の相続人が権利を主張してきたりすることもあります。
さらに二次以降の相続で法定相続人が増えると複雑になり、手続きがより煩雑になります。
相続税の申告が終わったらすみやかに手続きしましょう。
手続きとしては、土地を管轄する法務局に、
- 申請書類
- 被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本
- 土地の固定資産税評価明細書
- 遺言書または遺産分割協議書など
を提出します。
インターネットによるオンライン申請もできますし、
自分で申請するのが難しい人は、司法書士または弁護士に代行を依頼しましょう。
農地を相続したら、農業委員会に届ける
相続で農地を取得した場合は、農業委員会に届出をする必要があります。
売買などで農地の名義変更をする場合は、農業委員会または県知事による許可が必要ですが、
相続の場合は許可よりも簡易な手続きである届出となります。
ただし、遺言などで相続人ではない第三者が取得する場合は、許可が必要です。
届出の期限は、相続開始から10ヶ月以内です。
農地を相続することを知った日から数えても構いません。
届出には土地の登記簿が必要です。
流れとしては、
- 名義変更前の登記簿を取得
- 農業委員会に届出
- 名義変更(相続登記)の手続き
となります。
農地の相続は、相続税の納付で有利な面があります。
農地を相続で取得し、一定の条件を満たす場合、農業を続けている限り相続税の納付が猶予されます。
さらに、相続人が死亡した場合、20年間農業を継続した場合などに免除されます。
共有している土地を相続したら、なるべく早く共有を解消しよう
被相続人が土地を共有していた場合、当然に持分割合分が相続されます。
自分の法定相続割合であれば、通常の場合と同様に名義変更手続き(相続登記)が可能です。
土地を共有にするのは、夫婦で共同して土地付き住宅を購入する場合や、相続で取得した場合などが考えられます。
夫婦の場合は相続人ともごく近い関係なので、問題になることはあまりありません。
ですが、相続で取得した場合は、二次相続、三次相続と続いていくたびに共有者が増えて複雑化し、手に負えなくなるケースもあります。
共有する物件は勝手に売却したり、使用目的を変更(資材置き場だった土地にマンションを建てるなど)したりすることはできません。
ほかの共有者の承諾が必要です。その際、自分の持分のみの売却は可能ですが、買い手はつきにくくなります。
かなり自由が制限されるので、なるべく早めに処分したほうがいいでしょう。
共有物件を処分する方法は、
- 土地を分ける分筆
- 自分の持ち分を他の共有者に売却する
- ほかの共有者と相談して土地全体を売却して現金を分ける
などの方法があります。
分筆は土地の測量からプロに依頼しなくてはならないので、手間と時間がかかります。
ほかの共有者に売却するのが最も手っ取り早い方法です。
借りている・貸している土地を相続したら
土地を借りて使用する権利を借地権といい、これも相続の対象となります。
通常、貸主と借主の間で賃貸借契約を結んでおり、借主(賃借人)の権利は自動的に相続人に相続されます。
貸主との話し合いにもよりますが、特に手続は不要です。次回契約更新時に変更すれば問題ないでしょう。
常識として貸主には通知しておきます。
賃借料を払うことなく、タダで借りている場合は使用貸借契約といいます。
この場合、原則として借りている人が亡くなると契約は終了します。
賃貸借契約と違って自動的に相続されることはないので注意が必要です。
他人に貸している土地を相続した場合、上記と逆の立場になります。
土地の賃貸借契約の期間は30年から50年と長いので、そのあいだ所有者が自由に使うことはできません。
賃料収入という形で権利を受けることになります。
土地の利用に制限を受けるため、相続税は低くなります。詳しくは後述します。
土地を相続すると、税金面で有利になることも
土地は相続で取得した場合、現金や預金などの場合よりも税金面で有利になることがあります。
不動産取得税も相続の場合はかかりません。
自宅用の土地などは、相続税を軽減できる
一定の目的に使われている土地は、小規模宅地等の特例で、相続税評価額を下げることができます。
土地の相続税を計算する際、路線価や評価倍率という方法で単価を出し、それに面積をかけることで課税される金額を求めます。
この金額を相続税評価額といいます。
評価額はそれぞれ、
- 自己居住用の土地…80%
- 駐車場の経営やアパートを建てて貸すなど、賃貸事業用の土地…50%
- 事業用の土地…80%
このように下げることができます。
被相続人がそれらの目的に使用し、相続人も引き続き同じ目的で使用を続ける場合に適用されます。
適用できる面積には上限があり、
- 自己居住用…330平米
- 賃貸事業用…200平米
- 事業用…400平米
です。
賃貸事業用とほかの用途が混在する場合、一定の計算式を使って面積を算出します。
自己居住用と事業用が混在していても、それぞれの上限まで併用することができます。
小規模宅地等の特例を使った結果、相続税が発生しないという場合でも、申告は必要になります。
計算の根拠となる資料や遺産分割協議書などの添付が必要です。
貸している土地は、相続税評価額が低くなる
土地を人に賃貸借している場合は、相続税評価額のうち借地権割合を差し引いた部分のみ課税されます。
貸している土地は貸主が自由に使うことができないので、その分を差し引こうという考え方です。
借りている場合は、借地権割合部分のみが相続税の課税対象になります。
借地権割合は、地域や賃貸借契約の内容によって変わります。
地域は、相続税評価額の計算に使われる路線価図と評価倍率表(路線価図に載っていない地域の評価額を計算するための表)に掲載されています。
この2つは毎年7月頃に国税庁のホームページで発表されます。
契約内容別に最も借地権割合が高いのは、通常の借地権です。
次に高いのは、期間が決まっている定期借地権、一時的な利用のための借地権は最も低くなっています。
借地権割合は最大で90%となります。
例えば路線価が1億円で借地権割合が70%の土地であれば、
それぞれの相続税評価額は貸している方が3,000万円、借りている方が7,000万円となります。
不動産取得税は、相続の場合にはかからない
不動産を購入すると、不動産取得税と登録免許税がかかります。
相続で取得した場合、不動産取得税はかかりません。
ただし、生前贈与や相続人以外が遺贈によって取得したなどの場合はかかるので注意が必要です。
名義変更をすると、相続登記の際に固定資産税評価額に対して0.4%の登録免許税がかかります。
相続登記をしない人が多いことの原因は、登録免許税がかかること、罰則がないこと、手続きが煩雑であることなどがあります。
まとめ
以上の内容を簡単にまとめると、
- 土地を相続したら、相続登記をすると後のトラブルを防ぐのに役に立つ
- 農地を相続したら、10ヶ月以内に農業委員会に届出をすること
- 土地の共有はトラブルのもと。売却などでなるべく早く解消したほうが得策
- 賃借権は自動的に相続される
- 自宅用の土地などは、相続税の計算で有利になる「小規模宅地等の特例」を使うことができる
- 相続の場合は、土地の不動産取得税がかからない。贈与の場合はかかる
となります。
当てはまる例をしっかり確認し、漏れのないように手続きを進めましょう。