相続で土地を手に入れた人のなかには、それまで土地を買ったり借りたりしたことがない人もいます。

そういった人には相続すること自体、不安に思えるでしょう。

経験したことのないことは、誰でも怖いです。

土地によっては、相続をせずに放棄したほうが良いという場合もあります。

それはどのような場合か、またどのような場合には放棄しないほうがいいのか?

解説します。

 

 

相続放棄したほうがいいケース、しないほうがいいケース

一切の財産を相続しないという意思表明が相続放棄です。

法令にのっとって家庭裁判所に申述(書類を提出)することで、手続きできます。

土地の管理は素人には厄介なもの。

放棄したほうがいいのはどのような場合か説明します。

 

維持費がかかりすぎて、赤字になるパターン

相続放棄は、

  • 土地だけ
  • 建物だけ

というように部分的することができません。

はじめから相続人ではなかったことになりますので、住宅や預金などほかの資産も一切引き継ぐことはできません。

一般に相続放棄するのは、遺産のうち負債が資産を上回ったときです。

借金が膨大にあり、土地や金目のものをすべて売り払っても返しきれないというときには、

相続しても損するだけなので、放棄したほうがいいでしょう。

思い出の品や住居など手放したくない場合は、資産と負債を同じだけ引き継ぐ限定承認という方法もあります。

財産の価値を考えるとき、現在の価格だけでなく、将来の支出も考慮に入れるべきです。

例えば、土地を所有することの費用で代表的なものは固定資産税です。

毎年1万円払うとして、あと30年生きるとしたら30万円の負債を負ったことになります。

  • 土地を持つことでかかる費用
  • 相続した場合に手に入る資産

を比べて、費用のほうが多いのであれば、相続放棄を検討すべきです。

 

土地を持つことでリスクを持つことになるパターン

土地は持っているだけで税金がかかるだけではなく、責任も生じます。

民法には土地に

  • 建物
  • トンネル

などの工作物があり、それが原因で他人に損害を与えた場合に、最終的に所有者が責任を負う旨が規定されています。

例えば相続した土地上に空き家があり、土地とともに相続したとします。

この空き家が崩れて誰かがケガをした場合などは、所有者が損害賠償を請求される可能性があります。

また、土地を管理せずに放置していると、不法投棄の温床になるおそれがあります。

廃棄物処理法上、不法投棄によって近隣の生活環境がおびやかされる場合は、所有者に撤去が命じられることがあります。

不動産の管理にはお金と手間、あるいはその両方がかかります。

利用する予定がないのであれば売却できればいいですが、地方の山林などは買い手がつかないこともあります。

もし相続財産が土地だけで、ほかに資産がないのであれば、放棄することも1つの手段です。

 

 

相続放棄しなくてもよい、しないほうがよいパターン

土地を資産として活用できたり、ほかの相続財産のなかに価値のある資産があったりする場合は、相続放棄しないほうがいいです。

 

土地を貸してメリットが出るなら、不動産会社などと相談しよう

土地を持つことで前述のようなデメリットがありますが、他の人に貸すことで管理の手間が省け、かつ賃料をもらうことができます。

不動産会社に相談すれば、募集から管理までを委託することができます。

注意点としては、土地の活用方法を勉強して、自分で使おうと思っても、簡単には返してもらえないという点です。

貸した土地に住宅や倉庫などの建物が建っている場合には、借地借家法の規定により、契約期間が30年間となります。

時間貸し駐車場や資材置き場など、一時的な利用であれば、借地借家法は適用されません。

将来的にどうしたいかを不動産会社とよく話し合ってから方向性を決めましょう。

 

隣の住人や自治体に寄付できるパターン

お金は出さないけど、ただでくれるならもらうという人ならいるかもしれません。

自治体は原則的に利用価値のない土地を受け入れることはありませんが、公園用地などに活用できるものであれば、寄付を受け付ける場合があります。

可能性は低いですが、市町村役場に相談してみれば、あるいは道が開けるかもしれません。

となりの土地を持っている人も、可能性があります。

2つの土地を1つにすることで、価値があがることがあるからです。

 

 

土地と相続放棄に関する注意点

ひとことで相続放棄といっても、土地は預金や株式などとは少し違います。

注意点としてまとめました。

 

全員で相続放棄すること

相続放棄するとはじめから相続人ではなかったことになります。

そのため、

  • 子供が放棄すれば親に
  • 親が放棄すれば兄弟

と、法定相続人の順位が次の人に相続権が移ります。

そのため、相続人となる可能性のある人全員が相続放棄の手続きをしないと、

まわりまわって誰かが相続することになってしまいます。

利用価値がないために手放したはずなのに、親族の誰かに押しつけることになってしまいます。

相続人の範囲をしっかり調べたうえで、確実に全員が相続放棄できるような配慮が必要です。

 

相続放棄後の土地はどうなるのか

全員が相続放棄をしたら相続財産だった土地はどうなるのか、気になる人もいるでしょう。

民法では、所有者のいない不動産は国庫に帰属すると規定されています。

つまり、国のものになるわけです。

最終的には国ですが、その前に相続財産管理人が管理することになります。

  • 相続人がいないときや
  • いるかどうかわからないとき
  • 全員放棄したときに

相続財産を管理する人のことです。

家庭裁判所が選任し、たいていはその地域の弁護士がなります。

資産のほかに借金などの負債がある場合には、相続財産管理人が精算し、残ったものが国のものになります。

この過程で売却することもあるので、国以外の個人や法人のものになることもありえます。

 

相続放棄しても、すぐに土地の管理から手が離れるわけではない

相続人全員が相続放棄する場合は、相続人が家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。

相続放棄した人は、財産が次の所有者が管理できるようになるまで、自分の財産と同じように管理しなければなりません。

相続放棄したからといって、すぐに管理しなくていいようになるわけはないのです。

相続財産管理人を選任するのは裁判所ですが、申し立てから選任までどれくらいの期間がかかるかは一定ではありません。

早く手放したいということであれば、

  • 相続放棄
  • 相続財産管理人の申し立て手続き

を早めにしたほうがいいでしょう。

申し立てから精算が完了するまで1年ほどかかることもあります。

この間は、まだ相続した土地からは手が離れていないことになります。

 

相続財産管理人の申し立て手続きには、お金と時間がかかる

裁判所への申し立て手続き自体は、手数料や郵便代などで1万円もかかりません。

ただし、予納金をおさめる必要があります。

金額は案件によって差があり、数十万円~100万円になることもあります。

相続財産管理人の報酬は相続財産のなかから支払われるのですが、財産がないと予納金から支払われます。

もともと相続放棄するような状況であれば、資産が少ないのがほとんどです。

予納金は使用されなければ返還されますが、報酬としていくらか減ってしまうことは覚悟したほうがいいでしょう。

 

 

まとめ

  • 土地を所有すると費用と管理の手間がかかる。
  • 将来的に負担になるなら、相続放棄を検討すべき。
  • 貸付や売却で活用できたり、寄付で手放すことができたりすれば、相続放棄の必要はない。
  • 相続放棄してもすぐに管理責任から逃れるわけではない。
  • 相続放棄する場合は相続財産管理人の選任申し立て手続きが必要。
  • その際、予納金をおさめる必要がある。

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この記事を書いた人

ファイナンシャル・プランナー ファイコロジスト山田

不動産から為替相場の予想まで、お金に関するテーマについて幅広く執筆。
相続に関連して実家を失ったことがある。
これらの経験から、相続関係業務のモットーは「運用を含めた総合的な人生設計」「関係者全員が納得する分割」。