相続財産管理人という言葉が何かご存知でしょうか?

耳にすることは少ないかもしれませんが、漠然と相続の時に誰か管理人に据えるのかと思われる方も多いかと思います。

この相続財産管理人、時には知っていないと大きく損をすることがあります。

では、相続財産管理人に関するあれこれを、今から一緒に見ていきましょう。

 

相続があると必ず要る?相続財産管理人

相続財産管理人とは常に相続に必要なものではありません。

特殊な場合にのみ、家庭裁判所が選任する人です。

それは、

  • 相続人がいない時
  • かつ一定の条件

で選任されますが、普通の相続では必要のないものです。

では、家族がいる私たちには、相続財産管理人は関係ないと思われるかもしれません。

ですが、何かの拍子に関わることがあるかもしれない存在です。

その時に知っていないと、損をしてしまうことがあるのです。

次は相続財産管理人の必要なケースについてご説明していきます。

 

必要なケース、相続財産管理人を選任する時

相続財産管理人が必要なケースは、天涯孤独の身の上の人だけではありません。

相続人が全員相続放棄した場合にも発生します。

その場合宙に浮いた財産は、負債も含めて相続財産法人という存在とみなされます。

その相続財産法人は、誰も管理や処分ができない状態にあるため、国庫に納めるにしても、必要な時に動かせる相続財産管理人が必要となるのです。

ただ、相続人がいないからと言って、必ずしも相続財産管理人が自然に選任されるわけではありません。

家庭裁判所での相続財産管理人の選定には、

  • 利害関係がある人か
  • 検察官の申し立てか

が必要となります。

利害関係のある人とは、

  • 故人にお金を貸していた債権者
  • 遺贈を受ける予定の人
  • 特別縁故者

になります。

相続放棄で関わることもあれば、人にお金を貸していたり、お金を遺されたりということを考えれば、

相続財産管理人誰もが関わる可能性があるのは分かるかと思います。

まずは、相続財産管理人の選任を申し立てするための

  • 必要書類
  • 費用

を見ていきましょう。

 

相続財産管理人の選任に必要な書類

 

申立書

家事審判申立書他、この手続きの書式と記入の例は下記にあります。

相続財産管理人の選任の申立書(裁判所)

参照:
http://www.courts.go.jp/

 

被相続人に相続人がいないことを証する戸籍謄本

相続人がいないということは、

  • 相続人の相続放棄
  • もしくは相続人が全て亡くなっていること

が前提条件になります。

相続人を知るため、または被相続人に相続人がいないということを証明するため、戸籍謄本をかなり広い範囲で取得する必要があります。

戸籍謄本は全部事項証明書とも呼ばれることがあります。

亡くなった人は除籍謄本が必要となります。

さらに、その人が死亡していると

  • 次順位の相続人に権利が移動したり
  • 代襲が起こる

場合があります。

そのため、亡くなった人に相続人がいないか確認するため、生まれてから死ぬまでの戸籍謄本が必要となります。

結婚その他で本籍地の移動をしていれば、その前の本籍地に問い合わせて、一生分の戸籍謄本を用意することになります。

裁判所の必要書類には、相続人が相続放棄したことを証する書類は要求されていません。

ただ相続放棄は戸籍謄本には載りませんが、相続放棄も裁判所で手続きするので記録が残っています。

被相続人の相続人として、生まれてから死ぬまでの除籍や改正原戸籍の戸籍謄本が必要な人は、下記になります。

  • 被相続人
  • 被相続人の父母
  • 被相続人の子、代襲相続する者
  • 被相続人の兄弟姉妹

他に次順位への権利の移動や、
代襲相続がない関係の人は、その人の死亡が載っている戸籍謄本があれば問題ありません。

  • 被相続人の姪や甥
  • 被相続人の祖父母、曾祖母といった直系尊属

叔父、叔母、伯父、伯母といった、直系ではない尊属は相続人にはなりませんので、直系尊属の死亡だけが確認できればいいことになります。

甥姪の場合もその子が代襲相続することもないので、死亡だけ確認できる戸籍謄本があればいいことになります。

 

被相続人の住民票除票や戸籍附票

住民票は被相続人の最後の住所地で取得します。

戸籍附表はその人の住所移動の履歴を記載しているもので、本籍地の役場で取得します。

 

財産の内容を証する資料

  • 不動産登記事項証明書
  • 通帳のコピー
  • 残高証明書

など、財産の内容がわかる書類を用意します。

 

利害関係があったことを証する資料

戸籍謄本や金銭消費貸借契約書などのコピーが必要となります。

 

相続財産管理人にと考える人がいればその人の住民票もしくは戸籍附票

候補者がいる場合にはつけることになります。

ここまでを見ると戸籍謄本一つでも沢山必要となってくるのがわかるかと思います。

ただ、同じ戸籍にいる人がいれば、戸籍謄本はまとめて一通で問題ありません。

また、審理のために、さらに他の書類を家庭裁判所からお願いされる場合もあります。

また、個別の場合で細かく必要書類が変わるので、提出先の家庭裁判所によく確認しましょう。

時間がなかったり不安であれば、

  • 司法書士
  • 弁護士

といった専門家に、代行依頼をすることも方法の一つとして検討してみてください。

では、次に相続財産管理人に関わる費用の内訳をみていきましょう。

 

相続財産管理人の選任に際し必要な費用

 

収入印紙

800円の収入印紙は提出する申立書に貼って納めます。

 

官報に公告を載せる費用

3775円が必要ですが、申し立てをした時に払うのではなく、裁判所の指示があった時に払います。

 

郵便切手代

連絡用の切手となります。

裁判所毎に必要額が異なるので、手続きをする裁判所に問い合わせをしてみましょう。

 

予納金

現金資産等が少なく、相続財産管理人へ報酬を支払うことが不安と裁判所が判断する場合に必要となります。

手続きの内容や財産額によって報酬額が変わりますので、一般的に数十万円から百万円くらいの間で違ってきます。

これは、申し立てた人の負担になり、相続財産管理人に支払う報酬を確保するためであり、支払って残れば返ってきます。

ただ、報酬の件を考えると相続財産が余りない時に、相続財産管理人の選任を申し立てると結果として損になる場合もあるので注意が必要です。

上に挙げたものの他には、書類を集める際に

  • 戸籍謄本
  • 住民票除票

の発行にお金がかかってくることを計算に入れておきましょう。

 

相続財産管理人選任までの流れ

相続財産管理人選任までに、

  • 必要な書類
  • 費用

についてここまでお話してきました。

揃えた書類や費用を、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に出した後、選任までの流れを簡単にご説明します。

まずは家庭裁判所で相続財産管理人の審判が行われます。

相続財産管理人の候補があればその人がその仕事をする条件を満たすか確認します。

候補がいなければあらためて条件の合う人を、家庭裁判所が選任することになります。

この場合、近くで開業している弁護士等の専門家が選任されることが多いです。

また審判の結果、相続財産管理人が必要ないと結論が出る場合もあります、

同時に、財産の内容を精査し、相続財産管理人に支払う報酬に不安があれば、申立人に支払ってもらう予納金の金額を設定します。

相続財産管理人の選任を、家庭裁判所が公告して一般に広く知らしめ、予納金が必要であれば納めてもらうことになります。

 

相続財産管理人が行う相続までの仕事

相続財産管理人の選任や費用までここでお話してきましたが、管理人を選定しただけでは相続は進みません。

相続財産管理人は、その財産の行先を法律通りに決めていく作業が待っています。

相続財産管理人の主な仕事として、

  • 相続に関することを周知
  • 財産を受け取るべき人を広く募集

することがあります。

その際に公告という、官報に掲載して一般に知らせるという方法ととります。

普段一般の人は使わないため耳慣れない人も多いでしょうが、公告はとても大事な法的な手続きになり、あらゆる人が見る機会を渡すことになります。

相続財産管理人は受け取るべき優先順位に従い、公告を出していきます。

それに対し私はもらう権利がありますと届出があった人へ、財産を渡していくことになるのです。

  • 届出が無い
  • または財産が残っている

ならば、他にいないか次の公告をうち、最後残れば行先のない財産は国庫に納めます。

では、ここから具体的にその流れを見ていきましょう。

 

1、相続財産管理人の選任を知らせる公告をします

まずは、前項の選任までの流れで書いた、被相続人の財産に対し相続財産管理人が選定された公告を、

家庭裁判所が官報に載せることから始まります。

 

2、相続財産の把握、名義変更、貸した人からの回収を行います

相続財産管理人の選任を知らせた後、次の公告までは2ヶ月以上開けます。

その間に相続人が現れる場合もあります。

また、その間に相続財産管理人には大事な仕事があります。

相続財産管理人は相続財産に何があるのか調べて目録を作り、

  • 不動産の名義変更
  • 分散している預金を相続財産管理人名義の口座にまとめる

などの作業を行います。

貸したりしているお金があれば、その際に回収します。

不動産の名義変更は相続財産管理人の名義にするのではなく、登記名義を亡故人の相続財産である旨を登記します。

登記理由は相続人不存在となり、故人の財産であることは変わらないので氏名変更で登記を変更します。

様々な手続きには、相続財産管理人を選任した裁判所の審判書謄本が必要となります。

 

3、相続財産に対して、借金の返済や遺贈の約束がないかを公告します

相続財産管理人選任の公告で、相続人が名乗り出て来なかった場合、

公告を出し遺言があり遺贈を受ける予定の者、故人に貸した債権者に対し、2ヶ月以内に請求、届出してほしい旨を公告します。

債権者や遺贈される受遺者が分かっている場合は、相続財産管理人から公告に出した内容を知らせます。

 

4、相続財産から負債の支払い、遺贈される人への財産分与を行います

この場合前項の2ヶ月間に届出をした場合に限られます。

期間内に届出していないと、他の請求の支払った残りから支払われ、残らなければ支払われないことになります。

その為、遺言書や亡くなった人に対する債権がある場合、相続財産管理人への前もっての連絡や官報の確認等が大事になります。

また、支払いの際に現金が必要であれば、不動産を売ってお金に換えることも相続財産管理人の仕事となります。

 

5、相続人がいないかの確認を公告で出します

  • 受遺者
  • 債権者

が名乗り出ず、財産が残っている場合があります。

その場合は先の公告より2ヶ月過ぎてから、家庭裁判所を通し相続人捜索の公告を出します。

その時は6ヶ月以上の期間を定め、その期間が終わるまでに相続人が出てこない時には、故人には相続人がいないことが確定します。

 

6、相続人がいない場合、特別縁故者の申し立てを待ちます

相続人がいないことが確定してから、3ヶ月以内に特別縁故者の申し立てがあれば財産を分けることになります。

 

7、相続財産管理人が報酬をもらいます

相続財産管理人は家庭裁判所に報酬をくれるように申し立てます。

報酬は相続財産か、あらかじめ相続財産管理人選任の申し立てをした人が入れた予納金から支払われます。

報酬は一定額ではなく、ある程度相続財産管理人の仕事量や仕事内容で変動します。

 

8、残余する財産は国庫に納め、手続きの終了を報告します

残った財産は国庫に納める手続きをし、相続財産の管理手続きの終了を家庭裁判所に管理終了報告書を出して終了します。

 

自分の権利を守る、相続財産管理人選任の申し立て

ある人が亡くなって相続人もいない状態で、貸したお金がこちらに戻って来ないという場合があります。

そうなると、請求先がわからないことで、お金などを諦めてしまう方もいるかと思います。

ですが、そういったときに生きてくるのが相続財産管理人の制度です。

手間はかかりますが相続財産管理人を選任してもらうことは、

  • 故人にお金を貸している人
  • 遺言で遺贈を受ける予定の人

には大きな利益になることです。

それと同時に、制度を知っていれば自分以外が申し立て人でも、

時期をみて公告を確認し、適切に貸したお金の返還や遺贈を受けることができます。

このように相続財産管理人という制度のあれこれを知ることは、実は結構大事なことです。

相続人がおらず請求できなかった、自分のお金の権利を守ることにもつながるのです。