土地や家などの不動産を相続したときに必要になる、相続登記

司法書士に依頼すると、1件当たり3~15万円の報酬が発生します。

出来れば「自分で手続きを済ませたい!」という人も多いでしょう。

今回は、自分でやる場合の手続きと代行依頼にかかる費用についてまとめました。

読んでみて面倒だと思った場合には、司法書士の選び方も説明していますので参考にして下さいね。

自分で相続登記するときの流れ

相続登記をするためには、以下の3つのステップを踏んで手続きをおこなっていきます。

(1)家と土地の評価額を算出する
(2)相続者を決める
(3)相続登記の申請をする

まずは、自分で相続登記の手続きをする場合に必要な準備について、詳しく確認しましょう。

ステップ1.家と土地の評価額の算出

まずは、家と土地の評価額を算出しましょう。

家は相続遺産の対象になり、残された家族で公平な相続遺産の分割をするために「いくらで換金できるのか」を明確にすることが必要なのです。

家と言っても、評価をする際には土地と家に分けて評価を行い、最後に2つの額を足し算します。

それぞれの評価額の算出方法をみていきましょう。

家の評価額の算出方法

家の評価額は、固定資産税評価額がそのまま使われます。

固定資産税評価額とは、固定資産税の基準となる金額で、築年数や建築費などを考慮して算出されているのです。

固定資産税評価額を知るには、固定資産税の納税通知書を確認しましょう。

固定資産税の納税通知書は毎年4月~5月に送られてくるもので、この書類の「課税地積床面積」の一番下の欄に記載されています。

もし通知書が見つからない場合には、家がある市区町村役場にて固定資産税課税課税明細を取り寄せることで確認することが出来ます。

固定資産税課税課税明細を申請する際には、被相続人との関係が分かる戸籍謄本と身分証明書、発行手数料350円が必要です。

土地の評価額算出方法

土地の評価には、土地の面積路線価を使います。

土地の面積は、固定資産税の納税通知書で確認します。

次に、国税庁のホームページから「路線価」を確認して下さい。

路線価とは、道路に面する宅地の1平方メートル当たりの価格のことで、単位は千円です。

路線価を見ると、道路ごとに数字が書かれています。

数字の単位は千円なので、「500」と書かれている場合、1平方メートルあたり50万円ということになるのです。

この路線価と土地の面積を掛け合わすと、土地の評価額を算出することが出来ます。

もし固定資産税の通知書が見つからない場合には、登記簿謄本を取得をすれば面積を知ることが出来ます。

登記簿謄本は、法務局へ行き請求書類をその場で記入して提出するか、オンラインで申請するかどちらかの方法で取得が可能です。

法務局で申請すると発行手数料600円が必要で、オンラインで申請すると法務局で受け取る場合には480円、郵送してもらう場合には500円が必要となります。

オンラインの場合は、『かんたん証明書請求』から、ID登録を行い、請求手続きを行いましょう。

ステップ2.遺産分割協議を行う

遺産分割協議を行い、誰が家を相続するのかを決めます。

遺産分割協議とは、遺産を相続する人が集まって相続財産をどう分割するのかを話し合うことです。

この協議で決めるのは以下のことです。

・相続人の代表者
・誰が何の財産を相続するのか

この決定をもとにして、相続登記の手続きを行っていきます。

※被相続人が残した遺言書が存在したり、相続する権利のある人が1人の場合には遺産分割協議を行う必要はありません。

ステップ3.登記申請書を提出する

相続する家の評価額と相続する人が決まれば、実際に家の相続登記の手続きを進めていきましょう。

相続登記を行うには、必要書類を集め、申請時に必要な費用を確認し、必要書類を提出するという3つのステップがあります。

それぞれ詳しく確認していきましょう。

1.登記申請書の書き方

参考:法務局

登記申請書は法務局の窓口に取りに行くか、法務局ホームページにてダウンロードすることが出来ます。

遺産分割の方法によって申請する書類のフォーマットが異なりますので注意が必要です。

記載例も一緒にダウンロードすることが出来ますので、参考にしましょう。

記載する内容は、以下の通りです。

(1)登記の目的

登記目的は、相続の場合「所有権移転」となります。

(2)原因

相続が発生した日付と「相続のため」と記載しましょう。

(3)相続人

相続人の名前・住所・連絡先(電話番号)を記載します。

連絡先には電話がかかってくることもあるので、携帯電話など電話が取れる番号を記載するようにしましょう。

(4)添付情報

「登記原因情報」と「住所証明情報」と記載するだけで大丈夫です。

(5)登記識別情報の通知

登記識別情報というアルファベットと数字を組み合わせた情報が権利証と同様の効力を持っています。

これを発行したくない場合には、「登記識別情報の通知を希望しません」にチェックを入れましょう。

(6)申請日時と提出する法務局名

申請日とどこの法務局に提出するのかを記載します。

(7)課税価格

固定資産評価証明の金額に対して1000未満の端数は切り捨てをして記入します。

登録免許税の計算に必要な部分です。

1000円未満の場合には1000円となります。

(8)登録免許税

課税価格の0.4%の金額が登録免許税です。

1000未満の端数がある場合には切り捨てられ、1000円未満の場合には1000円となります。

(9)不動産の表示

不動産登記簿の情報をそのまま記載すれば大丈夫です。

土地の場合は、①不動産番号、②所在、③地番、④地目、⑤地積を記載し、

建物の場合は、①不動産番号、②所在、③家屋番号、④種類、⑤構造、⑥床面積を記載します。

(10)収入印紙

登録免許税の分の収入印紙を申請書に貼ることが必要です。

申請をするときにチェックを受けてから金額を確認し、その場で購入することが出来ます。

2.必要書類の取得

法務局で相続登記を行うときには、申請時に提出しないといけない書類があります。

書類の名前、取得方法、取得にかかる費用をまとめましたので、以下をご確認下さい。

書類の名前 取得場所 取得費用 備考
被相続人の除籍謄本または戸籍謄本 最後の本籍地だった市区町村役場 戸籍謄本は一通450円
除籍謄本は一通750円
印鑑と本人確認書類が必要。
代理人の場合には、委任状と代理人の身分証明書が必要。
相続人全員の戸籍謄本 本籍地の市区町村役場 一通450円  印鑑と本人確認書類が必要。
代理人の場合には、委任状と代理人の身分証明書が必要。
相続人全員の住民票の写し 本籍地の市区町村役場  一通200~450円 印鑑と本人確認書類が必要。
代理人の場合には、委任状と代理人の身分証明書が必要。
法定相続人全員の印鑑証明
(3ヶ月以内のもの)
本籍地の市区町村役場  一通数百円
(自治体によって異なる)
 印鑑登録証(印鑑登録カード)、住民基本台帳カード、もしくは個人番号カードが必要。
代理人の場合でも委任状は不要。
遺言書や遺産分割協議書など
遺産分割の内容が分かるもの
手元  0円  遺言書の場合、検認した証明も必要。
相続関係説明図  自分で作成する
サンプル
 0円  戸籍謄本類の原本還付を希望する場合のみ
委任状  自分で作成する
サンプル
0円  代表相続人や代理人が手続きをする場合のみ
手続きをする人の身分証明書  手元  0円  免許証・マイナンバーカードなど

1つでも書類が欠けていると相続登記の手続きが出来ないので、すべての書類が揃っているかしっかり確認をしましょう。

3.登記申請書の3つの提出方法

最後に必要書類をすべて提出し、相続登記の申請を行います。

申請方法は、直接法務局へ行く、郵送する、オンライン申請するの3つの方法があります。

平日に法務局へ行ける人は直接申請がオススメ

平日8:30~17:15までの間に時間がある人は、直接法務局の窓口で申請しましょう。

窓口で相談することが出来るので、万が一誤りがあった場合にもその場で対応することが可能です。

申請当日には、必要書類一式登記申請に使用した印鑑を忘れずに持っていきましょう。

印鑑を持っていくのは、不備があった際に訂正印として使用するためです。

書類を提出した申請日に相続登記が完了はせず、通常1週間~10日ほど手続きに時間がかかります。

登録完了予定日には再度法務局へ行き、登記完了の書類を受け取って手続きは完了です。

登録完了後は登記事項証明書を取得し、内容に間違いがないかを確認するようにしましょう。

法務局へ足を運ぶ時間がない人は郵送での申請がオススメ

平日は仕事などで法務局へ行く時間がないという人は、郵送での申請をしましょう。

郵送を利用する場合、大事な書類なので書留郵便で送るようにして下さい。

また、返信用封筒と切手を同封することで登記完了の書類も郵送で受け取ることが出来ます。

その際には、登記申請書に「送付の方法により登記識別情報通知書及び登記完了証の交付、原本還付書類の返還を希望します。」という文言と送付先、申請者の住所を明記が必要です。

ただし、不備が見つかった場合には印鑑を持って直接法務局まで行かなくてはなりません。

十分に書類をチェックし、不備がない状態で発送するようにしましょう。

パソコンの操作に慣れている人はオンラインでの申請がオススメ

パソコンの操作に自信がある人はオンラインの申請が手軽でオススメです。

オンライン申請の利用時間は平日8:30~21:00までとなっており、法務局の窓口よりも長い時間利用が出来ます。

オンライン申請を利用する際は、以下の手順で手続きを行います。

(1)申請する環境を整える

オンライン申請する場合には、以下の環境が必要です。

インターネット環境のあるパソコン Microsoft Internet Explorerをいつも使うブラウザに設定する
PDFの電子署名プラグイン 国税庁ホームページにて確認
PDF処理ソフト 国税庁ホームページにて確認
 マイナンバーによる個人認証環境 ICカードリーダーライターなど

また、マイナンバーカードを取得し、必要書類はすべてPDFにします。

(2)ソフトウェアと操作手引書をダウンロードする

国税庁ホームページから、申請すためのソフトウェアと操作手引書をダウンロードします。

(3)操作手引書に従って申請を行う

申請の手順は操作手引書に詳しく記載されていますので、参考にしながら申請を行います。

(4)オンライン申請から2日以内に必要書類の原本を法務局へ持参もしくは郵送する

オンライン申請をする中でPDFにして必要書類を送信しますが、それらの書類の原本は法務局へ持参するか郵送する必要があります。

期限は2日となっていますが、どうしても難しい場合には事前に連絡をしておきましょう。

申請完了後、1週間~10日程オンラインでの証明書が交付されます。

また、郵送の場合とは違い、不備があった場合にもオンラインで修正することが出来るので、一切法務局へ行く必要なく手続きを終えることが出来ます。

ただし、パソコンの設定や電子証明書の取得などが手間だったり難しいと感じる場合には、郵送での申請にしましょう。

実際の登記手続きで発生する手間と費用

 

相続登記を自分で行う場合に必要な費用と手間を解説していきます。

司法書士に頼むよりも安く済ますことができますが、その分手間は増えます。

それぞれ確認していきましょう。

相続登記をする場合に必要な費用

次に相続登記の申請に必要な費用を計算しましょう。

相続登記の申請に必要なのは、登録免許税登記簿謄本取得費用です。

まず、登録免許税とは相続に限らず不動産の名義を変更するときに必要な税金です。

相続による登録免許税は、固定資産税の評価額×0.4%で算出することが出来ます。

もし、家の固定資産税の評価額が2,000万円だったとき計算は以下のように行います。

2,000万円×0.4%=8万円

次に、登記簿謄本取得の費用は一つの物件につき600円です。

相続登記を行ったら、必ず最新の登記簿謄本を取得し、間違った記載がないかを確認する必要があります。

登録免許税は申請をする際に支払いが必要で、登記簿謄本取得費用は申請完了後の登記簿謄本取得時に支払います。

このように、相続登記の申請の際には登録免許税と登記簿謄本取得費用が発生することを覚えておきましょう。

自力でする場合は法務局に3回行くつもりで

実は、登記手続きに提出する登記申請書自体は、それほど複雑ではありません。

  • 相続人の住所
  • 不動産の地目・構造

などを、登記簿謄本と固定資産税評価明細書をもとに書きます。

登録免許税を計算して記入する必要がありますが、相続税のように複雑なものではありません。

ただし、法定相続通りに相続するパターンや1人で相続するパターンなど、

それぞれのケースに合わせた要件があるため、手続き全体をみると複雑で素人には難しいものになっています。

共有などで権利関係が複雑になってしまい、専門家でないと手に負えなくなることもあります。

自力でやる場合には、まず必要書類をそろえようとする前に、一度法務局に相談しにいくことをおすすめします。

ついでに対象不動産の登記簿謄本を取得できます。

法務局によっては、相談予約を受け付けているところもあります。

必要書類がそろい、申請書を記載したら、もういちど法務局に行って提出します。

郵送でも受け付けています。

わからないことが特になければ、

  • 相談のときにだけ訪問
  • あとは郵送でやりとり

するというのもいいでしょう。

申請書や必要書類に不備がある場合は、法務局から電話連絡がきます。

  • 再度郵送する
  • 再訪問する

のいずれかの手段で修正します。

このような流れになるので、自力の場合は

  • 相談
  • 提出
  • 再提出

3回、相続した不動産の近くにある法務局に行くと考えます。

法務局は土日祝日はやっていないので、平日仕事がある人は休む必要があります。

書類の作成や手続きの情報を調べるのが得意な人は、インターネットと郵送のみで完結することも不可能ではありません。

自力でやる場合、登記の手続きは早い人で1日

複雑な案件だったり書類作成や法律が苦手な人だったりすれば3~4日かかるかもしれません。

司法書士は3~15万円程度で依頼できる

ここまでは、自分で相続登記をする方法や費用について説明してきました。

手続きに不安があったり、面倒だという人は、司法書士依頼することがオススメです。

司法書士にお願いをすると、ほとんど自分ですることはなくなり、手間がなくなります。

ここからは、司法書士に頼んだ時の費用や司法書士がやってくれることを確認していきましょう。

司法書士にかかる費用

司法書士に依頼するときに、心配なのは報酬費用ですよね。

登記手続きの報酬は、不動産1件につき最低3万円~15万円程度としている司法書士事務所が多いです。

必要書類の取得や遺産分割協議書の作成なども含めての価格です。

初回の相談は無料の事務所が多く、そのときに見積書を出してもらうと良いでしょう。

司法書士がやってくれる仕事

意外と司法書士にかかる費用は高くないと感じてもらえたかと思います。

基本的に、司法書士は相続人の代理人として、相続登記に関するすべての業務を行ってくれるのです。

たとえば、手続きに必要な住民票や戸籍謄本も取得してくれます。

もちろん、相続登記の申請書の作成や遺産分割協議書まで作成してくれるのです。

また、一番難しいといわれている不動産の評価額の算出や登録免許税の算出まで任せることが出来ます

これらは司法書士にしか任せることが出来ない業務です。

少しでも手続きに不安があったり、手間をかけたくないという人は、司法書士にお願いをしましょう。

優秀な司法書士の選び方

ひとことで司法書士といっても、さまざまな司法書士がいます。

強い分野も違えば、1人1人の人柄も異なります。

そこで、相続登記を司法書士に依頼するときに、事前に確認しておきたいポイントを確認していきましょう。

ポイント1.相続に強い司法書士

まずは、相続に強い司法書士を選ぶようにしましょう。

相続登記の手続きをするためには、もちろん書類などの作成も必要です。

もし、遺産分割協議書の作成まで任せるのであれば、ある程度相続についての知識も持っていると安心できます。

事例を挙げながら第三者目線で相続についてアドバイスをもらえると、とても心強いです。

インターネットでも「相続登記 司法書士」と自分の住んでいる地域を入れれば、簡単に検索できます。

相続関係に強い司法書士の事務所は、ホームページにも、その旨が書かれていることが多いです。

必ず相続に強い司法書士を選ぶようにしましょう。

ポイント2.初回相談時に見積書を提示してくれる司法書士

はじめの相談時に、見積書を提示してくれる司法書士を選びましょう。

ホームページなどで「格安!3万円から!」と安く見せている事務所も多くありますが、

さまざまなオプションを追加させられ最終的には予算を大幅にオーバーしてしまった、なんてことがあります。

後々トラブルにならないように、見積書を提示してもらうようにしましょう。

また、追加料金がかかる場合はあるのか、など事前の確認をしっかりと怠らないようにしてください。

料金設定が明確で、料金に納得するまで説明してくれる司法書士を選びましょう。

ポイント3.税務にも詳しい司法書士

相続登記だけでなく、税務にも詳しい司法書士を選びましょう。

不動産を相続すると、相続税や登録免許税を払わなければなりません。

どんな司法書士でも、相続登記の手続き自体をすることは出来るはずです。

しかし、その後、「相続税を払わないといけないなんて知らなかった」「予想よりも高い登録免許税が発生した」なんてこともあります。

そんな時、税金の話も総合的にアドバイスしてくれる税理士だと安心です。

初めて相談をする時に、税金の話もしっかりとしてくれるかを判断基準にしましょう。

もし、「相続登記することで発生する税金や相続税を先に知っておきたい!」という人は、先に税理士に相談するのも手ですよ。

気軽に税理士紹介サービスを利用してみて下さい。

(税理士の紹介サービスについては、『相続なら税理士紹介サービスを活用しよう!利用の流れや注意点を解説!』に詳しく解説しています。)

まとめ

相続登記を自分ですると、書類の取得や法務局への相談などで1週間ほど費やすことになります。

司法書士に依頼したら費用が掛かる代わりに、手続きは数時間程度で済ませることが可能です。

どちらにしても登録免許税、戸籍取得の費用などはかかってきます。

少しでも不安がある人や、時間が取れない人は、司法書士に相談をしましょう。

 

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この記事を書いた人

ファイナンシャル・プランナー ファイコロジスト山田

不動産から為替相場の予想まで、お金に関するテーマについて幅広く執筆。
相続に関連して実家を失ったことがある。
これらの経験から、相続関係業務のモットーは「運用を含めた総合的な人生設計」「関係者全員が納得する分割」。