相続に関する裁判として有名なのは、遺産分割に関する調停や審判です。

しかし遺産分割の前に、

  • 遺言が無効ではないかと争ったり
  • 遺留分減殺を行ったり

争う内容によっては、地方裁判所での裁判が必要なこともあります。

ここでは、相続に関するよくある裁判をまとめました。

 

遺産分割に関する調停及び審判

 

調停前置主義

遺産分割に関しては、調停前置主義といって、

必ず調停で話し合いを試してみて、どうしても話し合いで合意できなかった場合のみ、遺産分割の審判に進むことができるようになっています。

 

遺産分割の審判

遺産分割が調停で解決しない場合には、審判移行になり、家庭裁判所が遺産分割の方法、つまり誰にどの遺産を取得させるかを決めます。

 

寄与分に関する調停及び審判

 

寄与分とは?

寄与分とは、例えば、家業を継いで、父母と一緒に事業を切り盛りして、父母の財産を増やすことに貢献してきた子のように、

被相続人の財産の維持又は増加に貢献した相続人について、遺産分割でその取り分を考慮する制度です。

民法の条文上は、被相続人に対し、

  • 事業に関する労務の提供
  • 財産上の給付
  • 被相続人の療養看護
  • その他の方法で特別な寄与をしたこと

が必要であるとされています。

近年における寄与分は、介護との関係で問題になることが多くなっています。

確かに在宅介護の過酷さを考えれば、被相続人の介護に貢献した相続人に報いることが公平であるように思います。

ただ、寄与分とはあくまでも、「相続財産の維持・増加に貢献したこと」が必要です。

介護だと、

  • 相続人の一人が介護をしたおかげで、付添人などを頼む必要がなかった
  • 施設に入所する必要がなかった分、遺産が減らずにすんだ

というような事情が必要です。

寄与分が認められる場合には、遺産からその寄与分を差し引きます。

例えば、遺産が3,000万円あって、相続人の一人にそのうち500万円の寄与分が認められた場合、

残りの2,500万円を相続人が分割することになります。

 

調停前置主義

ある相続人に寄与分が認められるかどうか、認められるとしても、それはいくらくらいが相当なのかの算定は難しいところです。

遺産分割の調停の中で寄与分についても話し合うことが一般的なのですが、

どうしても合意できない場合には、寄与分に関しても調停・審判を経ることが必要になります。

そして、寄与分も、調停でまず話し合ってからでないと、審判に進むことができません。

 

寄与分を確定させて遺産分割へ

調停もしくは審判で寄与分が確定したら、その寄与分を除いて、残りの遺産分割の話し合いに入ります。

 

遺産確認に関する裁判

ある財産が、遺産であるかどうかについて争いがある場合に、地方裁判所に遺産確認訴訟を提起して、その財産が相続財産かどうかを判断してもらいます。

  • 例えば、事情があって、子供名義で預けていた預金(名義預金)
  • 所有権移転登記が完了していなかった不動産

など、被相続人の名義ではないけれど、実際には、被相続人のものであると主張する場合などに、遺産確認訴訟を提起します。

 

遺言に関する裁判

  • 遺言が偽物なのではないかと争う場合や、
  • 認知症になっている人に無理やり書かせたのではないか

など、遺言の有効性について争うときには、遺言の無効確認の訴えをします。

 

調停前置主義

遺言の無効確認も調停前置主義なので、まず、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。

 

遺言無効確認訴訟

調停で話し合いができなければ、地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起します。

遺言無効確認訴訟では、

  • 筆跡鑑定を行ったり
  • 遺言をしたときの認知症の程度などを知るためにカルテを取り寄せたり

と、いろいろと時間がかかります。

 

決着したら遺産分割や遺留分減殺請求に進む

遺言の無効が確認されたら、遺言はなかったことになるので、通常どおり、遺産分割の話し合いに進むことになります。

遺言が有効と判断されたら、遺言が有効であることを前提として、他に分けるものがあれば遺産分割に進みます。

その遺言が遺留分を侵害している場合には、遺留分減殺請求に進みます。

 

遺留分に関する裁判

 

遺留分とは?

遺留分とは、法律上取得することが保障されている遺産の一定の割合のことで、兄弟姉妹以外の相続人に認められています。

つまり、相続財産に対する最低限の取り分のことです。

 

遺留分減殺の意思表示

生前贈与や遺言書によって、自分の最低限の取り分を侵害されていることが発覚した場合、

相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったとき

から1年以内に遺留分減殺の意思表示をしなければなりません。

遺留分減殺の意思表示は、証拠を残すために、内容証明郵便によって行います。

なお、遺言無効確認の訴えをする予定であっても、念のために遺留分減殺の意思表示だけはしておく必要があります。

 

調停前置主義

遺留分減殺請求もまずは話し合いをしてみることになりますので、家庭裁判所で、調停から始めることになります。

 

遺留分減殺請求訴訟

遺留分減殺請求の調停では決着がつかなかった場合、地方裁判所に遺留分減殺請求訴訟を提起することになります。

 

親族による使い込みに対する裁判

最近、多いのが、親と同居していた子が、親の財産を使い込んだという事例です。

使い込みを取り戻すためには、地方裁判所に不当利得返還請求訴訟を提起する必要があります。

こういった事例では、親のお金がなくなっていたとしても、

  • 親が使ったのか
  • 親族が使ったのか

という判別がなかなか難しく、裁判では立証が難しいことも多いのが実情です。

 

相続に関する裁判を防止するために

 

元気なうちに遺言を作成する

相続に関する裁判を防止するために一番重要なことは、遺言書を作成しておくことです。

遺言書には、

  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 公正証書遺言

の3種類があり、それぞれ厳格な要件が定められていますので、

要件をよく確かめて作成し、争いの種にならないようにする必要があります。

また、遺言書の内容が、相続人の遺留分を侵害していると争いが発生しますので、遺留分には注意しなければなりません。

 

状況が変わったら、遺言書を書き直す

  • 元気な頃に考えていたことと
  • 老年になってから考えること

は変わってくると思います。

子の一人が献身的に介護してくれたら、その子に多めに財産を渡したいとも考えるでしょう。

遺言書は何度でも作成することができ、一番新しいものが有効となります。

 

後見について考えておく

年齢を重ねて、自分で自分の財産を管理するのが大変になってきた場合には、

安易に子の一人に財産管理を委ねてしまうと、自分が死亡したあと財産を使い込んだかどうかという争いに発展することがあります。

そこで、財産管理については、任意後見制度を利用することも検討しましょう。

任意後見人には、家庭裁判所が後見監督人を選任してくれるので、不正を防止してくれます。

ただし、任意後見契約を悪用する事例も報告されていますので、できれば、弁護士や司法書士などの専門家と契約した方がよいでしょう。

 

まとめ

相続の争いは、実はかなり複雑です。

自己判断せずに早めに弁護士に相談しましょう。