相続放棄は多額の借金を相続してしまいそうな時に有効な方法です。

例え自分で作った借金でなくても、

一度相続をしてしまうと自分が債務者としてこつこつ返済しなければいけません。

ほとんど面識のない叔父や叔母の1億円の借金であったとしても、

世間的には気の毒な話ではあるのですが、自分が相続してしまったら債務者として返済するしかないのです。

現実として、相続によって多重債務者になってしまい、自己破産したという話もあります。

しかしできればデメリットの大きい自己破産は回避したいですし、

そもそも人の作った借金を相続人だからと強制的に相続するなんて嫌ですよね。

相続放棄はそんな借金相続にとっても有効な手続きです。

しかし、相続放棄をしたから安心。

これで終了!

そう思っていませんか?

確かに手続きは終了なのですが、相続放棄後にもすべきことは山積みなのです。

  • 相続放棄後はどんなことをするのか?
  • 手続き以外にしなければいけないことはあるのか?

意外に大変な相続放棄後の現実に迫ります。

 

まず相続放棄についておさらいしよう!

相続放棄は裁判所でしかできない手続きです。

相続放棄をすることによって「最初から相続人ではなかった」ということになりますので、

法の番人のお墨付きのもとに絶対的効力でもって借金相続から逃れることができます。

その相続だけを放棄することになりますので、他の相続には一切影響しないというメリットもあります。

例えば、

  • 父親の相続では父親が残した1億円の借金を母親と共に相続放棄
  • 母親の相続では借金がなく、遺産である預金100万円を相続したいから相続放棄しない

という使い方もできます。

それぞれの相続単位で放棄するかどうか、使い分けることもできます。

相続という突発的な事態でいきなり多額の借金を背負わなければならないという大変な事態を回避することが可能です。

参照:
http://www.shine-souzokuhouki.net/

 

相続の現実も知っておこう

まだ誰かの相続人になったことのない人にはあまりピンとこない話かもしれませんが、

日本においては、高額の遺産相続により、相続税が発生するケースはたった4パーセントに過ぎないというデータがあります。

  • 相続税の税率
  • 控除制度

が改正されて、相続税を支払わなければならない人が増えるだろうという予測はなされていますが、

現時点においてはさほど多いというわけではありません。

借金を相続すると、

  • 遺産がマイナス
  • またはプラスマイナスゼロかほとんど残らない

という人もいます。

相続人になったことがない人も他人ごとではなく、

相続放棄については頭の片隅に置いておいた方がいいと言えるのが日本の相続の現状です。

参照:
http://www.jili.or.jp/

 

相続放棄申述受理通知書をもらって終わりではない

さて、そんな借金相続に有効で、日本の相続ケースを考えれば多くの人が無関係ではない相続放棄は裁判所で手続きできると言いました。

裁判所で書類のやり取りなどを経て、最終的に相続放棄が認められると裁判所から「相続放棄申述受理通知書」という書類がもらえます。

この書類を受け取れば相続放棄は適正に終了となります。

しかし、相続放棄をした時の状況によっては他にしておいた方がいい、またはしなければいけないこともあるのです。

相続放棄で借金を逃れることはできるのですが、相続放棄の終了が新たな始まりになってしまうこともあるのです。

 

相続放棄したことを他の人は知っているの?通知事情

相続放棄後は裁判所から相続人へ通知がいくわけではありません。

  • 自分で説明するか
  • 通知を送るか

ということになります。

これは別に必須ではありませんが、相続放棄という手続きは、

「手続きをした相続人だけが最初から相続人ではなかったことにする」

というものであるため、他の相続人は個別に自分で相続手続きをしなければいけないのです。

自分が知っている相続人に自分が相続放棄をしたということを伝えなければ、

他の相続人だけが多額の借金を背負い込む結果になってしまいます。

参照:
http://www.souzoku-yuigon.jp/

 

相続放棄の通知は行かない!他の相続人には連絡を

例をあげるなら1億円の借金を残した父親の相続人が

  • 母親
  • 息子

だけだった場合、

母親だけが相続放棄をしてしまえば息子が全額の借金を相続することになってしまいます。

もし息子と母親が同居して生計を同じくしているのであれば、これでは母親が相続放棄をしてもあまり意味がないような気がしますね。

結局、息子が1億円の借金を返さなければならないわけですから、生計を同じくしている母親も必然的に借金の影響を受けざるを得ません。

相続放棄をしたからといって全ての相続人が借金から逃れられるわけではありません。

個別に相続放棄の手続きが必要になります。

自分が相続放棄をしたなら、必須ではないとしても、他の相続人が多額の借金を背負わないように通知してあげると良いでしょう。

裁判所から他の相続人に自動的に通知はいきませんということは覚えておいてください。

 

債権者にも通知はなし!問い合わせには自分で応じる

また、債権者に対しても裁判所から通知がいくわけではありません。

例え借金を作ったのが亡くなった人であっても、相続人は債権者と直接話すのが嫌、苦手と零す人が多いようです。

確かにお金の話はし難いですよね。

相続放棄で借金からは絶対的に逃れることはできるのですが、

手続き後に、債権者から

  • 説明を求められれば自身で説明する
  • 相続放棄の証明を求められれば相続放棄申述受理通知書をコピーする

などして、自分で対応する必要があります。

そこまで裁判所はしてくれません。

もし債権者とやり取りすることが不安ということであれば、こういった手続き後の雑務も含めて

  • 弁護士
  • 司法書士

に代理してもらうのがいいですね。

相続放棄の手続き後に証明や説明を求められたら、基本は手続きした本人がきっちりしなければいけないということです。

相続放棄をして終わりではなく、その後の雑務があると考えれば気が重いところがあります。

 

相続放棄から相続人不存在手続きがはじまることも

相続放棄は手続きをした相続人がその相続に対して、最初から相続人ではなかったことにする手続きです。

借金から逃れるために相続人が次々に相続放棄をした結果、時に相続人が誰もいなくなるということになります。

特に借金相続では相続人全員が相続放棄をしてしまうことも珍しくないため、

相続人が「そして誰もいなくなった」なんて、小説のタイトルみたいになることも珍しくありません。

相続人がいない遺産は最終的に国庫に帰属します。

しかし国庫に帰属するまでには一年以上に及ぶ手続きがあり、その間に遺産の不動産など(相続放棄された遺産)を管理するという問題が生じます。

また、元相続人は最後の責務という形で手続きに関わり、費用負担もする必要があります。

相続放棄後にこの相続人不存在の手続きが始まり、相続放棄が新たな手続きの始まりということも。

参照:
https://www.inage-zimusyo.com/

 

最後に

相続放棄はある日突然に借金の相続で、債務者になってしまうことから逃れられる有用な手段です。

相続放棄手続きを裁判所で行い、最終的に相続放棄申述受理通知書を受け取れば手続き終了ではあるのですが、

状況によってはその後に引き続き別の手続きをし、相続財産の後始末を求められることもあります。

また、個人で相続放棄をした人は

  • 債権者
  • 他の相続人

への連絡は全部自分ですることになります。

これは必須ではありませんが、相手から尋ねられることもあり、

その際はきっちりと相続放棄の手続きを済んでいることを自分自身で答えることになります。

もしこういったアフターフォローまで含めて代理してもらいたいなら、

相続放棄に際してすぐに弁護士などの法律の専門家に相談するのがいいですね。

確かにその分だけ費用がかかりますが、債権者とびくびくしながら話す必要もありませんし、場合によっては他の相続人も含めて相続放棄をしてもらえます。

また、相続人がいなくなった後の手続きについてもアドバイスしてもらえます。

相続放棄手続きだけで全てが終わると思っていませんか?

借金相続を回避して、時にはその後にどんどん雑務や手続きが必要になるのだということは覚えておく必要があるのではないでしょうか。