相続放棄とは、相続権自体を裁判所の許可を得て捨ててしまうことをいいます。

相続は亡くなった人の遺産を、亡くなった瞬間に自動的に相続人が受け継ぐことになります。

法律によって「人が亡くなった瞬間に自動的に相続がおきる」と定められているからこその救済制度が相続放棄なのです。

  • 救済制度?
  • どうして遺産がもらえるのに相続権自体を捨ててしまわなければいけないの?
  • どんな時に有効なの?
  • 手続きの流れと必要書類は?
  • 相続放棄申述書って何?書き方は?

そんな相続放棄に対する疑問にまとめてお答えします!

 

遺産をどうして放棄するの?相続放棄手続の意味

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そもそも、どうして遺産がもらえるのに放棄をしなければいけないのでしょう。

相続の対象になるのは

  • 預金
  • 不動産
  • 投資信託

などとにかくお得になるようなものばかりです。

中には、

  • いきなり親族の死で高額が転がり込んでくる人
  • ほとんど縁もなかった親族の多額の遺産を受け継ぐ

ことになり、言い方は悪いですが「ラッキー!」と思う人だって確かに存在します。

法律の世界では「笑う相続人」なんていう言葉まであるほど、相続は本当にラッキーな一面を持っているのです。

お金や不動産を法律で正当に渡しますと言っているわけですから、それを拒否するのはちょっとおかしいような気がしますね。

しかし、相続放棄という制度が作られたことには重要な意味があるのです。

 

死亡によっていきなりプラスとマイナスの相続開始

重要な意味とは、

  • 相続がいきなり起きてしまうから
  • 借金も相続の対象になってしまうから

です。

例えば皆さんは親族から「100万円の札束をあげる」という申し出を受けたらどうしますか?

たいていの人が「特に条件がないなら」と、大喜びでもらってしまうのではないでしょうか。

中には裏がありそうな気がして「いりません」と答える人もいるかもしれないですね。

ここで考えていただきたいのは、「あげるよ」と言われた時に皆さんはYESまたはNOを選択することができるということ。

この100万円はいわばプレゼント(贈与)ですから、受け取るか受け取らないかは皆さん次第です。

選択権があるということです。

しかし相続は違います。

民法では・・・

(相続開始の原因)
第八百八十二条  相続は、死亡によって開始する。

と決められているため、選択権はありません。

誰かが亡くなればその瞬間に相続人に対し既に相続が起きているということです。

相続には贈与の時のような選択権は一切なく、法律で自動的に行われてしまうと決まっています。

「いらないです」と主張しても

「いえいえ、もう亡くなった瞬間にあなたが相続していることになりますので」という話ですね。

 

相続でいきなり債務や負債を?

法律で自動的に亡き人の不動産やお金が相続人のものになるのであれば、それは確かに笑う相続人であり、ラッキーでもあるかもしれません。

しかし、相続のほとんどはラッキーでは済まないのです。

日本において相続税が課税されるくらいの遺産を相続するケースは100件のうちたった4件。

残りの96件は相続税が課税されないくらいの遺産額か、あるいはマイナスになってしまって課税のしようがないというケースです。

マイナス……そう、遺産には

  • 借金
  • 未払いの税金
  • 未払いの医療費

といったマイナスも含まれるのです。

都合よく自分のメリットになる

  • 預金
  • 土地

だけ相続できれば嬉しいのですが、さすがにそこまで美味しい話はありません。

「負の遺産」という言葉があるように、負の財産だって相続対象!

負の遺産として代表的なものはやはり借金です。

亡くなったAさんに800万円の預金が遺産としてあったとしても、借金が900万円あればこちらも遺産ですから差し引きで100万円のマイナスです。

参照:
http://saimuseiri.kabarai-sp.jp/

参照:
http://www.jili.or.jp/

 

財産はいりません!相続権不要!それが相続放棄

しかも相続では、相続人に受け取るかどうかの選択肢がないと言いました。

マイナスが大きくても、誰かが亡くなった瞬間に相続人は自動的に選択権なく遺産相続をしていることになります。

先のケースで考えると、

Aさんが亡くなった瞬間にAさんの相続人は自分が全く作った覚えのない100万円の借金を選択権なく背負うことになります。

民法でそう決まっているわけですから、債務者になることが強制されているに等しいです。

しかもこの借金がもっと多額だったらどうでしょう。

預金5円が唯一のプラスで、あちこちに総額1億円の借金をしているBさんが亡くなったとして、

亡くなった瞬間にBさんの相続人が借金を背負うことが法律で強制される。

これは気の毒ですね。

Bさんの相続人が社会人として頑張って借金もなく暮らしていたのに、相続という選択権の一切ない事柄によっていきなり多重債務者化してしまいます。

そこで、相続が起きてから事後に

  • やっぱりあの相続ナシ!
  • 相続権いりません!

という手続きが生まれました。

自分の作った借金なら仕方がないけれど、相続でいきなり自分以外の人間がこしらえたマイナスを背負うのは気の毒。

だからこそ救済措置が生まれました。

その救済措置こそが『相続放棄』なのです。

 

 

相続放棄の手続きは家庭裁判所で!申立方法は?

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相続放棄は裁判所に申述することによって「最初から相続人ではなかったこと」にしてもらう手続きです。

借金などの負の遺産だけ捨てるのではなく、その相続においては最初から相続人ではなかったことにしてもらいます。

相続を考える時によく家系図を簡単に描きますが、

今回の相続において、その家系図からは存在しない人間として扱ってください、相続権自体を捨ててしまいますという手続きです。

相続放棄をすることにより、

  • 遺産の一切の相続をしなくていい
  • つまり借金を背負わなくて済み返済する必要もなくなる
  • 債権者の取り立てに対し「相続放棄しました」とはっきり主張できる

という効果があります。

不動産や預金といったプラスだけ都合よく受け継ぐことはできません。

相続権自体を放棄してしまう関係上、マイナスの多い相続に有効です。

また、判例では相続放棄の効果は絶対的とされています。

亡くなった人がお金を借りた債権者から

「あなた相続人でしょ?借金も受け継いでいるでしょ?お金返して!」

と言われても、

「いえ、相続放棄をしましたので。相続権自体を放棄しましたので返済の必要はありません」

とはっきり主張することができます。

 

放棄しなければいけない遺産にお墓は含まれる?

なお、相続放棄をしても

  • お墓
  • 神棚

などは遺産に含まれないので受け継ぐことが可能です。

また、相続放棄の手続きはその相続の時だけ有効です。

父親が多額の借金を残して亡くなって相続放棄し、息子とお母さんが相続放棄をしたとします。

その後、お母さんが100万円を残して亡くなった場合、息子は通常通り相続人として遺産を受け継ぐことができます。

あくまで相続放棄は、その相続放棄の手続きをする相続においてだけ有効で、他に人を相続する時は通常通りということですね。

 

 

書類は?相続放棄申述書をまず提出

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相続放棄は裁判所でしかできません。

相続人同士の話し合いで「私は遺産はいりません」と主張することを

「遺産は放棄したから」と言う人もいますが、それは厳密には「いらない」と相続人間で取り決めただけであって、相続放棄ではありませんので要注意です。

相続放棄をすれば債権者が泣くわけですから、裁判所という法の番人のもとでしか相続放棄は許されていません。

手続きの流れはとても簡単です。

裁判所側が用意した『相続放棄申述書』を記載し必要書類と共に提出して裁判所の許可をもらうだけです。

裁判所が許可をすると相続放棄をしましたという証明書(相続放棄申述受理通知書)が届きます。

これにて相続放棄が完了というわけです。とても簡単ですね。

自分でもできますし、司法書士か弁護士に代理してもらうこともできます。

裁判所のホームページから書式のダウンロードもできますよ。

参照:
http://www.courts.go.jp/

相続放棄申述書の記載方法

相続放棄申述書はとても簡単な書類です。

  • 自分の名前
  • 亡くなった人(被相続人)の名前

など必要事項を簡単に記載すればOKです。

成人用と未成年用の書式がありますが、未成年用の書式は親権者の記載欄が増えているだけで中身が特に劇的に変わっているというわけではありません。

皆さんが迷うことがあるとすれば、遺産の内訳を記載する欄かもしれません。

この欄については遺産の一円単位までの詳細な記載が求められるわけではありません。

相続人も遺産については「大体このくらい」とだけしか把握していない事が多いため、大体で記載して問題ありません。

ただし「大体でいいのか。よし。預金は書かないでおこう」というズルは駄目ですよ。

この書類を提出したからといって必ず相続放棄が認められるわけではありません。

認めるかどうかは裁判所の判断次第です。

相続放棄の手続きでは、裁判所は多かれ少なかれ遺産や相続関係の確認をしますので、ズルをすると「相続放棄は許しません」と言われる可能性があります。

 

証明のために戸籍も必要!難しかったら司法書士や弁護士へ

相続放棄申述書はいわば相続放棄の申込書のようなものです。

その他に必要書類がありますので、きちんと揃えて提出することになります。

基本は、

  • 申述書
  • 戸籍

のセットで、放棄する財産や相続人との関係によって追加で各種書類が求められることがあります。

揃えることが難しいのが戸籍です。

  • 弁護士
  • 司法書士

に相続放棄を依頼すると必要な分を専門家の方でそろえてくれるのでとても楽です。

それぞれの相続ケースの必要書類を申述書と共に提出し、後は裁判所からの照会に応じ、判断が出るのを待つだけです。

 

申請費用はどのくらいなの?

相続放棄に必要になる費用は800円から。

この800円は相続放棄の手続き手数料のようなもので、裁判所に印紙で納めます。

この他に裁判所とのやり取りで必要になる切手代などがあります。

基本的に必ずしも裁判所に足を運ぶ必要はないため、郵送を使えば相続放棄の手続き自体が1,000円程度でできてしまうことも。

ただし、戸籍などの必要書類の取得には役所に別途手数料を支払う必要があります。

あくまで戸籍などの取得手数料を除いての話です。

ただ、遺産の額は相続放棄の手続き費用とは関係ありませんから

「借金が多いからその分だけお金がかかる?」

と心配になる必要はありません。

弁護士や司法書士に依頼した場合、面倒な書類の取得から作成まで全てしてもらって数万円くらいからと考えておけばいいでしょう。

 

 

相続放棄の要注意ポイントとは

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相続放棄をする時の注意事項が2つあります。

かなり重要なことですので、相続放棄を検討する上で把握しておく必要があるポイントです。

 

①相続放棄には期限がある

相続放棄には期限があります。基本的に相続の開始があったことを知った時から3か月になります。

期限内に手続きをしてくださいねという決まりです。

期限を伸ばす手続きもありますので、徒過しそうな時は早めに裁判所または法律の専門家に相談しましょう。

早めの手続きが重要です。

参照:
http://www.tokyo-intl.com/

②勝手に遺産を使ってしまうと?

相続放棄をしようと考えているのであれば、遺産に手をつけることはご法度です。

なぜなら、

  • 預金といったプラスだけ使ってしまい
  • 借金といったマイナスだけを放棄する

というように遺産に手を付けてしまうと、裁判所側が相続放棄を認めない可能性が高くなるのです。

債権者が弁済を請求してきても「手続きしますので」「手続き中なので」と弁済を拒むことも重要です。

もし債権者と話をするのが苦手ということであれば法律の専門家に相続放棄自体を依頼し、対応も全て代理してもらうと安心です。

借金を返すことも含め、相続放棄をするなら

  • 遺産には触れない
  • そして使わない

が鉄則です。

参照:
http://www.o-shihoushoshi.com/

 

最後に

相続は被相続人の死の瞬間に強制に等しく起こります。

  • 受け継ぐ?
  • 受け継がない?

という選択肢は一切ないため、相続放棄という救済措置が存在しています。

遺産に借金が多ければ相続放棄が有効という話はよく耳にしますよね。

もちろんその通りではあるのですが、中にはなかなか判断のつかないケース、そして何が遺産なのか判断がつかないケースもあることでしょう。

司法書士や弁護士に相談をすれば遺産を特定した上で相談に乗ってくれます。

いきなり相続放棄をするのではなく、まずは専門家に相談してみるのはいかがでしょうか?

その場合も、期限にはくれぐれもご注意を。