平成26年7月、法務省が、平成29年5月から、相続情報の証明書の発行制度を始めると発表しました。

これは、どのような制度なのでしょうか?

そして、そもそも、現在はどのような書類で、相続を証明する必要があるのでしょうか?

相続を証明する書類について、まとめました。

 

 

相続を証明する書類が必要な場面とは

 

法務局で不動産の相続登記をするとき

不動産の登記は、不動産の所有権を公示する大事なものです。

そこで、誰が不動産を相続したのかについて、きちんと、相続を証明する書類を提出しなければ、相続登記をしてくれません。

 

銀行や郵便局で預貯金口座を解約するとき

  • 銀行
  • 郵便局

は、相続人同士の争いに巻き込まれることを警戒します。

相続人の一人に払い戻したことで、他の相続人から、文句を言われることを恐れるのです。

そこで、きちんとした相続の証明書類の提出が必要となります。

 

証券会社で株式や投資信託の相続手続きを行うとき

証券会社も銀行や郵便局と同じで、相続人同士の争いに巻き込まれることを恐れます。

そして、

  • 株式
  • 投資信託

は、遺産分割で、誰が相続するか決まるまで、相続人全員の共有の状態になっています。

そこで、遺産分割の結果、誰が、その株式や投資信託を相続することになったのかについて、

相続を証明する書類をもって示さなければ、相続手続きをしてくれません。

 

被相続人の信用情報から、借金の有無を調べるとき

プラスの遺産よりも、マイナスの遺産、すなわち借金の方が多ければ、相続放棄を考えるかもしれません。

しかし、相続放棄は、原則として、

相続開始を知ったときから、3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければいけません。

そこで、被相続人が借金をしていた可能性があると思う場合には、被相続人の信用情報を取得した方がいいということです。

信用情報(借金の情報)は、とても重要なプライバシーですので、法定相続人しか取得することができません。

そのため、自分が法定相続人であることを証明する書類を提出する必要があるのです。

 

 

相続を証明する書類とは

 

戸籍謄本と除籍謄本

被相続人の配偶者であれば、自分の戸籍に被相続人の死亡の情報(除籍)も載っていますので、

自分の戸籍謄本を取得すれば、自分が相続人の一人であることを証明できます。

未婚の子であれば、親と同じ戸籍に入っていることが多いので、自分の戸籍には、親の除籍の情報も出ています。

既婚の子は、自分の戸籍謄本に「従前の戸籍」として、親の戸籍が載っていますので、

  • 自分の戸籍
  • 親の除籍

を取得すると、2つがつながり、親子の関係が証明できます。

例えば、銀行に

  • 被相続人の口座の取引履歴を請求するような場合
  • 被相続人の信用情報を取得するような場合

には、自分が相続人であることだけを示せば足り、他の相続人まで示す必要はありません。

そのため、自分と被相続人とをつなぐ戸籍謄本及び除籍謄本を準備すればいいことになります。

 

被相続人の出生から死亡までの戸籍一式と相続関係図

相続手続きを行う場合には、相続人全員を示す必要があります。

そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式を取得することが必要になります。

また、相続の第三順位である兄弟姉妹が相続人である場合には、第二順位である親が死亡していることを示す除籍も必要になります。

この場合、第一順位である子がいないことは、出生から死亡までの戸籍一式で判明しています。

この一式の書類で、相続人全員の氏名と法定相続分を証明することができます。

 

遺産分割協議書と戸籍一式+相続関係図

遺産分割協議書では、それぞれの相続財産を相続する人が、結果的に誰になったのかを証明することができます。

遺産分割協議書は、

  • 相続人全員の実印押印
  • 印鑑証明書が添付されていること

が必要です。

また、遺産分割協議書に相続人全員が署名・押印しているということを証明するためには、

出生から死亡までの戸籍等一式も必要になります。

 

家庭裁判所の調停調書又は、審判書

家庭裁判所の遺産分割調停が成立した場合には、調停調書が相続の証明書になります。

この調書によって、

  • 相続人全員の氏名
  • 最終的にどの相続財産を誰が相続したか

を証明することができるようになります。

遺産分割の審判書も同様ですが、

審判書には、家庭裁判所が発行する確定証明書を添付することが必要になります。

  • 調停調書
  • 審判書

は家庭裁判所が作成するものですが、

その際に、家庭裁判所は、相続人全員が手続きに参加しているかどうかをチェックしています。

調停調書や審判書に記載されている相続人が全員だということが分かります。

そこで、調停調書や審判書を相続の証明書として使う場合には、戸籍一式をつける必要はありません。

 

検認済みの遺言書

遺言書によって、財産を相続した場合には、遺言書が相続の証明書になります。

遺言書には、

  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 公正証書遺言

の3種類があります。

このうち、

  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言

は、相続開始後に、家庭裁判所で検認の手続きを経なければ、相続の証明書として使うことはできません。

 

 

法務省が始める新制度

 

法務省が発行する相続情報の証明書とは

平成28年7月時点での発表によると、法務省が発行する証明書は、

相続の権利を持つ人(相続人)全員の氏名や本籍などの情報をまとめたものであるとのことです。

証明書の発行を受けるには、まず、相続人の一人が、

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式を集め
  2. 相続関係図を作成
  3. 法務局に提出

という手順を踏みます。

法務局は、この情報をもとに、相続人全員の氏名や本籍などの情報をまとめた証明書を作成し、発行します。

この証明書は、

  • 法務局
  • 銀行
  • 郵便局
  • 証券会社

などで使用することができます。

つまり、一度、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めて、相続関係図を作成し、これを法務省に提出しておけば、

あとは、法務省が発行する証明書を使うことになります。

  • 法務局
  • 銀行
  • 証券会社

に、「戸籍一式+相続関係図」を提出する必要がなくなるということです。

  • 不動産
  • 預貯金
  • 株式

など、遺産がたくさんある場合には、この証明書があれば、便利かもしれません。

ただし、この内容の証明書は、自分が被相続人の法定相続人であるということと、その法定相続分を証明するものであるにとどまるものです。

個々の相続財産を誰が相続したかということを証明するには、やはり、

  • 遺言書
  • 遺産分割協議書
  • 調停調書
  • 審判書

が必要になるということには変わりがありません。

 

法務省の狙いは?

法務省が、この制度を始める狙いは、「相続人不明の土地を減らす」ということだそうです。

不動産の相続の際に、資産価値の低い土地については、名義書き換えをせずに放っておかれることが多いため、

山間部などで道路や宅地の造成をする際、登記上の所有者と実際の地権者が異なり、買収が進まないという事態があるのだそうです。

そのため、「利用者の負担を軽くすることで、相続登記を促したい」とのことです。

しかし、すでに述べたように、法務省の発行する相続情報の証明書は、

相続人全員の情報を載せることにより、その法定相続分を証明するにすぎないものであり、遺産分割の結果、誰が不動産を相続するのかまで、証明してはくれません。

つまり、この相続情報の証明書を利用すれば、法定相続分どおり、つまり、妻と子2人が相続する場合であれば、

  • 妻の共有持分2分の1
  • 子Aの共有持分4分の1
  • 子Bの共有持分4分の1

として登記することができます。

しかし、子Aが単独で相続したいというような場合であれば、

やはり、相続人3人で作成する

  • 遺産分割協議書
  • および印鑑証明書

が必要になります。

そこで、あまり、手間の節約になっていないようにも思え、本当に狙いにマッチした制度なのかどうか不明なところです。

 

 

まとめ

法務省の新制度が始まっても、一度は、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式は必要になります。

被相続人が、何度も結婚や離婚をしていたり、転籍をしていたりすると、出生まで遡るのに、時間がかかることもあります。

相続が始まったら、まず、戸籍一式の取得を始めましょう。