「相続対策」という言葉も一般化するほど有名になりました。

相続は法律で定められた流れや遺産相続の順位や割合があるので一体何を対策するのだと考える方もいることでしょう。

確かにその通りではあるのですが、遺産相続は遺言などにより比較的自由に相続の割合を変化させることができるので、

「自分が実現させたい相続をどうやって行うか」という意味での相続対策という意味がまず一つです。

そして二つ目に、相続税対策としての「相続対策」という言葉があります。

遺産を相続すると、一定額以上の場合は相続税の計算式に則って相続税が課税されることになります。

日本では相続税が課税される相続は全体の4~5パーセントととても低いため、相続税が課税される相続の方が少数派です。

しかしその少数派はおそらく資産家と呼ばれる人たちであるため、税金対策は必須であるといえます。

そういった意味での相続対策なのです。

さて、どうしていきなり冒頭で相続対策について話しはじめたかというと・・・それは順番にお話しするとして。

今回のテーマは前回に引き続き、諸外国の相続についてお話します。

他の国の相続はどんなふうに進めるのでしょうか。

 

外国の相続はどうなっているの?

さて、相続対策について話を戻しましょう。

どうして急にこんな話をしたのかというと、それは近年日本では「老後に諸外国へ移住する人が増えているから」なのです。

諸外国に移住する場合、一定額を移住先の国に資産として持ち込まなければ生活できないことでしょう。

年金の振込についても考えておく必要があります。

また、移住先の国によっては

  • このくらいの資産をうちの国の銀行に預けてくださいね

という決まりがある国もあります。

代表的な例がマレーシアです。

 

例・マレーシアに生活の居を移すには?

マレーシアでは移住の際の年齢によって移住のための金融資産の条件があります。

例えば50歳以上でマレーシアに移住する場合は・・・。

  • 月26万円以上のマレーシア国外での収入があること
  • 910万円以上の流動資産があること
  • マレーシアに約390万円以上の定期預金を開設すること(収入要件を満たしていれば基本的に不要)

などの条件を満たしていることが必要になります。

つまり、そろそろ相続について考えなければならないリタイアメント世代になって移住するとなると、

後に遺産となるある程度の金融資産を日本以外の国に動かさなければならないことが多いということです。

これは何も海外移住に限った話ではなく、

  • 海外で長年暮らしていて老後も海外で暮らそうと考えている人
  • 息子夫婦などの家族が海外にいて老後はそちらに行こうと考えている人

も同じであるといえます。

参照:
http://www.euain.org/

 

海外に移住する人や金融資産を持つ人は対策を

「相続対策」では、

  • 将来的に海外に移住している人
  • 海外に住んでいる人

は「日本国外の相続事情」についても知っておかなければ相続対策ができないばかりか、いざ相続の時に困ってしまう事態が起きるのです。

日本で生まれ育ち日本の常識に慣れてしまうと、海外でも日本を基準として物事を考えてしまいがちです。

しかし海外にはそれぞれの国の文化があり、歴史があり、それらによって作られた法律があります。

移住をして日本感覚で考えてしまうと、せっかく日本でした相続対策が水の泡で、何より海外の相続制度の違いに相続人が驚き戸惑うということになってしまうに違いありません。

現実に海外へ移住した両親の相続で子供などの相続人が困ってしまうという話はよく耳にします。

日本以外の国では相続に1年以上という時間が必要になることも珍しくないため、

日本の相続税の納税期限に間に合わず大慌てで税理士などの専門家に相談することも珍しくないらしいのです。

海外すべての国の相続について知ることは難しいことでしょう。

弁護士などの法律の専門家でも全ての国の相続事情に精通することは難しいはずです。

ただ、海外への金融資産の持ち出しや移住を考えているのなら、裁定でもその国の相続制度の特徴は掴んでおく必要があるのではないでしょうか。

 

マレーシアとタイの相続制度とは

ここからは前記事に引き続き、日本以外の国の相続制度について見ていきましょう。

国が違えば文化と歴史が違い、文化と歴史が違えば価値観と法律が違う。

法律が違えばもちろん相続も変わってきます。

日本人がリタイアメント後に移住先の候補に入れるこれらの国では、一体どんな相続制度が採用されているのでしょうか。

あまり専門的にならず、簡単に特徴だけおさえてみましょう。

 

マレーシアの相続

マレーシアの相続は日本のようにプラスもマイナスも全て相続する単純承認が基本ではなく、

相続においては基本的に裁判所を通すことになります。

■前回の記事■でアメリカや中国でも相続の際は基本的に裁判所を通すことをご紹介しましたが、

マレーシアも基本は「裁判所で遺産を分割する」という相続方法になります。

裁判所での検認手続きの期間は自由に遺産を使うことはできません。

手続きが終わるまで何度も裁判所に足を運んだり、書類を提出したりしなければいけません。

日本のように遺産分割協議が整って書類の準備もできれば即日相続手続きができてしまうということはまずありません。

最短でも1年くらいの期間を見ておく必要があります。

もちろん相続人が多く揉めてしまっているという場合や書類提出が遅れてしまうという場合はさらに長い期間が必要になることでしょう。

マレーシアの相続は日本とは進め方がまったく違うということを覚えておく必要があるのではないでしょうか。

参照:
http://jm-experts.net/

 

タイの相続

タイの相続も裁判所の関与により行われます。

タイの場合は遺言書が強いと言われており、

遺言書できちんと遺産分割について意思を遺すことによって比較的相続手続きがスムーズに進むと言われています。

しかし場所はやはり国外ですから、必要な書類は、

  • 英語
  • タイ語

での提出になりますし、相続人は何度も現地の裁判所に足を運ばなくてはいけません。

遺言書があっても1年以上手続きに時間がかかることもあり、

日本のように遺産分割協議がスムーズに進んだので即日遺産分割協議書で預金を下ろして、相続登記をして・・・とはいきません。

タイの場合は相続のために預金を下ろすにも裁判所の手続きが終了していないといけません。

もちろん、不動産を譲渡して換金しようとしても、日本のようにすぐに名義変更して売買とはいきません。

相続した不動産の譲渡も裁判所での相続手続きが完了してはじめて可能になります。

なお、タイは日本でいう相続税に該当する税金は今まで存在しませんでしたが、2016年より課税が導入されました。

「日本人なら日本の法律に従うのが当然でしょ?」と思うかもしれませんが、海外に資産を持つということはその国の事情も関わるということです。

タイに資産をお持ちの方や移住を検討している方は、当地に詳しい法律家や税理士にアドバイスを求めた方が安全です。

参照:
http://www.longstayconsulting.co.th/

 

最後に

日本の相続制度はあくまで日本だけのものです。

こうした色々な国の相続制度を見て行くと、むしろ日本の方が異例の相続制度をとっていると感じないでしょうか。

多くの国は裁判所が関与して相続手続きを進めることになります。

日本は、

  • 相続放棄
  • 限定承認

などを選択しなければ、簡単に相続手続きができてしまうことも珍しくありません。

日本の相続が現在の形になるまでは戸籍の整備や法律の整備など、たくさんの積み重ねがあってこそです。

諸外国だってそれは同じで、歴史や法整備の積み重ねにより現在の相続の形ができあがったといえます。

日本から海外に移住する人も少なくありません。

暮らしやすいところで暮らすのが一番であることでしょう。

しかし簡単に「移住しよう」で済ますのではなく、自分の相続がどう変わるかについても考えて移住することが必要なのではないでしょうか。

相続も含めて移住後のことをよく考えて相続対策をしたいですね。