成年後見制度と相続制度は、本来、別のものです。

しかし、高齢化社会を迎え、認知症の方に成年後見人が就任する機会が多くなったため、

相続と関連した問題が発生することが多くなりました。

そこで、

  • 被後見人が相続を受ける場合
  • 相続で争うことを予防するために後見人をつける場合
  • 被後見人が遺言をする場合
  • 被後見人の死亡後の相続の場合

の4つに分けて、後見と相続に関する問題をまとめました。

 

被後見人が相続人である場合

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遺産分割に参加するためには後見人が必要

相続人の中に、認知症などで、事理弁識能力のない人がいる場合には、その人に後見人が就任しなければ、遺産分割を行うことができません。

なぜなら、事理弁識能力のない人の行った法律行為は無効だからです。

親族間に争いがなく、財産も多額でなければ、親族が後見人に選ばれることが多いのが現状です。

しかし、親族間に争いがある場合や、管理しなければならない財産が多額である場合には、

弁護士や司法書士などの専門職が後見人に選任されます。

後見人は、被後見人の法定代理人として、被後見人の利益を守るために、遺産分割協議に加わります。

 

後見人も相続人だったら?

父が亡くなり、母と子供A、Bが相続人だった場合、通常は、母、A、Bの3人で遺産分割協議をします。

しかし、母が認知症であり、Aが母の後見人である場合、

Aは、相続人という立場と、母の後見人という立場の2つの立場で遺産分割協議に参加することになります。

そうすると、Aは、自分の取り分を多くして、母の取り分を少なくするかもしれません。

このような状態を利益相反と言います。

後見人と被後見人との間に利益相反がある場合には、後見人は、被後見人を代理することができません。

この場合には、Aは、家庭裁判所に母のために遺産分割を行ってくれる特別代理人を選任するよう申し立てる必要があります。

そして、A、Bと母の特別代理人の3人で遺産分割の協議を行うことになります。

 

遺産分割が終わっても、後見人の仕事は続く

被後見人が相続人であったために、後見人が就任した場合、遺産分割が終了したからといって、後見が終了するわけではありません。

後見人の仕事は、被後見人が能力を回復するか、亡くなるまで続きます

後見人は、被後見人の財産を管理し、必要な支払いや手続きを行ったり、財産上の契約を行ったりします。

また、身上監護といって、被後見人の介護サービスや施設の手続きなども行います。

これらについては、被後見人の意思を配慮して行う必要があります。

そして、後見人は、一定期間ごとに、被後見人の財産状況や身上監護の状況について、家庭裁判所に報告する義務があります。

残念なことですが、親族後見人、専門職後見人を問わず、被後見人の財産を使い込むケースが最近多いため、

家庭裁判所の後見人に対する監督は強化されていっています。

後見人は、家庭裁判所に報酬を請求して認められれば、被後見人の財産の中から、裁判所が決めた額の報酬を受け取ることができます。

その報酬の額は、業務の内容によって異なりますので、相場というものはありません。

 

親族の使い込みが疑われるときの後見人就任

最近多いのは、子の1人が認知症の親の面倒を見ており、

その子が親の預金を勝手に引き出して、自分のために使っていることが疑われる場合に、成年後見人が就任するケースです。

例えば、認知症の母親と同居している子Cが妙に金回りがいいので、

子Dが、Cは母親の財産を使い込んでいるのではないかと疑っている場合などが挙げられます。

この場合、子Dは、Cもしくは母が、母の財産を任意に開示してくれない限り、母の財産が減少していないかどうかを調べる手段がありません。

母親が亡くなれば、Dも相続人として、母の生存時の財産の変動を調べることができますが、

母親が生きているときに、引き出されたお金は、母親のために使われたのか、Cが勝手に使ったのかが、分かりにくくなります。

そのため、相続時に大きな争いになりますが、Dが、「Cが使い込んだ」ということを立証することが困難なこともあります。

そこで、母親がまだ生存しているときに、成年後見人をつけることで、母の財産管理を成年後見人が行うことになり、

Cは母の財産に手を出せなくなります。

また、その時点で、Cが多額の財産を取り込んだことが明らかであるときには、成年後見人が取り戻しに動くこともあります。

このような場合、後見人に選ばれるのは、弁護士や司法書士のような専門職後見人です。

専門職後見人には、後見人報酬を支払う必要がありますが、

使い込みが疑われるときには、認知症の親のためにも、その後の相続のときのためにも、後見人をつけることを考えるべきです。

 

 

被後見人の遺言

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被後見人の遺言には要件がある

民法では、被後見人が、事理弁識能力を一時回復したときに、医師2人以上の立ち合いのもとで、遺言を行うことができるとされています。

立ち会った医師は、被後見人には、遺言をするときに事理弁識能力があったということを遺言書に付記することによって証明します。

ただし、後見人や後見人の配偶者、後見人の直系卑属(子孫のことです)の利益になるような遺言をした場合には、その遺言は無効です。

もっとも、被後見人の直系の血族(父母や子孫)、配偶者、兄弟姉妹が後見人であるときには、後見人の利益になるような遺言も有効です。

これらの人たちは、もともと、被後見人の推定相続人になりうる人であり、有利な遺言をすることはおかしなことではないからです。

 

後見人をつけることで、疑わしい遺言を防止できる

上記の例で、認知症の母親が、子Cに有利な遺言を残したという場合、

Dは、Cが、母が認知症で判断能力がないことを利用して、母にCの言うままの内容の遺言書を書かせたのではないかと疑うでしょう。

しかし、そのときの母親の症状がどんな状況だったか、遺言をする能力があったのかということを後から裁判で争うのはとても大変です。

この点、母親に後見人が就任していれば、母親の遺言は、被後見人の遺言として、医師の立ち合いなどが必要となりますので、

子Cが、母親の認知症を利用して自分に有利な遺言を書かせるというような事態を防止することができるのです。

 

 

被後見人が死亡した後の相続

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後見人の終了時の業務

被後見人が死亡したら、後見人の仕事は終わりです。そこで、終了の業務を行います。

後見人は、被後見人の死亡日までの収支を計算して、家庭裁判所に報告します。

このときに、終了時までの報酬を請求することができます。

 

相続人への財産の引き継ぎ

後見人は、収支の計算が終わったら、相続人に残っている財産を引き渡します。

引き渡しを受けた相続人は、通常の相続手続きを行うことができます。

ただし、銀行や証券会社によっては、後見人にも後見終了の手続きを取ってほしいというところもありますので、

そういう申し出があれば、後見人も協力します。

母の後見人として、子Aが就任しており、他に子Bがいる場合であれば、

母の死後、Aは、後見人としての業務を終了し、相続人として、Bと母の遺産について、遺産分割協議を行うことになります。

なお、相続人が特に大きな争いを抱えてなければ問題はないのですが、

相続人間に争いがある場合、専門職後見人は、相続人の誰に相続財産を引き渡せばよいのか非常に困るのですが、

この点については、いまだ制度的な解決が図られてはいないのが現状です。

 

 

まとめ

身寄りのいない人をサポートするために後見人が就任することもありますが、

やはり、認知症になった親の相続を見据えて、親族間で争いがある場合に、後見人が就任することも多々あります。

そうすることで、被後見人を中立な立場に置くことができるので、争いに巻き込まなくてすむというメリットもあります。