相続税の計算はややこしく、提出する文書の決まりごともたくさんあります。

実際には税理士に代理を依頼したほうが確実ですが、

  • 心の準備
  • 生前の財産処分
  • 遺産分割

のために税額を参考にしておきたいところです。

今や、相続税を申告・納付するのは、ごく一部の富裕層に限ったことではありません。

相続税に関するルールを解説、最後に計算事例を紹介します。

※2017年1月1日時点の税法に基づいて作成しました。

 

相続税、基本の計算方法と流れ

まずは、計算の基本的な流れを説明します。

  1. プラスの財産からマイナスの財産と控除額を差し引き
  2. 残った部分に税率をかける

というイメージです。

 

計算の流れ

おおまかな流れは、次のとおりです。

  1. 評価
  2. 課税価格の計算
  3. 基礎控除と課税遺産総額の計算
  4. 相続税総額の計算
  5. 各相続人の相続税額の計算
  6. 納付税額の計算

相続人ごとに税計算のもとになる金額を計算し、それを合計します。

次に法定相続割合で相続したと仮定して、それぞれの相続税額を算出します。

仮の相続税額を合計したものが、この相続で納める税金の合計額となります。

あとは、取得した財産の金額に応じて各相続人に按分すれば、それぞれが納める相続税額が決まります。

 

評価

現金や預金のように数えればわかるものなら簡単ですが、

  • 土地
  • 株式

などはお金に換算する「評価」が必要です。

 

【課税価格の計算】資産から負債を差し引いたのが純資産。贈与分も忘れずに

課税価格は、相続人ごとに算出します。

まずは次の金額を合計します。

 

取得した財産

  • 現金
  • 貸金や預金などの債権
  • 不動産
  • 宝飾品

など

 

みなし相続財産

相続財産ではないが相続財産とみなされるもので、生命保険がこれにあたります。

 

相続時精算課税によって取得した財産

生前贈与した時に相続時精算課税を選択した場合。

次に、先ほどの金額から、次の金額を引きます。

これが純資産です。

 

非課税財産

墓石、個人経営の幼稚園・宗教・学術団体のための財産など。

 

債務及び葬式費用の額

債務は、

  • フリーローン、事業性資金などの借金
  • 葬式費用は火葬や告別式、お通夜、読経のお礼

など。

最後に、亡くなる3年前までに贈与した財産の額を足します。

納めた贈与税額は、最終的に納付税額の計算をする際に

まとめると、相続で取得した資産から

  • 負債と非課税財産
  • 葬式費用

を引き、純資産を計算する。

純資産に、3年以内に贈与したものの金額を加算することで、課税価格を出す。

ということになります。

 

【基礎控除と課税遺産総額】財産がどれくらいなら、相続税を収めなくて済むか

課税価格に直接相続税がかかるわけではありません。

基礎控除があるため、多くの人には相続税がかからないようになっています。

この基礎控除も2015年1月1日より引き下げられ、相続税をおさめる人は増えています。

課税遺産総額は、課税価格の合計から基礎控除額を差し引いて計算します。

基礎控除額の計算は、次のとおりです。

3,000万円+600万人×法定相続人の数

法定相続人には、相続放棄した人も含まれます。

養子は何人いても、

  • 実子がいる場合1人のみ
  • いない場合で2人のみ

数えることができます。

 

【相続税総額の計算】法定相続割合に従ったと仮定して計算する

課税価格の合計から基礎控除をマイナスして、課税遺産総額が算出されました。

相続税を計算するためには、まずこの課税遺産総額を法定相続割合で取得したと仮定して、各相続人の仮の相続財産を算出します。

相続税は累進課税制となっており、仮の相続財産の金額が高くなればなるほど、税率も高くなります。

こうして計算した仮の相続税額を合計したものが、相続税総額です。

 

【各人の相続税額の計算】実際に取得した財産の額に応じて負担する

仮の相続税額のままだと、実際に法定相続割合と異なる分割をした場合に、不公平になってしまいます。

相続税額が取得した財産を上回るということにもなりません。

そのため相続税総額を、各相続人が取得した財産の割合に応じて按分します。

各相続人の相続税額=相続税総額 × 各相続人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額

 

【納付税額の計算】人によって変わる相続税

各相続人の相続税額を計算したところで、終わりではありません。

相続税を払う人によって、最終的な調整が必要となります。

2割加算の他は税額控除といって、税が軽減される仕組みです。

 

配偶者と子供・両親以外には2割加算

  • 被相続人(亡くなった人)の配偶者
  • 子供・両親(代襲相続も含める)

以外の人は、相続税額に0.2を掛けた金額を加算します。

養子も基本的に加算の対象になりませんが、孫を養子にした場合は対象になります。

 

配偶者控除は大きい

配偶者は、法定相続分までは相続税がかかりません。

それを超えたとしても、相続税額から1億6000万円を差し引くことができます。

適用した結果、納める税額が0になったとしても、税務署に手続きをする必要があります。

 

その他の税額控除

税額控除には他に、次のようなものがあります。

  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除
  • 納付済の贈与税額(過去3年以内のもの)

 

評価の方法も簡単におさえておこう

相続税の計算方法は少し複雑ですが、流れがわかれば後は計算するだけです。

その前提となる財産の評価は、非常に重要です。

評価次第で最終的な税額が変わってくるからです。

代表的なものである、

  • 不動産
  • 株式

の評価について、簡単に説明します。

 

建物は固定資産税、土地は専用の数字をもとに計算する

建物の評価額は、固定資産税評価額と同じです。

毎年市町村から送られてくる固定資産税課税明細を見ると書いてあります。

土地は、毎年7月頃に国税庁が

  • 路線価
  • 評価倍率

を発表します。

路線価は土地が面している道路毎に平米単価を決められており、これに土地の形状などによる補正を加えて評価します。

評価倍率は路線価が定められていない地域を評価する方法です。

固定資産税評価額に、住所ごとに決められた評価倍率を掛けて計算します。

土地には、小規模宅地等の特例といって、評価額を下げる特例があります。

  • 自宅
  • 駐車場
  • アパート用地
  • 事業用地

などにも適用されます。

広大地評価という特例もあります。

 

株式の評価はどうするか

上場株式の場合は、1ヶ月の毎日の株価の終値を平均した金額が評価額です。

亡くなった月を含む過去3ヶ月の中から、最も低い金額を選ぶことができます。

上場していない株式の場合は、会社の規模によって分かれます。

小会社は、純資産価額方式といって、資産から負債を差し引いた純資産をもとに評価します。

大会社の場合は、これに配当金額や利益金額を加えた、類似業種比準方式によって評価します。

 

実際に計算してみよう

【事例】Aさんには

  • 配偶者のBさん
  • 実子のCさん
  • Dさん(既に死亡しているが、子EさんとFさんは健在)
  • 養子のGさん、Hさん

がいる。

この度、「姪のIさんは、一生懸命看病してくれたので、100万円を遺贈する」旨の遺言書を残して亡くなった。

相続財産は、

  • 現金1,100万円
  • 預金1億円
  • 自宅の土地建物
  • 株式

だった。

  • 土地の評価額は小規模宅地の特例で5,000万円
  • 株式は8,000万円
  • 個人事業の商品代金200万円が仕入先に未払い
  • Bさんが受取人の生命保険に加入しており、保険金3,500万円が満額おりる
  • 葬式費用はBさんが500万円を負担

なお、亡くなる1年前に、

  • Hさんに土地1,000万円を贈与
  • Hさんは贈与税300万円を支払っている。

遺産分割は次のとおりに決まった。

  • Bさん…自宅の土地建物、現金1,000万円、預金5,000万円、商品代金債務200万円
  • Cさん…相続放棄した。
  • Eさん、Fさん…それぞれ預金1,000万円
  • Gさん…全ての株式、預金1,000万円
  • Hさん…預金2,000万円
  • Iさん…現金100万円

資産計2億4,100万円、負債計200万円

【計算例】
法定相続割合は次のとおりです。

  • B…1/2
  • C、G、H…それぞれ1/8
  • E、F…それぞれ1/16
  • I…なし

 

課税価格の計算

Bさん

1,000万(現金)+5,000万(自宅)+5,000万(預金)+3,500万(みなし相続財産の保険金)-500万(葬式費用)-債
務200万円-3,000(保険金のうち、非課税財産とされる部分。500万円×法定相続人の数)=10,800万円

Cさん

なし

Eさん、Fさん

それぞれ1,000万(預金)

Gさん

8,000万(株式)+1,000万(預金)=9,000万円

Hさん

2,000万(預金)+1,000万(1年前に贈与された分)=3,000万円

Iさん

100万円(遺贈)

課税価格合計…24,900万円

 

基礎控除と課税遺産総額の計算

基礎控除額…3,000万+(600万×5)=6,000万円

相続放棄したCを含めて、法定相続人はIを除く6人です。

養子は、実子がいる場合1人しか数えることができないので、基礎控除に含める人数は5人です。

課税遺産総額

24,900万-6,000万=18,900万円

 

相続税総額の計算

課税遺産総額を、法定相続割合で取得したと仮定します。

相続放棄したCも入ることがポインです。

  • Bさん:9,450万円
  • Cさん、Gさん、Hさん:それぞれ2,362.5万円
  • Eさん、Fさん:それぞれ1,181.2万円(千円未満は切り捨て)

相続税率はそれぞれ30%、15%、10%とします。

計算を簡単にするため、控除額は考慮しません。

  • Bさん:9,450万×30%=2,835万円
  • Cさん、Gさん、Hさん:それぞれ2,362.5万×15%=354.375万円
  • Eさん、Fさん:それぞれ1,181.2万×10%=118.12万円

相続税総額は、4,134.365万円

 

各相続人の相続税額の計算

Bさん

4,134.365万×10,800万/24,900万=1,793万2,185円

Cさん

相続放棄のため無し

Eさん、Fさん

4,134.365万×1,000万/24,900万=166万387円

Gさん

4,134.365万×9,000万/24,900万=1,494万3,487円

Hさん

4,134.365万×3,000万/24,900万=498万1,162円

Iさん

4,134.365万×100万/24,900万=16万6,038円

 

各相続人の納付税額

 

Bさんは配偶者により

法定相続割合である1/2または1億6,000万円まで相続税がかかりません。

したがって、納める税額は0円です。

 

Hさんは

1年前に1,000万円の贈与を受けて300万円の贈与税を払っています。

今回確定した相続税額の1/3がこの贈与に関するものなので、そこから300万円を差し引きます。

498.1162万×1,000万/3,000万-300万=0(贈与に関する部分)
498.1162万×2,000万/3,000万=332.0774万(相続に関する部分)
0+332.0774万=332万774円(納付税額)

他の子供には、調整すべき項目はありません。

 

姪のIさんは

2割加算の対象になります。

16.6038万×1.2=19万9,245円

が納付税額になります。

 

まとめ

相続税の計算は複雑です。

資金繰りのために税額をだいたい把握しておきたいというのなら別ですが、申告の際は税理士に依頼したほうが賢明です。

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この記事を書いた人

ファイナンシャル・プランナー ファイコロジスト山田

不動産から為替相場の予想まで、お金に関するテーマについて幅広く執筆。
相続に関連して実家を失ったことがある。
これらの経験から、相続関係業務のモットーは「運用を含めた総合的な人生設計」「関係者全員が納得する分割」。