住宅に関わる相続と税金の話は、金額が大きいだけに被相続人の生前より色々と気をつける点が多々あります。

住宅に絡む相続と税金の話は、系統として2種類あります。

  • 持ち主が亡くなり住宅を相続する時の話
  • 相続を見据えて行う住宅に関わる贈与の話

被相続人が遺す財産としての住宅は、相続財産としては価値として大きな割合を占めることが多いです。

ですが、大きく相続税がかかってしまうと住宅が維持できず、残された家族が生活に困ることがあります。

また、相続税を減らし早くに資産を活かすために、子や孫世代への住宅関係の贈与が今よく使われます。

ここでは、

  • 住宅と相続税
  • そして贈与税

のあれこれについてお話していきたいと思います。

では、まず住宅の相続のお話からご一緒に見ていきましょう。

 

常に一定ではない、相続時の住宅の価値

他の資産に比べて高額な住宅の相続、特に不安なのは相続税です。

相続税がかかるかどうかは、相続する資産の額によります。

高額払って建てた家だから、すごい資産価値があり沢山相続税がかかると、皆さん思われるかと思います。

ただ実は現金などの資産と違い、住宅は常に一定の価値ではありません。

土地は時価として変動し、建物の価値は年数毎に下がっていくからです。

建てるあるいは買った時にかかった費用、イコール資産価値ではないのです。

とはいえ、土地の価値を考えると決して安い相続財産ではありません。

そのため、相続税を払うために売らざるを得なくなることもあり得ます。

しかし、税金のために住む場所を手放させ生活が傾くのは、国民の生活を守るべき国の立ち位置としては本末転倒です。

そのため、住むための家の相続には、相続税上の特例があります。

次はその特例をご紹介します。

 

相続税はどれくらい減る?小規模宅地の特例

  • 相続した事業の用
  • 居住の用

の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)が、住宅を相続した時の特例としてあります。

特例を使うと最大どれくらい相続税への影響があるのでしょうか?

この特例では相続税計算の基礎となる宅地の価額を、最大で80%減額できるのです。

また、事業用の宅地も一定条件で、宅地評価額を50%から80%の減額をすることができます。

27年1月に改正があったので、その宅地特例の適用範囲を表にしてご紹介します。

 

小規模宅地の特例内容、27年1月改正

番号 相続開始直前の宅地等の利用区分 限度面積 減額割合
1 特定事業用宅地(貸付事業以外) 400㎡ 80%
2 一定の法人(特定同族会社)に貸し付けられた事業用宅地(貸付事業以外) 400㎡ 80%
3 一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業用宅地(貸付事業以外) 200㎡ 50%
4 一定の法人に貸し付けられた事業用宅地(貸付事業用宅地) 200㎡ 50%
5 被相続人等(被相続人と生計を一とする親族)の貸付事業用宅地 200㎡ 50%
6 被相続人等(被相続人と生計を一とする親族)の特定居住用宅地 330㎡ 80%

上の表の貸付事業とは

  • 不動産貸付業
  • 駐輪場
  • 駐車場の貸付
  • 事業

という規模ではなくても不動産の貸付などの行為で、賃料等の対価を得て継続的に行うものです。

また、一定の法人とは、相続開始の直前において

  • 被相続人
  • 被相続人の親族

が株式所持の総数や出資の割合が、全体の50%を越えている法人になります。

つまり、被相続人や親族に縁が深い法人であることが条件なのです。

さらに、

  • ①特定事業用宅地
  • ②特定同族会社(貸付事業用宅地がない場合)

の事業用と、一番下の被相続人等の6特定居住用宅地は併用できます。

そのため、両方を選択する場合の広さは

400㎡+330㎡=730㎡

が限度額となります。

3~5の貸付事業用宅地を含む場合は、200㎡を最高限度として併用はできますが、計算式は下記となります。

(1特定事業用+2特定同族会社)×200/400+6特定居住用×200/330+(3~5貸付事業用計)≦200㎡

27年の改正前と改正後の違いとしては、

27年1月の改正で被相続人等の特定居住用宅地の面積上限が、240㎡から330㎡まで上がりました。

また、事業用と併用している場合も、最大400㎡まで適用されていましたが、最大で730㎡まで適用範囲が上がったことが挙げられます。

26年12月31日までの特例の内容は、下記国税庁のホームページでご確認ください。

参照:
https://www.nta.go.jp/

 

相続対策としての住宅に関わる生前贈与

ここまでは相続時の住宅の価値や、相続税に絡む特例をお話してきました。

とはいえ、住宅と相続が絡むのは、被相続人が亡くなった時だけではありません。

  • 相続をにらんだ住宅の生前贈与
  • 相続時に税金を清算する生前贈与

が、相続対策としてよく行われています。

では、そういった住宅に絡む贈与で、どういった特例や贈与税の計算方法があるか今からご紹介していきましょう。

 

住宅もしくはその購入費用を贈与する時に使える配偶者控除

この特例は婚姻期間が20年以上ある夫婦であり、

  • 居住用の住宅
  • もしくは、居住するための不動産を買う資金

を贈与したことが前提となります。

この場合贈与税の計算時に、基礎控除110万プラス最大2000万円迄の配偶者控除が使えます。

同じ夫婦同士では一生に1度しか使えないこの特例を受けるには

  • 婚姻期間20年過ぎた後であること
  • 自分が住むための住宅(ないしは購入資金)であること、
  • 贈与を受けた翌年3月15日迄に住んでいるかつ、そのまま住み続ける見込みであること

が特例を使える要件となります。

住むまでの時期が決まっており、贈与税の申告が必要となりますので、

  • 税理士
  • ハウスメーカー

と相談して贈与の時期から決める必要性がある特例となっています。

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除(国税庁)

 

暦年課税とどちらが得?相続時精算課税

相続時精算課税は、

  • 贈与税
  • 相続税

それぞれの計算に絡んで、子や孫に資産を渡すのに使われる制度です。

贈与の使途が住宅に限定されるわけではありませんが、

贈与税の非課税部分が大きいため住宅用資金を渡すのによく使わる制度です。

相続清算課税が使える要件としては、原則として、

  • 直系尊属である60歳以上の父母または祖父母から
  • 直系卑属である子や孫へ

の贈与と限定されています。

但し、住宅に関わる贈与の場合は特例として、平成33年12月31日までの贈与で一定の要件を満たす場合は、

その贈与した年の1月1日に60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。

贈与税の支払いが必要な金額で無くても、相続時精算課税を使うには

  • 贈与税の申告
  • その旨の届け出

が必要となります。

また、この制度を使うとそれ以降は、一般的な贈与税計算に使う暦年課税は使えなくなります。

また贈与を受けた住宅は、相続時の小規模宅地の特例も使えません。

そのため使う時には注意が必要です。

最終的に相続財産に贈与分を加え、支払った贈与税額を贈与者が亡くなった時の相続税から控除して、相続税を計算することになります。

参照:
http://www.nta.go.jp/

対比すべき暦年課税と、相続時精算課税の違いを今からご説明させていただきます。

 

相続時精算課税と選択することになる暦年課税

暦年課税は一般的な贈与に発生する、1年110万円の基礎控除を持つ贈与税の計算方法です。

一番低い基礎控除後200万円以下は10%の税率になります。

ここから上は、20歳以上の者が、

  • 直系尊属からの贈与をもらう特例税率
  • その他の一般税率

に別れ、最高で55%の税率となります。

特例税率では基礎控除後400万円以下は15%-10万円、一般税率では300万円以下は15%-10万円となります。

相続時精算課税の税率は基礎控除後20%であり、暦年課税の低い部分より高い税率の部分があるのです。

また、相続時精算課税を選択して贈与時に贈与税がかからなくても、

相続時の相続財産に含めるため相続税でガツンととられる可能性があります。

また、暦年課税は基礎控除内であれば、贈与税の申告の必要はありません。

ですが、相続をにらんだ時にあえて贈与税を払う場合があります。

例えば111万円を贈与して1000円の税金を払うようなパターンです。

贈与税を支払っておかないと、相続が発生した時にそれまでの贈与財産も一緒に相続税の対象となることがあるからです。

複数の人から贈与された時は、その合算額から110万を引いて贈与税を計算します。

これらを踏まえて暦年課税を使用することが、相続税贈与税に影響します。

結果、相続時精算課税より贈与税と相続税トータルした時に、国に納める税金が少なくなることがあるのです。

 

相続時精算課税を選択した場合の贈与税の計算

暦年課税と選択することになる相続時精算課税の制度は、

贈与者と受贈者の間の贈与に、2500万の特別控除額が多年度回数制限無しで使えます。

一度使うと、次の年以降は残りの額が控除限度額となります。

特別控除額を超えた分に20%の贈与税がかかってきます。

この制度を使うには、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日の間に贈与税の申告をし、書類をつけて相続時精算課税を選択することを届け出ます。

以降は暦年課税が使えないため110万円以下の贈与であっても、贈与税の申告が必要となります。

この制度は贈与してくれる人一人を限定するものですので、その他の人から贈与を受けた場合は暦年課税を使うことができます。

また、父母といった直系尊属である複数の人から大きな贈与を受ける場合は、それぞれの人に対し相続時精算課税を使うことも可能になります。

 

相続時精算課税を選択した場合の相続税の計算

相続時精算課税を選択した場合は、相続税の計算時に生前に贈与した財産を含めて計算します。

まず、

相続財産+相続時精算課税

を使用して贈与された財産から基礎控除を引きます。

その財産に税率を掛けて控除額を引き、相続税額を出します。

今までで贈与税を払っていれば、その分相続税から控除することができます。

基礎控除は、

3000万円+600万円×法定相続人の数

となり大きな額となります。

この相続税の基礎控除の範囲であれば納税の必要はありません。

そのため、相続時精算課税にすることで、贈与相続で得た財産の金額によっては贈与税相続税通して税金を払わずにすむこともあるのです。

 

期間限定特例、直系尊属から住宅資金の贈与を受けた時の非課税

さらに住宅にからむ贈与としては、期間限定の特例措置があります。

  • 平成27年1月1日から
  • 平成33年12月31日までの間(平成28年11月28日現在法令)

に、一定の要件を備えた新築、増改築をする住宅資金の対価に使うため、金銭贈与を受けた時に使う制度です。

定められた一定の要件を満たせば、決められた非課税限度額までは、贈与税が非課税となります。

  • 建物は50㎡以上240㎡以下
  • かつ、その家屋の床面積の1/2以上が受贈者の居住するためのもの

であることが必要となります。

他に新築や取得の場合の条件で、

  • 建築後使用されたことがない建物
  • 使用されたことがある場合、築20年以内または耐火建築物は25年以内の建物
  • 使用されたことがあるが、地震に対する安全性基準に適合する証明がある建物
  • 今はどの条件にも適合しないが、贈与後翌年3月15日までの耐震改修で、都道府県知事に申請し住宅の性能証明書で、耐震基準が適合した証明ができること

のどれかである必要があります。

その他増改築についても、かなり条件が細かくありますので、国税庁のホームページでご確認ください。

この制度をここでご紹介するのは、この特例は相続時精算課税と併用できるため、

一緒に使えばかなりの贈与税の節税効果が望めます。

つまり、相続時精算課税を利用するかどうかにも関わってくる特例なのです。

非課税限度額は次の表のようになります。

 

住宅用家屋の新築等の対価に含まれる消費税の税率が8%の場合

住宅用家屋取得等の契約締結日 省エネ住宅 省エネ住宅以外
平成27年12月31日迄 1500万円 1000万円
平成28年1月1日~平成32年3月31日 1200万円 700万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日 1000万円 500万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日 800万円 300万円

 

住宅用家屋の新築等の対価に含まれる消費税の税率が10%の場合

住宅用家屋取得の契約締結日 省エネ住宅 省エネ住宅以外
平成31年4月1日~平成32年3月31日 3000万円 2500万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日 1500万円 1000万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日 1200万円 700万円

 

この特例を利用するための受贈者の要件

この特例を受けられる受贈者の要件は多く、全てを満たしている必要があります。

  • 贈与者の直系卑属であること
  • 贈与を受けた年の1月1日に20歳であること
  • 贈与を受けた年の所得税がかかる所得合計が2000万円以下であること
  • 平成21~26年分の贈与税の住宅取得等資金の非課税の適用を使ったことがないこと
  • 配偶者や一定の親族からの住宅の取得でないこと
  • 贈与の翌年3月15日までに、贈与を受けた分を全額使い、新築もしくは増改築すること
  • 贈与を受けた時に日本国内に住所があること(一部例外有)
  • 贈与を受けた翌年3月15日までにその家に住める見込みがあること

贈与を受けた時の住所については、日本国籍でない場合や国外の移動があった場合に、例外が発生します。

詳しくは国税庁のHPでご確認ください。

一旦これらの要件を満たして贈与税の申告をしても、結果として満たせなければこの特例は使えません。

一番下の住む見込みという要件は、12月31日までに満たせないと、税金を追加で納めるために修正申告が必要になります。

 

この特例においての省エネ住宅の要件

この非課税限度額は、住宅等取得契約した時期によって違い、

省エネ住宅であること、消費税が増税された場合と細かく設定が分かれています。

省エネ住宅の要件は、

  • 省エネ基準が断熱材性能等級4、または一次エネルギー消費量等級4以上
  • 耐震等級が2以上、または免震建築物
  • 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上

これらの要件を定められた書類によって、証明することが条件となります。

詳しくはは国税庁のホームページをご確認ください。

 

住宅関係は相続と贈与の試算をして計画を

相続と贈与に関わる住宅関連のお話をしてきました。

  • 生前の贈与と死後の相続
  • 贈与の時の相続時精算課税と暦年課税

それぞれを対比してお話してきましたが、実はどちらが得かははっきり言えないところです。

  • 資産をもらう時期
  • 資産の総額
  • 先に贈与された以外の相続財産がどれだけあるか

など、贈与する人受贈する人の年齢続柄その他の条件で大きく異なるからです。

住宅関連の贈与や相続は、現物の家土地であっても、購入費用であっても大きなものになります。

まずは、税理士等の専門家に相談し、いくつかのパターンの試算をしてもらいましょう。

その上で最適なものを選ぶことが、住宅に関係する相続税や贈与税で損をしないために大事なことなのです。