遺言書にはたくさんの種類があります。

  • 日常の中で簡単に作ってしまえる自筆証書遺言や
  • 公証役場で作成する公正証書遺言

などがあります。

中には遭難中にする遺言という非日常のものもあります。

遺言書というと、格式ばった紙に墨書きで難しい内容が書いてあるものという印象があるかもしれません。

確かに映画やドラマで登場する小道具の遺言書は、紙一つとってもとても高級そうな印象ですよね。

しかし、遺言書は決して格式ばったものではありません。

実は、飲み干した牛乳パックの裏側に書き付けてもまったく問題ないということをご存じでしょうか。

また、印鑑屋さんで購入したオーダーメイドの印鑑でなく、

そのあたりのお店で100円くらい出せば購入できる三文判を使っても大丈夫ということもご存じでしょうか。

今回は、遺言書の中でも最もお手軽作成してしまう「自筆証書遺言」についてお話ししたいと思います。

「え、遺言書ってこんなに緩いの!?」とびっくりするような遺言のお話、はじまりはじまり、です!

 

公正証書遺言の要件とは

例えば公正証書遺言。

公正証書遺言は公証役場で作成する遺言です。

公証人という法的な書類作成のプロが関わるからこそ、いくつかの遺言書に必要な裁判諸手続である検認が免除されています。

この検認が免除されるというメリットが必要で、公証役場で作っていないのに「これは公正証書遺言です」と言い張っても駄目です。

なぜなら、公証役場で作るという要件の一つを満たしてこそ公正証書遺言であると認められるからです。

遺言は死語に「誰かの気持ち」を代弁するものです。

亡くなった人には

  • ここの文言の意図は?
  • この文章の意味は?

と確認することができません。

だからこそ、遺言書それぞれに合わせて要件が定められているのです。

こう書くととても難しそうに感じるかもしれません。

しかし、決してそうではありません。

こんなふうに考えてみてください。

「要件を間違えなければ大丈夫」と。

参照:
http://houmukyoku.moj.go.jp/

 

自筆証書遺言の要件とは

例えば、これから遺言書を作ろうとしている人が大の猫好きだったとします。

部屋や持ち物は猫グッズであふれ、職場で使っている筆記用具の猫グッズばかりでした。

この人がこれから自筆証書遺言を作るとします。

まず自筆証書遺言の要件です。

  • ①自筆
  • ②押印
  • ③記名
  • ④年月日

作成時に守らなければいけないのは以上の4つです。

如何に大切な内容が記してあったとしても、この4つのどれかを欠いていれば、自筆証書遺言とは認められません。

それはなぜか・・・前述しましたね。

亡くなった人に確認はできないからです。

この4つの要件を満たしていることをもって、「本人が自分の意思のもと自分で作成した」ということを確認するというわけです。

それぞれの要件を詳しく見ていきましょう。

参照:
http://www.toyoshima-gyosei.jp/

 

①自筆

自筆証書遺言はその名前通り「自筆」でなければいけません。

これは、自分で手書きしてくださいねという意味です。

近年主流になってきている、

  • ワープロ
  • タイプライター
  • パソコン

で打ったものではいけないのです。

自分でこつこつ、死後に自分の意思を伝えるべく自分自身の手で書かなければいけません。

自筆であればいいので、インクの色や便箋は問いません。

先に登場した例での猫好きさんは、可愛い猫のイラストがついた便箋に遺言を書いても差し支えないということです。

もちろん猫柄の可愛いボールペンで書いても問題ありません。

ただし死後に読まれるものですから、経年によりインクが薄れてしまうものは避けた方が無難です。

 

②押印

自筆証書遺言には押印が必要です。

使う印鑑には決まりはありませんので、

前述した例の猫好きさんは猫のイラストがついた姓名の刻印された印鑑を使っても差し支えありません。

絶対に実印でなければいけないという決まりはありません。

三文判でも大丈夫です。

ただし、あまりにありふれた印鑑を使ってしまうと、

後に相続人間で「これって本当に本人が書いたの?」という諍いのもとになってしまう可能性があります。

実印である必要はないのですが、確実に本人であるとよくわかる印鑑を使う方が相続トラブルの防止になるでしょう。

 

③記名

3つ目の自筆証書遺言の要件は記名です。

自分の遺言書にはご自分のものだとわかるように名前を書いてくださいということです。

確かに、名前がないと誰の意思なのかわかりませんよね。

亡くなった人に「お名前がないようですが、あなたの筆跡に似ているようです。あなたが書いたものですか?」と確認するわけにはいきません。

ただし、絶対に本名でなければならないわけではありません。

本人が書いたことが特定できればいいのです。

画家は雅号、作家はペンネーム、芸能人は芸名でも差し支えありません。

参照:
http://yuigon-guide.com/

 

④年月日の記載

自筆証書遺言には年月日の記載が必要です。

その遺言が何時時点での意思か明確にしておく必要があります。

その人の死後の日付で遺言書の記載があれば明らかに怪しいという話ですが、

別にそういったことを判断するためだけに年月日の記載を義務づけているわけではありません。

書類を作成するときは年月日の記載は基本で、それは遺言書も同じであると考えておけばいいでしょう。

明確な日付だけでなく「平成○年の誕生日」といった確実に年月日を特定できる記載でもよいとされています。

ただし「平成○年○月吉日」といった記載はNGとなります。

一月の間に吉日はたくさんあるからです。

特定の「一日」がわかればOKということですね。

ただ、遺言書で揉めないためには、あまり日付や名前の記載で冒険しない方がよさそうです。

 

自筆証書遺言のデメリット

以上の4つの要件を満たしてはじめて自筆証書遺言として法的な効力を持ちます。

よく見ていただきたいのは、自筆証書遺言には「紙」「場所」といった指定がないというところです。

  • 自分の家で書こうが
  • 近くの眺望抜群の公園でブランコに乗りながら書こうが

要件さえ満たしていれば問題ないということです。

紙の指定もありませんので、飲み終わった牛乳パックを洗って分解し、その裏に書いても問題ないということです(ちょっと臭そうな遺言書ですが)。

要件さえおさえれば問題ないので、猫好きの人はとことん趣味に走った遺言書を作成することができるというわけです。

遺言書の中でも最もスタンダードであり、自由で作りやすいのがこの自筆証書遺言なのです。

しかし、自由であるということにはデメリットもあります。

 

自筆証書遺言のデメリット1:検認が必要

デメリットの一つとして、遺言者の死後に裁判所で検認を受けなければならないというものがあります。

検認とは、遺言書の確認作業のようなものです。

自筆証書遺言は一般の人が自由に作ることがよくありますので、確認作業が必要であると定められています。

 

自筆証書遺言のデメリット2:相続時に揉める可能性がある

もう一つのデメリットとして、自筆証書遺言は揉めやすいというものがあります。

  • 本当に本人が書いたの?
  • 誰かが勝手に作ったのでは?

という疑いから揉めることがよくあります。

 

自筆証書遺言のデメリット3:遺言書として認められない

三つ目のデメリットとしては、うっかり要件を満たしておらず、

せっかく作ったのに遺言書として使えなかったというものがあります。

上記のような、

  • ①自筆
  • ②押印
  • ③記名
  • ④年月日

に不備があると認められないため、注意が必要です。

 

最後に

自筆証書遺言は遺言書の中でも作ることが最も簡単な遺言です。

要件さえ満たしていれば5分で作ってしまうことも可能です。

だからこそトラブルも起きやすいというデメリットもあるのですが・・・。

遺言書というものを知るには、まずはこの自筆証書遺言を知るのがいいですね。

全ての遺言書の基本になるものですから、法律のお勉強ということで、自分で簡単に作ってみるのもいいかもしれません。

是非、挑戦してみてください。

もし失敗のない遺言書を作りたいということであれば、

  • 弁護士
  • 司法書士

になるべく相談し、要件をミスしてしまったということのないように進めるのが安全です。