相続手続きが始まると、相続手続きを主導している相続人から、

「印鑑証明がいるから取っといて」などと気軽に頼まれることがあります。

しかし、印鑑証明書は、とても大事なものです。

何に使うのか、本当に必要なのかをきちんと確認しておかないと、あとから、

  • 「こんなはずじゃなかった」
  • 「勝手に不動産の名義を変えられた」

などということになりかねません。

そこで、相続で印鑑証明書が必要になるのは、どんなときなのかということや、利用するときの注意点について、まとめました。

 

 

印鑑証明書って何?

 

印鑑証明書とは

印鑑証明書とは、この人の実印はこれですということを公的機関が証明してくれる書類で、

住民票のある市区町村の役所で発行してもらえるものです。

もっとも、印鑑登録をしていなければ、印鑑証明書を発行してもらうことはできません。

 

印鑑証明書の取得方法

一般の人が印鑑登録をするのは、住宅ローンを借り入れるときなど、大きな借入をするときが多いでしょう。

そういった経験がない人は、相続手続きのときに初めて印鑑証明書が必要になり、印鑑登録をすることになると思います。

印鑑登録は簡単です。

まず、実印にする印鑑を作ります。

町のハンコ屋さんで作ってもらってもいいし、インターネットで注文することもできます。

料金は、

  • ハンコの大きさ
  • 文字数
  • 使用する木材の種類

によって、数千円から数万円までさまざまです。

そして、出来上がった印鑑を市区町村の役所に持っていけば、簡単に印鑑登録できます。

役所の窓口では、印鑑カードという免許証や銀行のキャッシュカードなどと同じような大きさのカードをもらいます。

今後は、このカードを示せば、役所で印鑑証明書の発行を受けることができるようになるので、とても大事なカードです。

大切に保管しましょう。

なお、手持ちの三文判を印鑑登録することもできますが、安全性の面からは、あまりお勧めできません。

 

 

相続で印鑑証明書が必要なとき

 

遺産分割協議書を作成するとき

遺産分割協議書は、相続人全員の合意ができて初めて作成されます。

相続人全員が、遺産分割協議書の内容に合意していますということを証明するために、

相続人は、遺産分割協議書には、実印を押印し、印鑑証明書を添付します。

印鑑証明書を添付された遺産分割協議書は、

  • 不動産の登記に使うこと
  • 預貯金の解約
  • 株式や投資信託の相続手続き

に使うこともできます。

 

相続分のないことの証明書で相続登記を申請するとき

相続分がないことの証明書(特別受益証明書)とは、

自分は、故人の生前に十分なことをしてもらいましたから、この不動産には持ち分はありません。

ということを証明する書類です。

簡単に内容を記載して、実印で押印し、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書を作成するよりも簡単に作成できるため、戦前から不動産の相続登記手続きに広く利用されていたようです。

相続分のないことの証明書を利用して、相続登記手続きを行うには、その不動産を相続しない相続人全員の分が必要になります。

 

預貯金を解約するとき

印鑑証明書が添付された遺産分割協議書によって、A銀行の預金はBが相続するということが決められた場合、

Bは、印鑑証明書が添付された遺産分割協議書を持って、A銀行に行けば、預貯金を解約することができます。

一方、遺産が少ない場合、例えば、C銀行とD銀行にそれぞれ預金が100万円ずつあるだけというような場合

相続人は、いちいち、遺産分割協議書を作らずに、

  1. 2つの口座を解約
  2. 葬儀費用を払い
  3. 残りを分けようと口頭で決める

方が簡単です。

そのとき、C銀行とD銀行からは、それぞれに所定の書類を手渡され、

この書類に、

  1. 相続人全員が署名
  2. 実印を押し
  3. 印鑑証明書をつけて提出してください

と頼まれます。

銀行は、トラブルに巻き込まれるのを避けるため、相続人全員が、解約に同意していることが分からなければ、解約に応じてくれないのです。

 

証券会社での相続手続きのとき

遺産の中に

  • 株式
  • 投資信託などの有価証券

がある場合にも、相続手続きに印鑑証明書は必要です。

証券会社も銀行と同じで、後日にトラブルに巻き込まれるのを恐れます。

また、預貯金は、とりあえず全員で協力しておろしてから、葬式費用などを支払い、残りを分けるというようなこともありますが、

株式などでは、あまりそういうことはしません。

  • 株式
  • 投資信託

は、遺産分割手続きによって、相続人の中の誰が相続するかを決めるまで、相続人全員の共有となっています。

そこで、遺産分割によって、誰が相続して株式をもらうかを決めなければなりません。

そして、遺産分割協議書には、全員の印鑑証明書が必要です。

もちろん、相続人全員の名前で、株式全部について、

  1. 売却注文を出し
  2. 現金化し
  3. それを相続人全員で分ける

ということも理論上は可能ですが、

あまりそのようなことをしたというのは聞いたことがありませんし、そのような注文を証券会社が受け付けるかどうかは不明です。

 

 

印鑑証明書の有効期限

印鑑証明書の有効期限は、法律などによって決められているというわけではありませんが、

だいたい発行から3ヶ月以内のものを提出するように言われます。

実印として登録している印鑑は変更することができます。

そのため、3ヶ月以上前の古いものだと、内容が変更している可能性が高いとみなされるのです。

印鑑証明書に限らず、公的機関が発行するもので、内容が変動する可能性があるもの。

例えば、

  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 不動産の登記簿謄本

などは、3ヶ月以内に発行されていなければ、取り直してくださいと言われることが多くあります。

遺産分割協議書に添付する印鑑証明書は、遺産分割協議書を作成する日から見て、3ヶ月前までの日付のものを利用した方がいいでしょう。

なお、遺産分割がまとまってから印鑑証明書を取得したため、

印環証明書の日付が、遺産分割協議書の日付より、数日あとになってしまったとしても、問題ないことが多いようです。

 

 

実印を押す書類をよく確かめる

印鑑証明書を渡したら、他のことに流用されるかもしれないと警戒することもあります。

実印と印鑑証明書が必要なときは、重要な取引のときです。

そのため、印鑑証明書を渡すことに慎重になることはとてもよいことです。

ですが、手続を進めていくために本当に必要な手順なのかもしれません。

そもそも、

  • 印鑑証明書
  • 実印

はセットで利用するものです。

実印を押した書類に印鑑証明書を添付することで、その書類が利用できるようになります。

ですから、印鑑証明書の交付に慎重になるよりも、

実印を押すことを求められている書類をよく読んで、納得してから押印することが一番重要なことなのです。

 

 

まとめ

相続手続きに印鑑証明書はつきものです。

だから、「印鑑証明書をちょうだい」と言われただけで、警戒する必要はありませんが、

実印を押す書類はよく読んで、何の手続きをしようとしているかをきちんと把握しましょう。