「相続税は税務調査をされやすいと聞いて心配。。」なんて、不安に思っていないでしょうか?

実は、相続税を申告して税務調査に入られる割合は、20%程度です。

5人に1人は調査対象に選ばれると考えると、決して低い数値ではありません。

税務調査に入られると申告ミスがないか徹底的に調べられ、ミスが発覚すると追加の税金を取られてしまいます。

追加で発生する税金の税率は最大で50%と高くなっているので、できるだけ調査の対象にならないように対策するべきです。

今回は、相続税申告における税務調査の基本的な知識や、対策、流れなどをご紹介します。

税務調査についてしっかり理解し対策をして、安心して相続税の申告をしましょう。

相続税の税務調査とは

相続税の税務調査とは、税務署が相続税の申告内容についてミスがないのかを確認するものです。

税務調査で申告ミスが発覚したら、正しい税金を納めるだけではなく、ペナルティとして追加の税金を納めなければなりません。

税務調査は調査官が自宅までやってきて行われます。

申告内容が正しいか判断するため、亡くなった人の趣味から財産状況まで幅広く質問されるので、対応は大変です。

しかし、「そんなに相続財産がないし調査には入られないだろう」なんて、思っている人も多いと思います。

相続税の税務調査の対象について見ておきましょう。

相続税の税務調査の対象は?

相続税の税務調査の対象には、財産の金額に関係なく選ばれる可能性があります。

国税庁によれば、相続税申告件数が56,000件ほどの年度の税務調査は12,000件ほどなので、およそ20%程度の割合で税務調査は行われているのです。

したがって、相続税の申告をした5人のうち、1人には税務調査が入ることになります。

誰でも対象になりえるので、相続税を申告する際には税務調査についても意識しておきましょう。

相続税の税務調査はいつで期間はどれくらい?

「もう申告を終えているけれど、税務調査はいつごろ来るのかな?」と、疑問に思った人もいると思います。

相続税の税務調査は、申告してから1年〜1年半を経過した頃に行われることが多いです。

しかし、事前調査が必要となる複雑なケースでは、申告後、2年〜3年が経ってから行われることもあります。

税務調査の期間としては、実際に調査官が自宅に来て質問などを行うのは2、3日程度がほとんどです。

そこから2週間~1カ月ほど経過してから結果が伝えられます。

このとき、申告ミスなどで正しい相続税額に修正申告を求められたとき、追徴課税が発生するのです。

相続税の税務調査で発生する追徴課税はいくら?

相続税の税務調査で申告ミスなどが指摘された場合、「本来払うべき税金」「加算税」「延滞税」の3つを納めることになります。

加算税とは、支払った税金と本来支払うべき税金が異なっていたときに徴収される税金です。

相続税について考えるべき加算税には、以下の3種類があります。

  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 重加算税

本来支払うべきだった税金以外に、これらの加算税と、納付期限にすべての税金を納めることが間に合わなかったときに発生する延滞税を納める必要があるのです。

それぞれの税金について順番に確認していきましょう。

過少申告加算税

過少申告加算税は、期限内に申告したものの、財産金額を誤っていたなどの理由で税額を少なく申告してしまっていた場合の税金です。

税務調査で指摘された場合、新たに納める税金の50万円までは10%、50万円超の部分は15%の税率となります。

調査の通知が来た後に自主的に修正申告すれば、それぞれ5%と10%です。

無申告加算税

無申告加算税は、そもそも相続税の申告自体していない場合の税金です。

税務調査で指摘された場合、税額の50万円までは15%、50万円超の部分は20%の税率となります。

調査の通知が来た後に自主的に修正申告すれば、それぞれ10%と15%です。

重加算税

重加算税は、財産を隠すなど悪質な申告を行っていたことが税務調査で判明した場合の税金です。

過少申告加算税や無申告加算税の代わりに課税されます。

税務調査で指摘された場合、過少申告を行っていた場合は35%、無申告だった場合は40%の税率です。

延滞税

延滞税は、税金を納めるべき日に納めなかった場合に、その日数分だけ本来納めるべき税金との差額にかかります。

原則として、納付期限から2ヶ月までは年7.3%、2ヶ月以降は年14.6%の税率です。

延滞税の計算は、「納付していなかった相続税額 × 延滞税の利率 × 延滞日数 ÷ 365日」で行えます。

例えば、納付していなかった相続税額が100万円で、納付期限が8月1日、納付日が11月1日、延滞日数が92日の場合を考えてみましょう。

(100万円 × 7.3% × 62日 ÷ 365日)+(100万円 × 14.6% × 30日 ÷ 365日)= 12,400円 + 12,000円 = 24,400円

したがって、延滞税は24,400円です。

このように、税務調査で申告ミスが発覚すると、高額な税金が発生してしまいます。

事前にどのようなポイントが調査されやすいのかを確認して、追徴課税を発生させないようにしましょう。

相続税の税務調査でチェックされやすいポイント

相続税の税務調査の際に、特にチェックされやすいポイントは以下の3つです。

ポイント1.タンス預金などでお金を隠していないか?
ポイント2.生命保険の契約者は誰か?
ポイント3.名義預金はないか?

これらのポイントは、調査対象に選ばれた場合は必ず確認されると考えておいたほうが良いです。

それぞれのポイントについて、順番に確認していきましょう。

ポイント1.タンス預金などでお金を隠していないか?

タンス預金でお金を隠していても、税務調査ではバレてしまうので気をつけてください。

税務署は、相続税が申告される前から、それぞれの家庭の財産状況や贈与について把握しています。

したがって、以前から確認していた収入や貯金の状況からは考えられない相続税額を申告すると調査の対象となるのです。

相続が起きる前から、タンス預金はしないようにしておくのが良いでしょう。

ポイント2.生命保険の契約者は誰か?

保険の対象が亡くなった人で、契約者が相続人になっている場合の生命保険には気をつけてください。

保険料の負担者が亡くなった人だったときには、受け取った生命保険金も相続税の対象となります。

つまり、保険金の相続税について考えていなければ、申告漏れが発生してしまうのです。

相続が起きる前から、生命保険の契約者については意識しておきましょう。

ポイント3.名義預金はないか?

例えば、専業主婦の妻が夫から渡されたお金で3,000万円の預金をしていた状況で夫が亡くなった場合、名義預金と判断されるかもしれません。

名義預金とは、形式上の名義人と、実質お金を貯めていた人が違う場合の預金です。

相続が起きて名義預金があった場合、その預金も相続財産となります。

名義預金として隠していたつもりはなくても重加算税がかかることがあるので、名義預金がないか相続税を計算する際には気をつけましょう。

このように、税務調査では専門家でなければ気が付きにくいポイントをしっかり調査されます。

追加の税金を発生させないためにも、税務調査に向けて行うべき対策を見ていきましょう。

相続税の税務調査に向けた3つの対策

相続税の税務調査に向けた対策は、以下の3つのようなものがあります。

対策1.相続発生前から財産を把握しておく
対策2.預金通帳や印鑑は本人が管理する
対策3.相続税の申告は税理士に依頼する

これらの対策を行っておけば、税務調査に選ばれる可能性や、追徴課税が発生する可能性を下げることができます。

それぞれの対策について、順番に確認していきましょう。

対策1.相続発生前から財産を把握しておく

相続が起きる前から、自分や周りの人の財産状況については把握しておくべきです。

相続が発生して初めて財産について考えた場合、すべての財産を探し出して期限内に漏れなく申告するのは難しくなってしまいます。

相続対策として、所有している財産のリストを作っておくのが良いです。

その際には、タンス預金や名義預金がないか、生命保険の契約はどうなっているかについても確認しておきましょう。

対策2.預金通帳や印鑑は本人が管理する

預金通帳や印鑑を本人が管理することで名義預金と判断される可能性を下げられます。

名義預金になることを避けるには、名義も実質的な利用者も同じである必要があるのです。

また、預金口座にお金を入れる際には、その都度で贈与の契約書を作ることも対策となります。

亡くなった人が自ら相続人の口座にお金を貯めていたのではなく、あくまでも贈与が行われていたという証拠を残すようにしましょう。

対策3.相続税の申告は税理士に依頼する

相続税の申告を専門家である税理士に依頼することで、税務調査の確率を下げることができます。

なぜなら、税務調査は申告の信頼性が低いところに入りやすく、正確な申告書を作ることが大切だからです。

また、税理士に書面添付制度を活用してもらえば、税務調査の対象に選ばれても実際に調査には入られないで済むかもしれません。

( 書面添付制度について詳しく知りたい方は、『書面添付制度とは?相続税申告で利用するメリットやデメリットを解説』を読んでみてください。)

税務調査の対策は以上のようにさまざまなものがありますが、対策をしても調査に入られる可能性はゼロではありません。

税務調査の対象になったときに慌てないように、調査の流れを見ておきましょう。

相続税の税務調査の流れ

相続税の税務調査の流れは、以下のようなものです。

流れ1.調査の担当者(税務署職員)からの連絡
流れ2.現物確認調査
流れ3.相続税の修正申告

どのように税務調査が行われるのか、順番に流れを追って見ていきましょう。

流れ1.調査の担当者(税務署職員)からの連絡

まずは、税務署の職員から相続人に対して連絡が行われます。

税理士が申告した場合には、税理士への連絡です。

実は、税務調査はいきなり家に調査に入られるのではなく、調査日を電話で決めて行われることになっています。

調査が予定されている日の1週間ほど前に電話がかかってくることが多いです。

しかし、予定日の都合が悪ければ、変更をすることもできるので安心してください。

調査の日を決めたら、その日に自宅まで担当者が来ることになります。

流れ2.現物確認調査

現物確認調査とは、調査当日、税務署から担当者が来て相続財産の現物を確認したり、さまざまな質問を行ったりするものです。

事前に税務署で調べられる範囲の情報を、調査官がすでに調べてから現物確認調査は行われます。

したがって、財産状況など隠し通すことは難しいです。

申告漏れの財産はないかを調べるためにさまざまな質問をされますが、嘘をつくことなく端的に答えましょう。

現物確認調査はだいたい午前10時ごろから始まり、12時にお昼休憩を行い、午後1時に再開することが多いです。

1日で終わることもあれば、2日間にわたることもあります。

現物確認調査当日に申告漏れについて指摘されることはあまりなく、一度持ち帰って検討されることがほとんどです。

流れ3.相続税の修正申告

現物調査の結果が伝えられるのは、2週間〜1ヶ月程度が経過したころです。

税理士が申告した場合には税理士にも結果が伝わります。

追徴課税がある際には、その理由と税額を伝えられるので納めなければなりません。

税務調査の結果、特に問題がなかった場合にも連絡はあります。

調査の結果についてどのように行動するべきかは、調査担当者の指示に従いましょう。

「流れはわかったけれど、現物確認調査が不安。。」と思っている方も多いはずです。

最後に、税務調査官による質問はどのようなものがあるのかについてを見ておきましょう。

税務調査官による質問例と意味

税務調査に入られた場合、税務調査官にさまざまな質問をされます。

どの質問にも意味があり、例えば以下のようなものです。

  • 「預金の管理は誰がしていた?」→ 名義預金はないか?
  • 「相続人の職業は?」→ 所有財産が年収に比べて異常に多く、隠している相続財産がないか?
  • 「遺言は書かれていたか?」→ 申告漏れの財産がないか?
  • 「亡くなった人の趣味は何だった?」→ 収入に比べて貯金額が少なく、名義預金がないか?
  • 「亡くなった人の日記はないか?」→ 財産状況について書かれていないか?

このように、ささいな質問にも意味があります。

専門家でなければ、質問の意味を理解した上で答えることは難しいです。

したがって、税理士に申告を依頼した上で税務調査にも立ち会ってもらうのが良いでしょう。

相続税の税務調査について税理士に相談しよう

相続税の税務調査について不安や疑問があるなら、税理士のところに相談しに行ってみましょう。

税務調査については事前に対策ができることもあるので、早めに行くべきです。

「税理士に頼るのは緊張する。。」「何を話せば良いのかわからない。。」と思う方も多いと思います。

しかし、ほとんどの税理士は話しやすい雰囲気で気楽に悩みを聞いてくれるので安心してください。

初回の相談は無料で行っているという税理士もたくさんいます。

まずは、近所の税理士事務所や知り合いの紹介などで、無料相談に行けるところを探すのが良いでしょう。

もしもそれで見つからないようなら、税理士紹介サービスを活用すると良い相談先が見つかります。

税理士紹介サービスをうまく使って、税務調査について安心して相談できる相手を探しましょう。

「税理士紹介サービスについて詳しく知りたい!」という人は、『相続なら税理士紹介サービスを活用しよう!利用の流れや注意点を解説!』で解説しているので読んでみてください。

まとめ

相続税の税務調査では、追徴課税が発生する可能性もあるので注意しなければなりません。

誰でも調査対象に選ばれる可能性がありますが、対策を行うことで対象となる確率や追徴課税発生の確率を下げることができます。

相続税の税務調査について不安があるのなら、専門家である税理士に相談するようにしましょう。