皆さんは自分が死んだ後のことを考えたことはありますか?
晩婚化が進み、しかも、結婚しても三組に一組は離婚しているのでは?
と言われる時代です。
結婚年齢も上がっており、未婚のまま一生を終える方も増えているとか。
そんな時代に考えたいのが「お一人様」の相続です。
今回は、「独身の私が死んだらどうなるの?」をテーマに、相続人の存在しない相続について考えます。
相続放棄とも深い関係のある話です。
相続人がいない?これって結構身近なこと
相続人が誰一人いない。
この状態を「相続人不存在」といいます。
本来、誰かが亡くなったら相続が発生し、その亡くなった人(被相続人)の財産を受け継ぐ(相続する)という流れになります。
しかし、もし相続人がいないとすると、誰が遺産を受け継ぐのでしょうか。
相続人がいないということで、身近な人が勝手にもらってしまうのでしょうか。
そもそも、相続人が存在しないということはあり得るのでしょうか?
実はこの「相続人がいない」という状況は、誰にとっては決して他人事ではないのです。
希なケースでは?
と思うかもしれませんが、現代の日本においては非常によくあるケースなのです。
相続人が存在しない事例とは?
例えばこんな事例を考えてみてください。
一人っ子のAさんは
- 未婚
- 子供もいません。
両親はAさんより早く亡くなりました。親もそれぞれ一人っ子で、叔父や叔母、姪や甥もいません。
このAさんには相続人が誰一人いない状況です。
晩婚化・結婚する人の減少・少子高齢化。
現在の社会問題を考えると、こうした相続ケースは決して珍しいものではありません。
相続人が「いた」のに「いなくなる」ことも
また、もう一つの例を考えてみましょう。
Bさんは長年連れ添った夫と離婚しました。
いわゆる熟年離婚です。
Aさんには息子がいましたが、Aさんの離婚後、Aさんより先に亡くなりました。
Aさんの両親も既に他界しており、兄弟姉妹もいません。
Aさんはふと自分の死後のことを考えることがあります。
自分の相続人はどうなるのだろう?
と考えるのです。
離婚した元夫は相続人にはなりません。
息子が存命であれば相続人になっていましたが、Aさんには存命の親族がおらず、相続人になる人が誰もいないのです。
熟年離婚が話題になっています。
第一順位として相続人になるはずの配偶者と年金受給が始まる世代になって離婚することは決して珍しいことではありません。
また、結婚して子供が産まれても、子供が必ず親より長生きするとは限りません。
両親が亡くなっており、兄弟姉妹もいないということであれば相続人になる人がいなくなってしまいます。
AさんとBさんの例で説明しましたが、現代においてこのように
- 相続人がいない
- 相続人になる人がいない
ということは、家族形態を考えると決してあり得ないことではなく、むしろよくある話ではないでしょうか?
相続放棄により相続人がいなくなることも
もう一つCさんの事例で考えてみましょう。
Cさんのお父さんが亡くなりました。
CさんにはDさんという弟がいて、母は父親より先に亡くなっています。
ですから、父親の相続人はCさんとDさんの二人ということになります。
父親が残した
- 実家の土地建物と預金100万円を兄弟でわける予定でしたが、
- よく確認してみると父親は多額の借金も残している
ことがわかりました。
父親の遺産を相続してしまうとCさんとDさんは多額の借金を背負わなければいけません。
CさんとDさん兄弟は話し会いの末、相続放棄をすることにしました。
期限内に手続きをすると、裁判所から相続放棄が認められた旨の通知がありました。
さあ、この場合はどうでしょう?
相続放棄とは、ただ借金を相続しないようにするだけの手続きではありません。
相続放棄の手続きをすることにより
「その相続においては最初から相続人ではなかったことにする」手続きです。
だからこそ借金というマイナスだけでなく預金と実家の土地不動産も相続できなくなってしまうのです。
家系図を想像して、CさんとDさんに×をして、家系図から消してしまうという考え方がわかりやすいかもしれないですね。
もちろん最初から相続人でなくなってしまうのは相続放棄の手続き対象である今回の相続だけで、
他の相続では相続人になることはできます。
しかしここで考えなければならないのは他の相続のことではなく、今回の父親の相続です。
CさんとDさんが相続放棄をした結果、相続人が誰もいなくなってしまいました。
- お父さんには兄弟姉妹もいませんし、
- 配偶者であるお母さんは先に亡くなっています。
- また、お父さんの両親は高齢で既に亡くなっています。
CさんとDさんが相続放棄をした結果として相続人が誰もいないという事態になったといえるでしょう。
皆さんの周りにはこんな事例はありませんか?
実はこの相続放棄によって相続人がいなくなるという話はとてもよくある話なのです。
相続人のいない遺産はどこに行くのか
相続人がいなくなってしまったら、そもそも遺産はどうなってしまうのでしょう。
これは大きな問題です。
例え遺産が小さな額でももらえるならもらいたいという人も世の中にはいることでしょう。
それなら、相続人のいない相続では、遺産は赤の他人が勝手にもらってしまってもいいのでしょうか?
当然ですが、これはいけないことです。
しかし相続人がいないとなると、その財産を引き受ける人がいないということですから、財産は宙ぶらりんになってしまいますよね。
皆さんはこんな時に遺産はどうなるのか、誰に物になるのかご存じですか?
最終的に国庫に帰属するという答え
答えは・・・国です。
裁判所での相続人不存在という手続きを経て最終的には国庫に帰属することになります。
手続きの中では相続人の捜索や特別縁故者への分与が行われるため、遺産がすぐに国のものになるわけではありません。
- 手続きの中で特別縁故者も名乗り出ず
- 特別縁故者が出ても分与が行われず
- 相続人を探しても見つからなかった
ということであれば、手続きの最後として遺産は国のものになります。
皆さんの家の近くにある空き家も、以外に相続人がいないことを理由に国庫に帰属した物件かもしれませんよ?
相続人が誰もいない遺産は最終的に国に行きます。
平成22年のデータでは、
相続人がいない(相続人不存在)によって国庫に帰属した遺産総額は何と250億円を越えています。
現代はAさん、Bさん、Cさんのような「相続人がいない」というケースが非常に多くなっています。
いかがです?意外に「相続人がいない」「相続人が」いないということは皆さん自身に降りかかるかもしれない現実なのです。
そこで考えておきたいのがお一人様用の相続対策です。
相続人が誰もいなくても、遺産を自分の思うようにできることを知っておきましょう。
参照:
http://www.meitoku-office.jp/
最後に
相続人がいないことが既にわかっている、あるいは相続人がいない可能性があるのなら、なるべく早めに対策をしてしまいましょう。
- 相続人がいないのに対策して意味があるの?
- 相続税を支払う必要がないのに対策?
と首を傾げる方もいるかもしれませんが、例え相続人がいなくても相続対策をすることはとても大切なことなのです。
なぜかというと、それは、「自分で培った財産はやはり自分のもの」であるわけですし、
「死後に財産を処分したいなら生前の対策が必要だから」です。
誰も相続人がいないから国に行くのか・・・で思考を止めず、
自分で頑張って貯めた財産ですから、なるべく自分の思うように処分をしたいですよね。
- 遺言
- 遺言執行人をつける
- 生前贈与
といった方法を使い、自分の財産を思うように処分してしまいましょう。
遺産が少額であっても、もちろん遺言は使えます。
遺言を実現してくれる相続人がいませんので、遺言執行人を立てておき、死後に遺言に従って遺産を処分してもらいましょう。
この方法により、相続権のない親族や友人に遺産をわけることが可能です。
他には生前贈与によって、死ぬまでの間にあらかたの財産を処分してしまうことも可能です。
- 寄付を希望している
- 希望の処分方法がある
- あげたい人がいる
など、自分の中で考えていることがあれば、早めに法律家に相談しておくのがいいですね。
核家族化に少子高齢化に熟年離婚。
多くの社会問題や家族形態が交錯する現代だからこそ、「相続人がいない」という事態を想定し、
自分の望むように自分の財産はきっちり処分したいですね。