• 夫婦間でお金のやりとりをしたり
  • お金を移動させたり

することはよくありますが、これは、贈与税を払わなければいけない贈与にあたるのでしょうか?

この記事では、夫婦間の財産に対する法律と税務についてまとめました。

 

夫婦の財産制度

 

夫婦別産制

民法762条1項では、

夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする

と定められています。

つまり、夫婦であっても、原則として、

  • 夫の財産は夫のもの
  • 妻の財産は妻のもの

なのです。

 

夫婦共働きの場合の財産の税務上の取り扱い

税務上は、夫婦に所得がある場合には、取得される

  • 預金
  • 株式
  • 不動産

等についての持ち分は、原則として、夫と妻のそれぞれの所得金額を按分して、持ち分が算定されます。

 

同居、協力、扶助の義務と婚姻費用分担義務

夫婦間には、

  • 同居
  • 協力
  • 扶助

の義務(民法752条)と婚姻費用分担義務(民法760条)があります。

民法752条では、

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない

とされ、さらに、民法760条では、

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する

とされているのです。

この婚姻費用分担義務は、配偶者に自分と同程度の生活をさせる義務(生活保持義務)です。

これにより、収入、資産がある方が、他方に生活費を支払い、夫婦で同レベルの生活をすることになります。

 

生活保持義務と生活扶助義務

民法877条1項は、

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。

と定めています。

このように、親子間には扶養義務がありますが、

未成年の子供を扶養する義務は、上記の婚姻費用分担義務に含まれているとされていて、自己と同程度の暮らしをさせる義務になります。

離婚した後に払う養育費は、民法766条の「子の監護に関する事項」に該当し、これも生活保持義務となります。

一方、それ以外の直系血族及び兄弟姉妹間の扶養義務は、生活扶助義務といって、「最低限度の生活をさせる義務」に留まるものです。

 

夫婦間の贈与

 

生活費のやりとりは贈与ではない

贈与とは、贈与をしたいと思う人(贈与者)が、贈与を受けたいと思う人(受贈者)に無償で財産を譲るという意思を表示し、

受贈者がこれを受ける意思を表示することで成立する契約です。

一方、夫婦間での通常の生活費のやりとりは、

婚姻費用分担義務の履行に過ぎず、贈与ではありませんから、贈与税はかかりません。

 

夫婦間でも、贈与には贈与税がかかる

一方で、婚姻費用分担義務や協力義務を超えた財産の譲渡、

つまり、

  • 通常必要な生活費や教育費を超えた金銭の移動
  • かつ所得金額の按分を超えた資産の移動

は、贈与とみなされ、贈与税の対象となりえます。

また、住宅ローンについても、特約のない限り、夫婦それぞれの所得金額の比率に応じて、案分して負担しているものとして取り扱われます。

そこで、夫が住宅ローンを借り入れているにもかかわらず、妻がそれを返済しているとしたら、妻の夫に対する贈与として取り扱われます。

 

夫婦間の贈与の特例

夫婦間の贈与については、不動産に関して特例があります。

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、

  • 居住用の不動産を贈与する
  • 居住用の不動産の購入資金を贈与する

場合は、2,000万円まで非課税になるのです。

贈与を受けた翌年3月15日までに居住を開始し、その後も引き続き居住する見込みであることが必要です。

この制度は、暦年贈与と併用することが可能です。

なお、贈与税は非課税になっても、不動産取得税の課税はあります。

 

夫婦間の財産分与

 

贈与税

離婚するときには、財産分与という制度があります。

このときには、婚姻中に得た財産は、

  • 夫名義でも
  • 妻名義でも

「実質的夫婦共有財産」とみなされて、原則として2分の1ずつ分けられます。

離婚のときの財産分与は、夫婦が協力して取得・維持してきた財産を公平に分ける制度です。

たとえ専業主婦であったとしても、家事育児などにより「内助の功」を与えていますから、

財産形成には寄与しているとみなされます。

そこで、例えば、婚姻期間中に、

  • 夫が500万円
  • 妻が200万円

預金を作っていたとしたら、夫は妻に財産分与として、金150万円を支払わなければなりません。

この財産分与は、自分も協力して築いた財産を分けてもらうのですから、「無償であげる」ものではありません。

そのため、財産分与には、原則として贈与税が課税されません。

しかし、分与された財産が過大であるような場合は、過大な部分について、贈与であると評価され、課税されることがあります。

さらに、その離婚が贈与税や相続税を免れるための手段である、と認められるような場合にも課税されます。

また、扶養的財産分与といって、離婚した後、配偶者の生活の面倒をある程度みることを目的とする財産分与の場合は、贈与税の対象になることがあります。

 

譲渡所得税

財産分与によって、土地や建物の所有権を夫から妻に移転した場合、妻への財産分与義務の履行にあたるのですが、

夫は、財産分与義務が履行によって消滅したという経済的利益を受けたものとみなされます。

その結果、夫はその分与をした時において、その時の価格によって資産を譲渡したものとして譲渡所得が課税されることになります。

 

夫婦間の相続

 

配偶者の軽減税率

配偶者の相続分は、

  • 子との相続である場合には2分の1
  • 直系尊属との相続である場合には3分の2
  • 兄弟姉妹との相続である場合には4分の3

です。

そして配偶者は、

  • 本来の法定相続分以下を相続する場合か
  • 相続額が1億6,000万円以下である場合

には、相続税がかかりません。

これもやはり、夫婦が協力して財産を築いてきた以上、一方配偶者の遺した財産を他方配偶者が受け取るのに、多額の相続税をかけるべきではないという判断があるのでしょう。

なお、配偶者税額軽減の適用を受ける場合には、相続税を払う必要がない場合でも、税務署への申告が必要になります。

また、配偶者税額軽減の適用を受けるためには、

原則として、相続税の申告期限(相続開始日の翌日から10ヶ月)から3年以内に遺産分割が行われることが必要です。

やむを得ない場合(例えば、相続について調停の申立、訴えの提起、その他3年以内に分割されないことについて、やむを得ない事情がある場合)には、

「申告期限から3年を経過する日の翌日」から、2ヶ月を経過する日までに、承認申請書を提出し、税務署長から承認を得る必要があります。

 

名義預金

名義預金とは、他人名義の預金口座に、自分のお金を貯めておくことです。

夫婦間でいうと、夫が稼いだお金を

  • 妻名義の口座に貯めていたり
  • 子供名義の口座に貯めていたり

する場合です。

このような場合は、口座の名義人ではなく、実際にお金を出した人の財産であると見られます。

これが問題になるのは、主に相続のときです。

パート勤務だった妻の口座に多額の預金があれば、

名義預金であるとみなされて、夫の相続財産として、相続税が課税されます。

東京高等裁判所の平成21年4月16日の判決では、

ある財産が被相続人以外の者の名義となっていたとしても、当該財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められるものであれば、当該財産は相続税の課税の対象となる相続財産となる

としています。

そして、被相続人に帰属する財産か否かについては、

当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当

としています。

 

まとめ

夫婦といえど、それぞれ別の個人です。

基本は、夫婦別産制ですから、資金の移動には気を付けた方がいいでしょう。