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親や親族の相続をする機会は、めったにないもの。

経験がない分、トラブルに巻き込まれたらどうしようと不安になる人は多いでしょう。

相続のトラブルは、大きく3パターンあります。その事例と、防止策を紹介します。

相続のよくある原因3パターンとトラブル回避のための基本行動5つ

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相続トラブルの不安を解消するためには、事前準備をしておくことが大事です。

相続には法律が深く関わってきますので、制度に詳しくなることはもちろん、事例を知ることでより想像力が働き、準備ができるようになります。

まずは、相続トラブルでよくあるパターンを見てみましょう。

相続でのトラブルは、主に次の3つのことが原因となって起こります。

A.遺産が不動産など、分割しにくい財産であること。
B.資産や相続人が把握できてないなど、準備不足によるもの。
C.遺言や分割協議の不公平感によるもの。

そして、これらのトラブルは、次のような行動をすることで回避することができます。

《生前にやっておくこと》
1.相続人の範囲、どんな人かをチェックする
2.財産をチェックする
3.遺言書を作成する。または生前贈与を行う。
4.被相続人(財産を残す人)と相続人、相続人同士でよくコミュニケーションをとる

《相続開始(被相続人が亡くなった後)にすること》
5.制度にのっとって、正確に手続きを行うこと

次はさっそく、具体的なトラブル事例をみてみます。

パターンA:分割のしかたで起こるトラブル

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相続トラブルで最も多いのは、家や土地などの不動産をめぐっておこるケースです。

特に遺産が実家のみというケースは多く、兄弟の骨肉の争いの種となっています。

真面目にやれば取れるらしい(???) #国家資格#宅建#宅建士#不動産

吉田 龍八さん(@saru8111)が投稿した写真 –

事例1:相続財産が住宅のみだったケース

【妻を早くに亡くした甲野太郎さんは、一郎・二郎の二人の息子を残して亡くなった。残された遺産は一郎さんと同居していた家土地と、わずかな預金のみだった。長男である一郎さんは父親の介護をしていたという自負もあり、愛着のある家に住み続けたい。そして、それが当然だと思っている。一方、二郎さんは家を売ってお金を二人で分けるのが平等だと思っており、どちらも譲らない。】

これは意外とよくあるパターンです。

回避するために重要なのは、先ほどの基本行動「4.コミュニケーション」が大事。

生前によく当事者同士で話し合っておくことです。

できれば一郎さんが介護のために同居するとなった時点で、被相続人である父親も含めて話し合い家の相続についても納得した状態でスタートするのが一番です。

法律的には、二郎さんの言い分は正しいです。

特別寄与分といって、被相続人の財産形成に重要な手助けをした人は、より多くの財産を相続する権利が認められますが、一郎さんが相当の努力をしたことを証明する必要があります。

解決策として、まずは納得いくまで協議をするしかありません。

相続割合が決まれば、あとは遺産分割協議書の作成など、もろもろの手続きをするだけです。

家土地を売ってお金にしたうえで、決まった相続割合に従って分配する方法、一郎さんから二郎さんに相続割合分のお金を払ってそのまま相続不動産に住み続ける方法などがあります。

二人で共有する方法もありますが、のちのちさらなるトラブルになる可能性が高いのでおすすめできません。

事例2:忘れたころに分割請求をされたケース

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【事例1の続き。一郎さんと二郎さんは話し合いの末わかりあい、一郎さんの主張がとおることになった。二郎さんはわずかな貯金を相続し、一郎さんは3000万円相当の実家に住み続けることにした。相続税の対象にならないこともあり、特に手続きなどは行っていなかった。不幸は続くもので、3年後に二郎さんも亡くなった。それからしばらくして、二郎さんの奥さんが、生前の夫のように、家土地を分割することを主張してきた。】

二次相続で複雑になったケースです。

また、このように相続人が変わらなくても、話し合いの後に気が変わるというのはよくあります。

回避するには、行動の「5.きちんと手続きを行うこと」。

二郎さんの奥さんは相続人として法律上正しい主張をしているので、これに対抗するためには、一郎さんは法律上正しい手続きをしている必要があります。

今回のケースは、遺産分割協議書の作成と相続登記、特に後者が重要でした。

登記とは、不動産の権利を公的に登録することをいいます。

相続登記をするにあたっては、「遺産をこういう風にわけました」ということを書面で表した遺産分割協議書を添付する必要があります。

そして、この協議書には相続人が署名捺印しなくてはなりません。

登記の専門家は司法書士です。

時間があれば、自分でやってみるのもいいかもしれません。

非常に煩雑ですが、やり方は法務局の人が教えてくれますし、司法書士への手数料が節約できます。

結果、話し合いは振り出しに戻り、家庭裁判所による調停にまで発展。

一郎さんは泣く泣く思い出のつまった実家を売却することになりました。

登記はいつまでに行うという期限があるわけではありませんが、相続税の申告・納税は10ヶ月、後述の相続放棄など3ヶ月と期限が決まっているものもあり、非常に重要な手続きでもあります。

これらを優先して行い、その後すみやかに相続登記を行いましょう。

パターンB:準備不足によるケース

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遺言書を最も確実に残すには、公正証書遺言という形式をとることです。

日本公証人連合会によれば、公正証書遺言の件数は、平成17年に7万件だったのに対し、26年には10万件。

10年間で1.5倍近くなり、しかも年々増加傾向にあります。

「終活」はもはや、敷居の高いものではなくなっています。

事例3:どのように分けたらいいか見当もつかないケース

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【丙野三郎さんは、現金数百万円と株券・債券、コレクションの高級時計、自宅・賃貸用のマンションなどの不動産と妻、三人の子供を残して他界した。何をどのように分ければいいか、見当もつかずに困っている。】

相続の分け方は、遺言書があれば遺言書に従い、なければ民法に定められた法定相続割合でするのが基本です。

特に亡くなった人の思い入れがあるような財産は、分け方に困ります。

「3.遺言書を作る、生前贈与を行うこと」が大事です。

また、遺言や生前贈与による相続割合の多寡によって、余計なトラブルが起こることもあります。

なるべくなら話し合い、被相続人は公平な分け方を、相続人は被相続人の意思を尊重しましょう。

遺言書は民法によって書式が定められており、従わないものは無効になります。

自宅にもし遺言らしきものがあったら、勝手に開封しないように注意。

家庭裁判所の立ち会い(検認)がなければ無効になってしまいます。

ちなみに読み方は「イ」ゴンです。

遺言書の作成は行政書士、弁護士のほか、司法書士や税理士も対応している場合があります。

事例4:知らない借金があったケース

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【事例3の続き。不動産はローンで購入したもので、他にも丙野さんには隠れた借金があり、売却して他の遺産で埋め合わせようとしても間に合わない。借金を返さなくてもいい方法はないのか?】

「2.財産をチェックする」をやっておくべきでした。

借金も相続する財産の中の一つですので、相続人の奥さんや子供には、返済する義務があります。

亡くなってから3ヶ月以内であれば、相続放棄という手続きをすることによって、不動産などの資産を含め一切の相続をしないという選択ができます。

また、限定承認といって、負債と資産を同じ分だけ相続するということもできます。

家は手放したくないけど相続した資産以上の借金を負いたくないといったときに使います。

法事やお墓のことなど相続以外のやらなければならないことがたくさんある中で、3ヶ月というのは、あっという間です。

自分の財産を洗い出してリスト化しておくことも、残されたものに対する思いやりとして重要なことです。

自分ですべてやる自信がない人は、ファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。

資産の管理方法だけでなく運用方法などのアドバイスもしてくれます。

自分の親がこういったことをしているか心配な人は、やはり親と相続について話し合ってみましょう。

事例5:相続人に問題があるケース

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【事例3・4の続き。丙野さんの奥さんは、認知症を患っており、遺産分割協議が何なのかもよくわかっておらず、財産を相続させるのも不安だ。先日も、亡くなった丙野さんが残したタンス預金を持ち出して不要な買い物をしてしまった。】

財産もそうですが、「1.相続人をチェックする」ことも大事です。

今までは丙野さんがついていたので平気だったかもしれません。

相続放棄や遺産分割協議も、一筋縄ではいかなくなります。

これらの法律行為は、親族などが成年後見人や成年補佐人となることで、代わりにしたり、サポートすることができます。

不要な買い物なども、取り消すことができる場合があります。

家庭裁判所に手続きが必要なので、弁護士や司法書士などの専門家に相談したほうがいいです。

また、相続人を精査することで、養子や前妻の子など、身近でない相続人がいることがわかるかもしれません。

わかれば、生前に被相続人含めて話し合うなど手の打ちようがあります。

パターンC:不公平感によるケース

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事例6:遺言の内容があまりにも偏っていたケース

【乙島さんは、遺言書を残して亡くなったが、その遺言の内容は、世話になった介護士に預金などすべての遺産を譲るというものだった。唯一の法定相続人である息子の史郎さんは、一切の財産を相続できないのか?】

こういったケースはあまりないでしょう。

息子の史郎さんに対する不信感から残した遺言であれば、生前によく親子間コミュニケーションをとっておくことで防げていたかもしれません。

事後対応にはなりますが、史郎さんには遺留分減殺請求権という権利を行使することで一部を相続することができます。

遺言書は最大限尊重されるべきものですが、相続人の気持ちや生活も考慮されるべきという趣旨に基づいた制度です。

この場合、史郎さんは相続財産の三分の一をもらえる権利があります。

まとめ

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相続トラブルを防ぐためには、次のように行動しましょう。
・遺産を残す予定の人、残される人たちで相続について話し合う。
・何を残すか、誰に残すかをチェックし、遺言書を作成する。
・亡くなったら、法令にのっとって登記などの手続きをすすめる。

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この記事を書いた人

ファイナンシャル・プランナー ファイコロジスト山田

不動産から為替相場の予想まで、お金に関するテーマについて幅広く執筆。
相続に関連して実家を失ったことがある。
これらの経験から、相続関係業務のモットーは「運用を含めた総合的な人生設計」「関係者全員が納得する分割」。