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  • 相続放棄
  • 遺言

は、重なる場合があります。

一口に遺言や放棄といっても、いくつかに分類され、さまざまなケースがあります。

相続放棄をしているにも関わらず、遺言で財産を指定されているケース。

また、欲しくない財産を遺言で指定されているケース。

これらのケースにどう対応すればいいのか?

事例を交えて説明します。

 

相続放棄と遺言書がからむ4つの事例。

まずは事例を紹介しますが、ここに書いてあるのはあくまで原則論です。

実際には、複雑な法律解釈が関係してきます。

後段の「相続放棄をすると…」以下を参照して、

  • なぜそうなるのか?
  • 自分の場合にも当てはまるのか?

を考えられたうえで、弁護士や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

事例1:父が亡くなった時に、兄に「父は借金だらけ」と聞かされていたので、相続放棄。

その後遺言が見つかり、多くの資産があることがわかった。

相続財産を均等に分割するようにとも書いてあった。

私は、財産を相続することができるのか?

→できます。

ただし、再び家庭裁判所に行き、相続放棄を取り消す手続きが必要です。

 

事例2:相続放棄後、「○○(私)は甲土地を相続する」の遺言を発見。相続するつもりはない。

相続しなければならないのか?

→いいえ。

むしろ相続できません。

相続放棄は有効です。

 

事例3:遺言書に、「○○(私)に全財産の二分の一を遺贈する」記載。相続したくない。

相続放棄しなければならないのか?

→いいえ。

原則として、相続放棄の必要はありません。

他の相続人に、相続したい旨を伝えることで済みます。

事例4:相続放棄をした後に、「○○(私)に甲土地を遺贈する」の遺言を発見

私は甲土地をもらうことができるのか?

→いいえ、原則として、もらえません。

ただし、場合によっては、相続放棄を取り消すことによって認められる場合もあります。

 

相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことに?

親の財産も借金も一切引き継ぎたくない!

という場合には、相続放棄をします。

亡くなったこと(自分に相続権があること)を知ってから、三ヵ月以内に裁判所で手続きをする必要があります。

被相続人が生きているうちはすることができません。

 

相続放棄の撤回はできる?

相続放棄した人は、「そもそも相続人ではなかった」とみなされます。

  • サラ金への借金も
  • 管理の手間だけかかる雑木林も

引き継ぐ必要はありません。

遺産分割協議にもノータッチで済みます。

  • 借金などの負債や
  • 二束三文で手間ばかりかかる土地のような負の遺産などが相続財産にある

こんな場合は、相続放棄が便利です。

ただし、相続放棄は基本的に撤回できません。

裁判所を相手に手続きするくらいですから、「やっぱり、気が変わったので相続します」というわけにはいきません。

では、資産があることを知らずに相続放棄して、遺言書などでその存在がわかった、という場合がどうなるでしょうか?

これには二つのパターンがあります。

やむを得ない事情があるものと、そうでないものです。

前者は、

  • 他の相続人にだまされて資産はないものと思い込まされた
  • または脅かされて放棄させられた場合
  • 資産がいくら探しても通常の探し方では見つからないように隠されていた

場合などがあります。

相続放棄でも個人間の契約と同様、

  • だまされた場合は「詐欺による意思表示の取り消し」
  • 脅かされた場合は「脅迫による意思表示の取り消し」

ができます。

隠されていた場合は、「錯誤による無効」を主張できるかもしれません。

ただし可能性は低いです。

事例1は詐欺による取り消しができるパターンです。

やむを得ない事情がないパターンというのは、資産を探せば見つかるのに、相続人本人が探すのをサボっていた場合です。

「もっとがんばってから相続放棄しろよ!」ということで、相続放棄を取り消すことはできません。

 

相続放棄の注意点。遺言の有無や相続人を調べてから手続きを!

少し話がそれますが、相続人が一人もいない場合は、相続財産は国庫に帰属する、とされています。

国のものになるというわけです。

もし相続人全員が相続放棄をしたら、相続人がいないことになりますので、財産は国のもの。

借金などの負債があれば、財産を分配し、足りない分は債権者が負担することになります。

事例1~4のように相続放棄した場合、借金はなくなるわけですが、

相続人には順序があり、

  1. 子供が全員放棄したら親がなり
  2. 親もいないか放棄したら兄弟
  3. 兄弟が亡くなっていたらその子供…

など、かなりの広範囲にわたります。

よく調べずに相続放棄をすると、ほとんど面識がないような遠くの親戚に借金を背負わせてしまうかもしれません。

また、相続放棄してから遺言で資産が見つかっても、錯誤無効にできることはまれです。

相続放棄は財産と相続人を慎重に調べてから行いましょう。

 

遺言は法律的に分類すると4種類ある。

生きているうちに、財産を引き継ぐ人を指定できる遺言。

最も確実に実行できる、公正証書遺言を作成している人は年々増加しています。

遺言の法律的な形態には、

  • 相続
  • 遺贈

の2種類があり、さらにそれぞれ2種類ずつ、計4種類に分けられます。

 

遺言でする相続は、相続放棄と関わりがある

相続した財産は、基本的に民法で定められた法定相続人が、同じく法定相続割合に応じて分け合います。

この相続割合を被相続人(もともと財産を持っていた人、遺言を書く人)が決められるのが、

  • 遺産分割方法の指定
  • 相続分の指定

の2つです。

権利の動きの形態としては、相続にあたります。

「長男Aが甲土地を相続し、長女Bは乙社の株式を相続する」といったように、具体的な財産を指定するのが、「遺産分割方法の指定」です。

「妻Cに財産の五分の四を、長男Aと長女Bは財産のそれぞれ十分の一を相続する」のように、法定相続割合と異なる割合を指定するのが「相続分の指定」です。

どちらも「相続」にあたるので、相続放棄が効力を発揮します。

つまり、Aさんが相続放棄をすれば、遺言書でAさんが財産を相続するように書かれていたことがわかったとしても、一切相続することはできません。

事例2は、この「相続」にあたるケースです。

相続放棄が効力を発揮するので、したくても相続できません。

逆に、相続分または遺産分割方法の指定をされていたとしても、

借金が多いなどの理由で相続したくないときは、相続放棄することができます。

「相続」ができるのは、法定相続人のみです。

遺言で法定相続人以外の人に財産を与えるとすると、それは「遺贈」になります。

 

遺贈は贈与。相続放棄とは別個に扱いだが、例外も

特定贈与は、ある財産を指定して分け与える方法です。

例えば、

  • 長男Aに甲土地を遺贈する。
  • ホームヘルパーのDに丙自動車を遺贈する。

といった場合。

包括贈与は、資産も負債もみんな分け与えるというもの。

例えば、「ホームヘルパーのDに全ての財産を遺贈する」という文面になります。

特定遺贈は、独立した贈与契約とみなされます。

特定遺贈を放棄する場合は、その旨を他の相続人に伝えなればなりません。

これを遺贈の放棄といいます。

事例3はこれにあたります。

民法における贈与というのは、

  • あげますよ
  • もらいますよ

という双方の意思表示があってなされるものです。

この「もらいませんよ」という意思表示を(契約の相手方は亡くなっているので、相続人に)することで、放棄するのと同じことになります。

意思表示は内容証明郵便を出すのが確実です。

遺贈の放棄は、相続放棄のように三ヵ月という縛りはありません。

ただし、他の法定相続人などは、

「遺贈を受け入れるのか、それとも放棄するのか、教えてね。〇月〇日までによろしく」

と、意思表示を促すことができます。

もし期限までにはっきりしない場合は、遺贈を受け入れたということになります。

事例4をご覧ください。

独立した契約ということは、相続放棄をしたうえに遺贈で財産を受け取ることができるということになりそうです。

ですが、このようなケースは「信義則に反する」として、裁判で認められなかったという事例があります。

場合によっては、「相続放棄の撤回はできる?」のところに書いた、「錯誤による無効」で相続放棄をなかったことにすることで、甲土地を受け取ることができるかもしれません。

包括贈与は、もらう側の人は相続人とみなされます。

「もらいませんよ」という場合は、相続放棄の手続きをとる必要があります。

事例2のように相続にあたるケースと同じですね。

「相続」と「遺贈」のどれにあたるかは、基本的に文面から察しますが、必ずしも「遺贈する」と書いてあったから遺贈と判断されるとは限りません。

法律家の助けが必要となるところです。

 

全て遺言通りにさせない遺留分。生前に放棄可能

遺言と相続放棄というところでもう一つ、遺留分の放棄ということに触れます。

遺言は相続人同士の話し合いよりも優先されます。

もともとの財産の持ち主である被相続人の意思(遺志)を大事にするべきだ、という考え方があるからです。

ですが遺言は必ずしもそのとおりにならない場合があります。

遺留分があるからです。

法定相続人は、遺言がどんな分割方法を指定している場合であっても、

一定の割合までは自分が相続することを主張できます。

これが遺留分減殺請求権です。

配偶者や子供は法定相続割合の二分の一です。

例えば、相続人が妻A、長男B、長女C、次男Dの四人、相続財産が1,000万円、遺言書で長男Aに全ての財産を遺贈すると書かれていた場合。

配偶者の法定相続割合は二分の一、子は二分の一を兄弟で均等割りしますので、

  • 妻Aさんは四分の一である250万円
  • 長女Cさんは十二分の一である83万円

を相続する権利があるのです。

遺留分減殺請求権にも、放棄という概念はあります。

相続放棄は被相続人の生前にはできませんが、遺留分減殺請求権はできます。

ただし、裁判所の許可がおりない場合もあります。

相続放棄をした後に遺留分減殺請求権を主張することは当然できません。

相続放棄した時点で相続に関する一切の権利を失っているからです。

 

まとめ

  • 相続放棄した後に遺言が見つかっても、原則的に財産をもらうことはできない。ただし、だまされた場合などは別。
  • 遺言によって、指定した財産を贈与する「特定遺贈」は、相続放棄をすることなく辞退できる。
  • 遺言で相続をする旨が記載されていても、相続放棄することができる。
  • 相続放棄は、遺言の有無や財産などを慎重に調べてからすること。

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この記事を書いた人

ファイナンシャル・プランナー ファイコロジスト山田

不動産から為替相場の予想まで、お金に関するテーマについて幅広く執筆。
相続に関連して実家を失ったことがある。
これらの経験から、相続関係業務のモットーは「運用を含めた総合的な人生設計」「関係者全員が納得する分割」。