350cc4029c35164db3d8cc4c3dd91e95_s

相続のときにトラブルになりやすいのは、共有の土地です。

とくに、二世帯住宅を建てていた場合には、土地や建物を親と子供の共有にすることが多く、親の死後、

  • 親と同居していた子供と
  • その他の子供との間で

相続の問題が生じやすいといえます。

よく見受けられるケースとして、父親が資金を出し、長男が住宅ローンを組んで、二世帯住宅を建てるといったような場合、

土地を父親と長男の共有とし、建物は長男の名義としているということがあります。

こういった場合、親の気持ちとしては、親の共有持ち分は、ゆくゆくは、同居してくれた長男とその家族のものに・・と考えていることが多いのではないでしょうか?

 

共有名義の土地は、親の死亡後どうなる?

7ded88cece89364fcf5fa0c76d7f7b17_s

 

親の死後、親の土地は、子供たちの共有に

親の死亡後、親名義の土地や建物は、一旦、相続人の共有状態となります。

  • 例えば、土地が、父親2分の1、長男2分の1の共有
  • 建物が長男の名義である二世帯住宅に住んでいた場合で
  • 他に次男と三男がいて
  • 母親が亡くなり、そして、父親も亡くなってしまったら

どうなるでしょう?

他には遺産がないと仮定します。

3人の子供は、それぞれ3分の1ずつの相続分を持っています。

そこで、土地は、(もともと2分の1は所有していたので)

  • 長男の持ち分が6分の4
  • 次男と三男はそれぞれ6分の1

の持ち分を持っている共有の状態ということになります。

この共有状態は過渡的なものであり、遺産分割によって、最終的な解決を図ります。

 

遺産分割の方法は?

遺産分割には、

  • 現物による分割(現物分割)
  • 競売や任意売却により換価代金を分ける方法(換価分割)
  • 一人の相続人が現物を取得し、他の相続人に代金を支払う債務負担による方法(代償分割)

の3通りがあります。

遺産が土地しかない場合、土地を現物分割するとなると、分筆ということになりますが、広い土地を有している場合以外では、あまり行われることはないと思います。

 

換価分割を選ぶなら

換価分割を選択する場合に、土地の権利の半分だけ(父親の名義の部分だけ)を売却することは、あまりありません。

土地の全部じゃなくて、半分だけの権利では、買い手はほとんどいませんし、もし、買い手が現れたとしても、相当買いたたかれることになります。

なにより、長男が、赤の他人と土地を共有するなんて、いやでしょう。

換価分割で一番よい方法は、長男が合意すればの話になりますが、土地と建物を一緒に売却してしまうという方法だと思います。

この場合、

  • 建物の代金と土地の6分の4の代金を長男が取得
  • 次男と三男は土地の代金の6分の1ずつ

を取得します。

長男が住み慣れた二世帯住宅に住み続けたいと考える場合は、代償分割を選ぶでしょう。

 

長男はいくら払えばいいの?

代償分割をするには、長男は、次男と三男に、土地の価値の6分の1ずつの金額を支払う必要があります。

ここでいう土地の価値とは、土地の時価ということになります。

今、この土地を売るとしたら、いくらで売れるかということです。

そこで、こういった場合には、長男、次男、三男が、それぞれに不動産業者に依頼して、土地を査定してもらいます。

ここで、どの不動産業者も似たような査定額であれば、問題はないのですが、たいていは、金額に開きがあります。

話し合いで解決するなら、3人が提出した査定額の間を取るような金額で合意することもあります。

話し合いがつかなければ、最終的には、裁判所による鑑定が必要になるでしょう。

その際鑑定費用が必要となります。

最終的に、例えば、この土地の時価が3,000万円ということになれば、

長男は、次男と三男に、それぞれ、その6分の1の500万円ずつを支払います。

長男にそこまでの預貯金がなければ、長期分割払いをお願いすることになるでしょう。

 

共有状態の間、長男は賃料を払うべき?

さて、遺産分割で揉めると、家庭裁判所の遺産分割調停で話し合わざるを得なくなります。

話し合いで解決できなければ、審判手続きと言って、裁判所が遺産分割を決める手続きに移行します。

そのため、遺産分割は、場合によっては、解決までに何年もかかることがあります。

遺産分割が解決するまでの間、次男や三男は、土地の共有持ち分を持っているのに、

土地は全部、長男が使っているという状況が続くことになります。

次男や三男は、長男に地代を払えと言いたくなるのではないでしょうか?

実は、これについては、最高裁判所の判例があります。

父親名義の一軒家に父親と一緒に住んでいた子がいるという事案でしたが、

相続が始まる前から親の許諾を得て、遺産である家に同居していたときには、特段の事情のない限り、

遺産分割終了までの間、その子は無償でその家に住んでもいいという父親との合意(使用貸借の合意)が推認できます。

そのため、他の相続人に賃料相当額のお金を支払う必要はないという判断がされています。

つまり、父親と同居の子との間には、無償で家を貸すという使用貸借契約があり、父親は、使用貸主だったのです。

そして、その使用貸主という地位を相続人は引き継いでいるので、

少なくとも、遺産分割が終了するまでは、同居していた子に無償で貸さなければいけないということです。

ただ、この判例には「特段の事情のない限り」とされていますので、それまでの同居の態様や、その不動産の価値など、個別の事情によっては、その判断は変わってくると思います。

特に、長男が、代償金を払うのがいやだからと考えて、遺産分割を故意に引き延ばすような場合には、

ある一定の期間経過以降は、賃料を払うべきというような判断をされることはあり得るのではないでしょうか。

 

土地のトラブルを避ける対策は?

7d857e7d00e7d2849fa075bc609c55b9_s

 

遺言を作成する

では、子供たちがこのような争いをしないように、親が生前にできることは何でしょうか?

それは、遺言書を作成しておくことです。

土地の持ち分を長男に相続させたいのであれば、そのように遺言書を作成しておきましょう。

 

遺留分に注意する

遺言書を作成するときには、次男、三男の遺留分に注意することが必要です。

遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して法律上取得することが保障されている遺産の一定の割合のことで、

子であれば、本来の法定相続分の2分の1です。

遺言書の内容が、遺留分を侵害していると、結局はトラブルが起こることになります。

なお、家庭裁判所の許可が必要ですが、次男や三男に遺留分を放棄しておいてもらうこともできます。
(もちろん、親であっても、これを子供に強要することはできません)。

ただ、この遺留分の放棄にはいろいろと注意すべき点もあります。

遺言書の作成や、遺留分については、弁護士に一度、相談してアドバイスを受けた方がいいでしょう。

 

まとめ

「横の相続は簡単だけど、縦の相続は大変」ということがよく言われます。

夫婦のどちらかが亡くなっても、一方の親が生きている間は、あまり相続が問題になることは少ないようです。

しかし、子供だけになると、相続のトラブルが起きやすくなることが多いものです。

親が元気なうちに、できるだけの対策を打っておきたいものですね。