親が持っているマンション、
- 相続したらどうなる?
- 手続きはどうなる?
- 相続税は?
- タワーマンション節税って?
相続をめぐる不安は、多岐に渡ります。
それも所有権や税金が複雑にからむマンションはなおさら。
財産を残す人と引き継ぐ人それぞれに向けて、マンション相続について知っておきたいことを解説します。
相続税の節税を考えている人にもヒントになるかも知れません。
持っていなくても、買うと節税?マンションと相続税のカラクリ
相続税の計算はややこしいもの。
不動産は、預金と違って相続時点の金額がどこにも書いていないので、なおさら厄介です。
マンションの相続税計算の仕組みを知れば、節税の参考になるでしょう。
ただ、一筋縄にはいかないのも事実。
よく相続時点の法律を参照して、検討しましょう。
※平成27年時点の税制についての解説です。
マンションがある場合、相続税計算はどうなる?
資産は
- 現金で持っているよりも
- 不動産で持っていた方が
相続税で払う金額は低くなります。
相続税は、不動産を購入した金額ではなく、少し低めに設定された時価をもとに計算されるからです。
相続税は、資産から負債を差し引いた正味の財産から、さらに基礎控除
を引いた額をもとに計算されます。
つまり、資産の合計が基礎控除を下回れば、
- 税金を納める心配はなく
- 申告をする必要もありません。
例えば、相続人が配偶者と子の二人の場合、マンションの時価が4,200万円以下だったら、まず相続税の心配をする必要はありません。
どうやって時価を決めるのでしょうか。
時価を算出することを、評価するといいます。
建物と土地は別々になっており、
- 建物:固定資産税評価額
- 土地:相続税評価額
によって行います。
固定資産税は、毎年都道府県から送られてくる固定資産税課税明細書を見ればわかります。
相続税評価額は、
- 路線価
- 評価倍率
があり、どちらも国税庁のホームページで見ることができます。
計算にはちょっとコツがいりますが、同ホームページで詳細に乗っていますので、時間があれば計算してみるのも面白いです。
マンションの土地は、たいてい所有権を共有しています(中には借地権などの場合もあります)。
土地の評価は、土地の固定資産税評価額に、共有持分割合を掛けて求めます。
共有持分割合は、「私はこの土地のうちいくら分を所有しています」という割合で、12/149のように、分数で表されます。
登記簿で調べることができますか、固定資産税課税明細やたいていのマンションの売買契約書にも書いてあります。
これらの評価額は、ほとんどの場合売買価格よりも安くなるので、
現金で持っているよりも相続税が抑えられるというわけです。
さらに、土地は小規模宅地等の特例という制度を使うと、大幅に減税できます。
- 居住用の場合で土地の80%
- マンションやアパートを一棟まるまる購入して賃貸している場合の土地は50%
評価額を減らすことができます。
ただし、利用できる面積には上限があり、区分所有の場合は共有割合に応じた面積を算入できます。
タワーマンション節税って?誰でもいつでも使えるの?
マンションは高層階に行くほど、価格が上がる。
相続税の評価では、土地はどの階層も共有持分割合が同じなら同じように評価される。
この差を利用した節税方法が、いわゆるタワーマンション節税です。
ただし、この方法は、明らかに節税目的でやっている場合は、税務署で否認される恐れがあります。
実際に裁判で、そのような判決が出たことがありました。
国税庁も厳しく取り締まるようになり、政府も規制をすることを決めました。
今ではこの方法で節税するのは難しいでしょう。
お金と違って簡単に分けられない不動産。相続争いを防ぐには?
不動産は、世界でたった一つ。
簡単に分けることはできません。
もっとも相続争いが起きやすいのは、相続財産が不動産のみだった場合です。
他にも、負の遺産を残していないか注意しましょう。
住宅ローンの心配はないか、団体信用生命保険に入っているか
たいていの住宅ローンは、団体信用生命保険(団信)に加入することが条件となっています。
借入者が亡くなったときに保険でローンが完済されるのが団信ですが、
フラット35では必須でありませんし、それ以外でも加入できない場合に保証人をつけることで借入れできるようになる場合があります。
団信に加入しておらず、住宅ローンの残高が実売価格を上回る場合は、残された家族に借金を負わせてしまうかもしれません。
相続放棄すれば借金はなくなりますが、愛着のある家とお別れになってしまいます。
生命保険の加入など、対策を考えましょう。
遺言か生前贈与が有効。特定の誰かに偏らないように注意!
相続人同士のトラブルを避けるには、遺言書を残しておくか、生前贈与でマンションを与えたい人を決めておくのが有効です。
故人が希望したことであれば文句が出ることは少ないでしょう。
負担付贈与といって、
といいうような条件を出すことも可能です。
ただし、遺言書が法定相続割合よりも優先されるとはいえ、絶対ではありません。
遺留分という、遺言でもタッチできない権利の部分もあります。
あまり偏った配分にするとかえってトラブルの種となりますので、できれば相続人を含めて話し合ったうえで決めるのがベストです。
マンションを相続したら、やっておくべきこと
ここからは、マンションを相続した方に読んでいただきたい項目です。
マンションを相続すると、名義変更に管理、売却する場合は手間も税金もかかります。
「相続自体は悲しいけど、マンションもらった!やったー!」で終わりではなく、しっかり管理しましょう。
相続登記はトラブル防止のため忘れずに!
マンションなどの不動産には、名札をつけておくことができます。
郵便受けの表札のことではありません。
持ち主や借り主などの権利について公式に記録しておくことを、登記といいます。
「つけておくことができ」るというのは、必ずしなくてはならないという義務ではないのです。
だからといって、やらずに放っておくと後で困ることがあります。
- いざ売却しようと思っても契約書が作れない
- 遠い親戚がやってきて相続権を主張する
- 何十年か経って登記しようとしたら相続人が増えすぎてて遺産分割協議書を作れない(相続で手に入れた不動産の登記には、遺言書か遺産の分け方を記した遺産分割協議書が必要)
といったことがあります。
登記には登録免許税などがかかりますが、トラブル回避のためには必要経費です。
最寄りの法務局か、司法書士に相談して、すみやかに登記を行いましょう。
相続したマンションに住む予定はない。売ると税金がかかる?
かかる場合もあります。
不動産を売って利益が出た場合、譲渡所得というものに対して
- 所得税
- 住民税
の2つがかかります。
これは、相続で手に入れた場合でも同じです。
簡単に書くと、
となります。
購入して5年以内に売却した場合39%ですから、非常に高額になることがあります。
すでに相続税を払っているのに、売却のときも課税されるなんて、税金の二重取りじゃないか?
という気もしますが、相続と売却益は別物なので、税金も別に計算するというのが国税庁の見解のようです。
売るのも気が引ける。賃貸したらどうなる?放っておくと?
売りたくないからといって、放っておくと大きく費用負担が発生します。
まず、管理費と修繕積立金。
合わせて毎月1万円~4万円程度かかります。
固定資産税も大きいです。
毎年、固定資産税評価額の1.4%かかりますので、マンション一部屋を相続したら数万円~数十万円にはなるでしょう。
どうしても売りたくない場合は、賃貸に出すのも一つの案です。
家賃の5~10%程度の管理費を払えば、集客から故障対応まで管理会社がやってくれます。
もし空き室になれば、その間の修繕積立金や固定資産税は持ち出しになります。
持ち出しが嫌な人はサブリースを使ってもいいでしょう。
マンションを「又貸し」する契約で、持ち主は管理会社に貸して毎月安定した収益を得る。
管理会社は、入居者と直接契約を結んで、お金のやりとりもする。
空き室のときも収益があること、丸投げといっていいほど管理が楽なことがメリットです。
他方、
- 収入が満室時家賃の80%程度にとどまること
- 敷金や礼金が管理会社のものになること
- 管理会社からもらえる家賃の金額は2年に1回くらいの頻度で改定される
ことなどのデメリットもあります。
まとめ
子や孫にたくさん資産を残したい人に知っておいてほしいことは次のとおりです。
- 現金で持っているよりも、マンションを買ったほうが相続税は少ない
- タワーマンション節税は、昔に比べるとメリットが出る可能性は低い
マンションを持っている人で、相続トラブルが心配な人はこうしましょう。
- 住宅ローンが残らないか、確認しよう
- 遺言や生前贈与で、公平に分配しよう
相続でマンションを手に入れた人は、次のようなことに注意しましょう。
- 相続登記はすみやかに行おう
- 相続したマンションも、購入時より金額が上がっていれば、税金が発生する
- マンションは所有しているだけでお金がかかる。
でも賃貸に出せば収益が得られる。